第101話 一歩間違えたら死ぬバレンタイン!
今日はバレンタイン前日! なんとこの異世界にもバレンタインが存在するのだ! そして……この学園はバレンタインの日だけ、お菓子の持ち込みが許可されるのっ!
恋する乙女は皆、食堂の厨房を使い、チョコレートを作っている。 学園に在籍する女子生徒のほとんどは恋する乙女なため、厨房は……言うまでもないだろう。
本来なら私も地獄の厨房でチョコレートを作っていたはずだが……
なんと、私たちの部屋は厨房付きのビップ部屋なのだ! だから、ぎゅうぎゅうになりながらチョコレートを作らずに済む。
やったー!
まぁ、3人部屋なので譲り合って仲良く作るのだ!
最初はウィン!
ウィンは過去、ハンバーグを作ってくれたことがある。 その味は……想像を絶するほどの味だったよ……。 悪い意味でね……。
焦げているのにドロドロだったり、なんかべっちょべちょで……とにかくやばかった。
そんなウィンが作るチョコ、一体どうなるのやら……。
「フフフ、美味しいものをとにかくたくさんぶち込めばいいよね?」
なんか先行きが不安になる発言が聞こえましたが……?
「まずチョコの元に、こんにゃく、カレー、砂糖に塩! ……あとパプたんが好きなキャロッティも!」
……これ、本当にチョコレートなの? ……もしかしてだけど、私に渡す気? 気持ちはうれしいけど、、、こんなチョコいらない……否、食べれない!
食べたら死っ!
次はシーちゃん!
シーちゃんはいつも朝食を作ってくれている。 もちろん今日の朝食も作ってくれました!
シーちゃんのご飯は世界一! シーちゃんのご飯を食べてしまえば最後……他のご飯じゃ満足できない体になってしまうのだ……。
「今年は~、生チョコも作ろっと♪」
ん~、なんだか女子力の高い発言!
これは期待大! 私にもくれるかな……? ワクワクッ! いい意味で、これを食べたら死ぬね!
最後に私!
私は今世でも前世でもチョコレートを作ったことがない! ドヤー!
だから、頑張って作るよっ! 私はウィンのようになりたくない。 だから、簡単なただのチョコレートを作ることにした!
チョコレートを溶かし、魔法で作ったクマの形の型に流し込む。 ふふふ、簡単なチョコレートだけど、前世の知識で作ったクマちゃんのチョコだ!
これで落ちない男はいないだろう! フハハハハ!
……私、好きな人いなかったわ。
……まぁいいや! 好きな人がいなくても、友達として愛している人はいるもん!
フフフ、これでもっっと仲良くなってやる!
♢♢♢翌日♢♢♢
「リバー、これ、あ・げ・る・♡」
放課後の屋上……ではなく、人気のない離れの美術室でウィンがリバーにチョコレートを渡す。
なぜ、離れの美術室かって? それはね、屋上は人気すぎて人が大量だから(多分)!
そして、なぜ私がウィンを見ていたかって? それはね、リバーが心配だから! ウィンはチョコにいろいろ変なものを入れていた。 私はそれを知っているから心構えできるけど、リバーは知らない。 最悪死ぬかもしれない。 だから、いつリバーが倒れても回復魔法をかけられるように待機しているの!
「ウィン……! ありがとう! 早速いただくね!」
そう言って、ウィンから渡された袋をほどき、中からチョコを取り出す。
ふむふむ。 見た目は至ってまとも。
――パク
リバーはそのまま疑いもせず食べた。
「ん~」
リバーは幸せそうな顔をして舌鼓を打つ。
な~んだ、心配してそんした~。
「ん……?」
リバーの顔がみるみる青くなっていく。 ど、どうしたの?
「~~ッ!?!?」
リバーは言葉にならない声を発し、うずくまって転げ回る。 あぁ……これは後から来るタイプのチョコレートだったのね……。 可哀そうに……。
「そんなに美味しかったぁ~?」
ウィンは呑気にそんなことを喋りかけている。 もうあんたは黙っときな!
私は急いで飛び出し、リバーに回復魔法をかける。
「……」
そうしたら、リバーは涙を浮かべながら安らかな顔をして気絶した。
「「リ、リバーー~~~‼‼」」
♢♢♢
リバーは保健室に預け、私たちは寮に戻った。
ウィンは……『私のチョコが美味しすぎたせいで……っ! 罪な女ね……』とか言ってた。
本当にちょっと黙っててほしいわ。
シーちゃんは無事に想い人であるナイトに渡せたようだ。 何かあったか聞いたら、顔が赤くなっていたので、何かあったのだろう。
私はシーちゃんと友達だから、クソリア充め……! とか思わないのよ! ……思わないんだからっ!
夜、みんなが揃ったのでチョコを渡すことにした!
がんばれ、、、私っ! 今まで世界救ったりいろいろやってきたけど、ここまで緊張したことないよっ!
「みんな……これ、日頃の感謝の気持ちです!」
腰の角度をジャスト90度に曲げてチョコを渡す。 くっ! こりゃぁ明日筋肉痛だな!
「わ〜可愛いクマさんだね♪」
「ね、食べるのが勿体ないくらい」
せ、成功だっ!
「これ、私もパプたんのために用意したんだ!」
「私も!いつもありがとうね」
「みんなぁ……ありがとうっ!」
私はこのまま感情に流されてチョコをその場で食べるほど愚かでは無い。
一瞬流されそうになったが、なんとか堪えた。 なぜかって? わかりきったことでしょ? ウィンのチョコ食べたら死ぬからね!
「あとで食べるね!」
そう言って私は逃げ出した。
ごめんよ、ウィン……。
ウィンのチョコは大事に引き出しに閉まっておくからね。
シーちゃんのチョコは……今から食べるっ! いただきま~すっ♪
「――!?」
う、うますぎる……。 もう、死んでも後悔はないぜ……。
――バタン
私は人知れず、気絶した。 もちろん幸せそうな顔でね……。
ふふふ、チョコ、美味しかったぜ。




