34:美しい瞳から……
瞳を輝かせたアーガイルが私に尋ねたこと、それは……。
「今、話した通り、わたしはミアを心から愛しているよ。ミアは罰としてここへ来ることになった。でもわたしに会って、妃になりたいと思ってくれた。これはミアの本心?」
「はい。アーガイルさまと一刻も早く婚儀をきちんと挙げたい。だから獣人族に戻りたいと、ずっと思っていました」
今度はアーガイルの顔が、明るく輝きました。
「ミアがそう思っていてくれたと知ることができて、とても嬉しいよ」
素直に喜びを示してくれるアーガイルには、胸がトクンと高鳴ってしまいます。体もポカポカですが、心もポカポカです。
「私は、いつ獣人族の姿に戻ったのでしょう?」
「うん。それはまさに私が駆け付けた時のことだった。まずはマヤを魔術で気絶させ、バスタブに沈めようとするのを阻止した。だがミアはマヤに沈められるまでもなく、水中に……」
そこでアーガイルのアイスブルーの瞳から、涙が一粒こぼれ落ちました。
「アーガイルさま……」
思わず顔に手で触れると、アーガイルはその私の手をぎゅっと握りしめます。
「バスタブの底に……沈んでいくミアを見た時は……。でも絶対に、死なせない。そう思い、その体を水の中から抱え上げ、すぐに水を吐かせ、そして人工呼吸を行って……」
「!? 猫の私にですか!?」
アーガイルは力強く頷きます。
「うまくできているのか不安だった。でも心臓マッサージも行い、人工呼吸を繰り返していたら……。ミアはせき込み、でも水を吐き出し、次の瞬間、獣人族の体に戻っていたんだよ」
「……!」
これにはもう驚きです。死にそうな思いをして、そこでようやく獣人族に戻ることができたなんて。
でも……。もしかすると。
猫に変化した時は、この魔王の嫁になったら生きていられないと感じていました。その結果、猫の姿に変化したのです。猫の姿で死にそうになったことで、生きるために獣人族の姿に戻れたのかもしれません。
「すぐにバスタオルでくるんで、魔術で濡れた体を乾かし、冷えた体を温めることにしたのだよ」
「そうだったのですね。大変なところを助けてくださり、本当にありがとうございます」
するとアーガイルは首をふり、こんな風に言ってくれました。
「生きていてくれてありがとう、ミア。本当に良かった……」
私が生きていたことをこんなに喜んでくれるなんて。嬉しくて涙が出そうになります。それを堪えるため、なんとか口を開きました。
「……クロエは、無事ですか?」
「ミアは優しいね。メイドのことを気遣えるなんて。クロエは後頭部に大きなたん瘤を作ってしまったけど、後は問題ない。でも侍医の手当てを受けた後は、部屋で休んでもらっているよ」
これには大きく安堵することになりました。
同時に。
バスルームで意識を失ったもう一人の人物、マヤのことを思い出してしまいます。マヤは勿論、彼女の夫であるペーター、彼らが連れていた二人の従者は、どうなっているのでしょうか。今もこの魔王城に、いるのでしょうか……?
「四人まとめて地下牢に収監している。……雪が降ることが分かっていた。だから彼らには明朝出発することを許し、この魔王城へ泊まることを許可していたのだよ。それを悪用し、ミアに害を成そうしたのは、さすがに許せなくてね。雪が降る外へ追い出そうとも考えたが……。ひとまず地下牢に閉じ込めることにしたよ」
アーガイルは魔王ですが、とても優しいのです。
魔王城の周辺は深い森が広がっています。
雪が降る夜、この森に放り出されたら……遭難する可能性が高いでしょう。
でもそれはせず、地下牢に収監で済ませたのですから。
本当に心優しい方です。
「地下牢は……一応地下であるから、地上よりは温かいだろうが、それでも冷える。今晩は眠ることはできないだろう。何より、夫であるペーターは、妻のマヤの企みを知った。つまり、ミアを害し、私に取り入ろうとしたことをね。マヤとペーターの間には不穏な空気が流れ、とても寝るどころではないと思うよ」
そこでアーガイルはアイスブルーの美しい瞳を私に向けます。思わず吸い込まれそうになる美しい瞳です。
「ミアはマヤにより害されそうになった。だから彼女をどうするかは、ミアの考えを聞きたいと思っているよ」
「私の考え……」
断罪されたこと。それに対しては、もう思うことはありません。結果として、アーガイルという素敵な魔王の妃になれるのですから。
ただ、私を浴槽に沈め、溺死させようとしたことに対しては……。
「マヤには二度と私に近づかないで欲しいと思います。キャット族にも、猫にも」
「なるほど。ではマヤにはある魔術を使おうか」


















































