第15話 混沌①
「パープ! そっちに行ったぞ!」
「は、はいっ!」
私たちが3人に対して相手は約数百人。
甘かった…
戦場がこんなに恐ろしかったなんて…
鳴り響く鉄の重い音…
むせかえるような血の匂い…
容赦なく私を殺そうとしてくる人々…
親に捨てられ、森で生きる時に覚悟していたはずだけど…
その覚悟は甘かったみたいだ。
ここはゲームの世界ではない! 現実だ!
やり直しがきかない現実だ!
死んだら終わりの現実だ!
今はこの戦いだけを考えろっ!
「たあぁぁぁあああ‼」
渾身の蹴りを入れる。
相手の頭がはじけ飛ぶ。
怯むな! 考えるな!
殺さなければ殺される‼
♢♢♢
あれから3日がたった。
飲まず食わずで戦い続け、さすがのコヨウさんもザクロさんも疲れを隠し切れない。
辺りは血の海…
一日目はまだ命を奪うのに躊躇したけど、二日目からは何も感じなくなった。
なんか少し寂しい。
前世の“私”がどんどん薄まっていくな…
もう足が棒みたいに動かない。
これじゃあとてもじゃないけどウィンを助けになんか行けないな。
「これを食べなさい」
「これは…キャロッティ⁉」
ザクロさんが懐からキャロッティを取り出し、私へ差し出す。
「あのウィンという子を助けに行きたいんでしょ? 後始末は私に任せてっ!」
ザクロさんが二カッと眩しく笑い、安心させるように親指をたてる。
「ザ、ザクロさん…っ‼」
「さ、コヨウさんが疲れて動けないうちに早く行きなさいな」
なんて優しいのっ!キャロッティがあればどんなに疲れてもきっと大丈夫!
なんか男だと忘れそうなくらい母性がすごい…
「ありがとうっ! いってきます!」
ここからウィンが戦う場所まで2日ほどかかるけど、無事でいてよ!
♢♢♢
「ハアッハアッ」
何とか全力で走り、2日かかるところを1日で走り抜けた。
返り血でベトベトで所々擦り切れた服に、空腹と疲労でめまいがする。
けれど我慢はできる。
何よりウィンの命の方が大事だ…!
ここら辺のはずだけれど…
――ドオオオォォン
「――‼」
あっちの方から凄まじい爆発音が聞こえる。
急いで音のした方へ走る
「…⁉ ウィンッ‼」
宙に舞う角の欠けた鬼の首と、炎を纏い傷ついたウィンがいた。
ウィンの体がぐらつく。
倒れる前に私がお姫様抱っこをしてウィンを抱える。
とりあえず炎を『――流水――』を唱えて消す。
「ウィン! 大丈夫⁉」
「――ぅ…」
ウィンが苦しそうに顔を歪める。
『――回復――』
回復魔法を唱えてウィンの怪我と火傷を治す。
「ぱ、ぱぷたん…?」
ウィンがうっすらと目を開く。
⁉ ウィンの目が、桜色に変わっていて、瞳の中に桜の花の模様ができている…。
これは…コヨウさんが魔法を使うときと同じ目⁉
「―ぁっぐ…」
回復魔法で怪我を治したはずなのに痛がっている。 何で⁉
もしかして、ウィンの魔力が暴走している⁉
…まじだ。
本当に暴走している。
魔力暴走とは、体に流れている魔力が制御できずになり、体の内側から破壊されていってしまう、恐ろしい暴走…
魔力暴走が起きて生きている人はいないと言われている…
なんで魔力暴走なんかが…
もしかして、炎鬼を倒すときに無理やり大量の魔力を使ったとか?
考察は後回し!
とにかくどこか魔力暴走を治せる人のところへ行かなくてはっ!
魔力暴走の治し方なんて聞いたことないけど、大三賢者を長くやっているザクロさんかコヨウさんなら知っているはず!
…否、シーちゃんの家へ行こう…
なんとなくだけど、大三賢者では治せない。
シーちゃんなら治せる、そんな気がする。
目に涙が滲む。
急いで手で涙をぬぐう。
泣くな! 泣く暇があったら走れ!
疲労の抜けない足にムチをふるうようにして、ウィンを抱えてシーちゃんの家の方へ走る。
腕も修行で鍛えていてよかった…
じゃないとウィンを運べなっかたはず。
今もウィンは苦しそうなうめき声をあげている。
早く、早くシーちゃんの家へ!
さて、二人は無事にシーちゃんの家へ辿り着けるのでしょうか⁉




