エピローグ
「魔王アーガイルさま、王妃ミアさま。おめでとうございます!」
今日のニューイヤーの祝賀パーティーは。
アーガイルの治世において、最大のものになっています!
なぜなら。
ここにアーガイルと私の婚儀も加わったからです。
魔王城で一番大きいホールには、沢山の花、バルーン、王旗、各貴族の紋章旗が飾られ、実に華やか。集まった魔族の数は相当ですが、そこにはキャトレット伯爵夫妻の姿もあります。
私が無事獣人族の姿に戻ったことは、まずクロエから報告されていました。さらに私自身も、魔王は噂のように恐ろしい人物ではないこと、とても大切にされ幸せであること、そしてニューイヤーの祝賀パーティーで改めて婚儀を挙げることを、両親に伝えています。
その結果。
獣人族が暮らすモカ国から、遥か遠い魔王城に、私の両親も足を運んでくれたのです。もし初夏の婚儀を問題なく挙げていたら、両親にこのウェディングドレス姿を見せることもできなかったでしょう。今、二人は私の姿を見て、感涙の涙を流してくれています。
ウェディングドレス。
アーガイルが魔族の仕立屋に作らせたドレスは、とても美しいものです。
ドレスのスカート部分には、雪の結晶をモチーフにした刺繍、パール、ビジューが施され、とても洗練されており、上品。
ビスチェタイプのドレスですが、ふわふわのファーのついた丈の短い前あきのボレロを羽織ることにしました。胸元の素肌が見える部分には、ダイヤのペンダントが煌めいています。
ベールもロングトレーンにも雪の結晶があしらわれ、さらにバラやユリもデザインされ、本当に秀麗な美しさです。
アーガイルは、銀色×アイスブルー×白という色使いでコーディネートされた、魔族独特の衣装を着ていたのですが……。それが実にカッコいいのです。どこかエキゾチックで、アラビアンナイトな雰囲気を感じさせる、ゆったりとしたその衣装は、私と並んだ時にも実に“お似合い”になります。
既に書類のサインは済んでいたので、今日は本当にお披露目のようなもの。皆の前で永遠の愛を誓い、そして……初めて。そう初めて、アーガイルとキスをしました………!
誓いのキスは、とても緊張するものでした。
直前まで楽団による演奏、大声のおしゃべり、食器のあたる音などでにぎやかだったのに。宰相のグレイがセレモニーの開始を告げると、一瞬にして静寂に包まれました。
高名な魔術師が、宣誓を行うよう、アーガイルと私に告げます。指輪を交換し、誓いのキスになりました。ゆっくりとベールを持ち上げ、アーガイルと向き合った時。猫耳と尻尾がピンと立っているのが分かります。
緊張で、また猫に変化してしまうのではと、一瞬不安になったのですが……。
それにアーガイルは気づいたのでしょうか?
瞬きをしたその時、アーガイルからキスをされていました。
「え」と驚いた時にはキスは終わっていて、ホールには割れんばかりの拍手が沸き起こっています。同時にセレモニーが終わり、楽団の軽やかな演奏も再開されました。
おかげで私は猫に変化することなく、無事、アーガイルとの初めてのキスを終えることができたのです。
その後は、美味しいお料理をいただき、ダンスの時間になります。
ニューイヤーの祝賀も兼ねていたので、アーガイルと私のところには、次から次へと魔族の貴族が挨拶に来てくれました。
朝の10時からスタートしたパーティーは夜明けまで続いたそうです。
さすがにアーガイルと私は、途中で部屋に戻ってしまいましたが。
魔族は、明るく朗らかで、パーティーも大好きな種族でした。
◇
自分が企画した乙女ゲームの世界に転生するなんて。しかも企画書段階のゲームの世界に転生しただけでも驚きだったのに。自分が転生者であると覚醒したのは、断罪終了後でした。しかも「パンチがある断罪もいれておけ」と言われ、思い付きでいれた「魔王へ嫁入り」で断罪されることになるとは……。
本当に衝撃でした。
自分が企画したゲームの世界なのに、魔王のキャラ設定なんてしていなくて。魔王がどんな人物か、全く分からず……。そのため、怯えに怯え、まさかの子猫への変化……。その姿のまま、半年近く過ごすことになったのです。
でも魔王アーガイルは想像と違い、とんでもなく優しい性格で、真面目で、とても素敵な容姿をしていて。マンチカンの子猫の私と、そのまま婚姻関係を結んでくれたのです。しかもなかなか獣人族に戻れない私を責めることなく、変わらぬ優しさで見守ってくれて……。
「ミア、どうしたの、窓なんて開けて」
「アーガイル様! 星を見ていたのです。モカ国ではここまで綺麗な星空は見えなくて。冬の今は、特に星が綺麗に見えるように感じます」
私の言葉に、アーガイルがゆっくりこちらへと歩いてきました。
彼が着る紺碧色のナイトガウンには、銀粉が散りばめられており、まるで今見ている星空と同じぐらい美しいです。
「魔王城では外へ向けての明かりは極力控えるようにしているからね。そして周囲は広大な森が広がっている。グレイが昔言っていたが、この魔王城では、肉眼で5000個近い星が見えるそうだよ」
「それはすごいですね」
驚く私を、アーガイルが後ろからぎゅっと抱きしめています。白のネグリジェに淡い水色のガウンを羽織っていたのですが、こうやってアーガイルの腕の中に包まれると……。瞬時に温かさを感じ、癒されます。
「星もいいけれど、体が冷えてしまうよ。星をじっくり見たいのなら、今度、湖のそばの離れに行こう。そこには天窓があるから、体を横にしたまま、星空を眺められるよ」
「本当ですか! それは楽しみです」
嬉しくなってアーガイルの方を向き、ぎゅっとその胸に抱きついてしまいました。するとアーガイルは、いつものように頭を優しく撫でてくれます。これはもう……猫の姿ではなくなっても。瞬時に骨抜きになってしまいます。嬉しくて尻尾がくねくねと揺れてしまいました。
「窓は閉めて。カーテンは閉じて。さあ、休もうか。わたしの愛らしい妃のミア」
ヒロインから殺されかけた元悪役令嬢ですが、今は素敵な魔王の旦那様に愛され、とっても幸せです……♡
゜・。*☆~ Happy Ending ~☆*。・゜
お読みいただき、ありがとうございました!
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