第105話 褒美
「そなたは我が帝国の皇太子妃になってもらう」
皇帝はさぞ良いことを言っただろうと言わんばかりにドヤ顔している。 いやいや、良いこと全然言ってませんよ!?
皇太子殿下もさ、私がきっと喜ぶだろうなみたいな顔せんでいいわ! 私、嫌だよ?
でも、こういう時の断り方を知らないから、シーちゃんに目で合図を送る。 もし私が失礼なことをしたら、ウィンのようにシーちゃんの踵落としをくらわされてしまう。 だから、シーちゃんに目で合図を送るのだ。
お願い、気づいて……! こんな私をいやらしい目で見て鼻の下を伸ばすような人と結婚なんかしたくない! シーちゃんならこの気持ちに気づいてくれるはず……!
「皇帝よ、なぜ、そのような考えに至ったのでしょうか……?」
シーちゃんが少し威圧のこもった言葉で圧をかける。
「皇太子はパープ、おぬしに一目惚れしてしまったからだ」
そう皇帝が言うと皇太子が頬を赤らめてもじもじとしながら私に熱い目を向ける。 おぇ……。
シーちゃんが皇帝の言葉により一層圧をかける。
「平民が帝国の皇太子妃になれるのだぞ? この上ない光栄なことなのだぞ?」
皇帝の平民という言葉にシーちゃんのピクリと反応する。
「皇帝……その褒美は彼女にとって本当に褒美なのでしょうか……? 彼女は魔王を倒したのです。 その気になればこの帝国などいとも簡単に滅ぼすことが出来る。 もっと慎重に行動した方が賢明だと思いますよ、皇帝?」
――ブワァァァ
シーちゃんの威圧が会場を満たす。 皆が足を震わせ、その圧に耐えられずに皇太子が膝をつく。
それを見てシーちゃんの目は、『こんなひ弱な男にパープちゃんを任せられるわけがないでしょ?』と語っていた。
改めて思うけど私、凄い人と友達になっちゃったな。 だって神で、最強で、天使で、転生者? あは、あははは……。
「わ、分かった。 この件はなかったことにしてくれ、だからその圧を今すぐやめたまえ!」
皇帝もたじたじになり、さっきの結婚も取り消してくれた。 よ、よかったぁ~~!
当の本人である皇太子は顔を蒼白にさせてまだ腰を抜かして膝をついている。 うん、やっぱりこんな奴と結婚なんかヤダ!
それに、皇太子妃なんか仕事多そうだし、何より平民という肩書は消えないから貴族にいびられるだろうから、なくなってよかった!
「で、では、改めて英雄一同、代わりの褒美を言ってみよ。 さっきの詫びも含めてなんでも願いを聞くぞ」
うーん、ここは罠だな。 さっきの借りを今ここで返そうとしている。 たかが願いで帝国の借りを返してもらうなんて勿体ない。 ここは願いを断り、借りを作らしたままの方が賢明……!
まぁ、私でも分かっていることは、シーちゃんも分かっているはずだから、言うまでもない。
「私どもには勿体ないことなので、断らせていただきま――」
「うーんとね、お菓子いっっっぱい欲しいっ!」
その瞬間、さっきまで気絶していたウィンが起き上がり、シーちゃんの言葉を遮って願い事を言ってしまった。
おいっ!
「わかった、すぐに用意しよう」
待って、皇帝! ウィンの言葉を真に受けないで!
「では謁見を終わりにする。 速やかに退場しなさい」
待って! これでさっきの借りはチャラになるの!?
おい、ウィン! お前なんてことを……‼ もう、一生寝てていいよ!
いや〜、ウィンは本当に食いしん坊さんだね!




