29:わたしは幸せだよ
「ミアさま、素敵ですよ、そのリボン!」
今日はアーガイルと遠出をして、紅葉を楽しむことになっていました。せっかくなのでと前日はしっかり入浴をして、毛もフワフワにしてもらっています。今は首にシルバーラメの、オシャレなリボンをつけてもらったところでした。
リボンには、本当に小ぶりの小さな鈴がついていて、私が動くと小さな音が「チリン、チリン」と聞こえてきます。
「アーガイルさまが、エントランスでお待ちですよ。行きましょう、ミアさま」
クロエに連れられ、エントランスに向かうと、アーガイルがギルと共に私を待ってくれていました。
アーガイルは藍色のゆったりとした衣装、ギルはいつも通りの黒い軍服。見送りのグレイは露草色のスーツ姿です。
「ミア、そのリボン、可愛らしいね。その小さな鈴も、よく似合っているよ」
クロエから私を受け取ったアーガイルは、まずオシャレしたリボンを褒めてくれます。そして私のフワフワの毛に触れると。
「そうか。もう夏毛は終わったから、ミアの毛もフカフカだね」
アーガイルが優しく背中を撫でてくれるので、嬉しくなってしまいます。
「ではグレイ、留守番を頼んだよ」
「はい。お気をつけていってらっしゃいませ」
馬車に乗り込むと、エントランスにはメイドや従者、バトラー、グレイと総出でお見送りをしてくれます。
3時間の馬車の移動は、とても楽しいものでした。
まず、馬車の中でアーガイルは、フカフカになった私を優しく撫で、ちゃんと頭も撫でてくれます。もうそれが気持ちよくて、ずっと喉をゴロゴロ鳴らしていました。
途中の休憩では、近くにある牧場のミルクも飲むことができ、さらに猫じゃらしをプレゼントされ、もう私はご機嫌です。出会った街の人達は「妃殿下は美猫ですね」と絶賛してくれるので、それも嬉しくてたまらなくて……。
気付けば別荘に到着していました。
その別荘もまた、とても素敵です。
この辺りは冬になるとそれなりの雪が降るということで、屋根は急勾配。その瓦は温かみのある橙色。ファザードはクリーム色で、基礎の部分はレンガ造り。その別荘を取り囲むように、セイヨウナナカマドの木が立ち並んでいます。既に葉は紅葉しており、赤い実と同じぐらい綺麗に色づいていました。
別荘の中は宮殿とは違い、とても可愛らしい雰囲気です。
ドライフラワーが飾られていたり、テーブルにはポプリが置かれ、なんだか海外のペンションに来たよう。既に私達が来ることを知らされていたようで、メイドや従者が迎えてくれて、すぐに昼食となりました。
その昼食を終えると、アーガイルと共に、馬に乗って紅葉狩りです。
「ミアはまだ馬は怖いかな?」
問われた私は首を振ります。
前回はオーマン公爵令嬢が一緒で、その時は彼女の人柄が分からず、それでつい悲しい気持ちになり、アーガイルを心配させることになってしまいました。
でも今回は違います。
アーガイルは馬で移動する時も私を気づかい、極力馬を走らせず、ゆっくり進んでくれますから。怖い訳はないのです。
ということでアーガイルの胸元にすっぽりおさめてもらい、早速に馬に乗り、出発です。
秋晴れで、雲一つなく、陽射しが温かく感じます。でも夕方が近づくとヒンヤリするので、アーガイルは明るいグレーのマントをまとっていました。私はそのマントからちょこんと顔を出す形で、周囲の景色を楽しんでいます。
「ミア、見てご覧。オークの木だよ。綺麗に色づいているね」
アーガイルの声に前方を見ると、赤に近いオレンジ色に紅葉した木が見えてきました。しかも実がなっています。
「どんぐりが沢山あるね。ミアはあの実で遊びたいかな?」
「みやぁ(はい!)」
するとアーガイルはギルに声をかけ、実をいくつか集めてくれます。さらに進んでいくと、今度は真っ赤なカエデの木が見えてきました。色鮮やかでとても綺麗です。
その後は川沿いをゆっくり、馬を進めて行くと……。
滝壺に辿り着きました。
勢いのある滝が、大きな音をたて、滝壺へと流れ落ちています。そしてここはどうやらこの辺りでの観光スポットのようです。滝壺の周りには黄色、オレンジ、赤と紅葉した木々も見えるので、沢山の人がこの滝壺を見に来ていました。さらにボート小屋もあるので、ボートもいくつか滝壺に出ています。
「ボートも乗れるけどね、わたしは過保護だから。ミアは水が得意ではないだろう? お風呂は別だけどね。だからボート遊びはまた今度にしよう。ここは秋も素敵だけど、夏に来たら泳ぐこともできるから。いつか夏に来たら、一緒に水遊びをして、ボートにも乗ろう」
アーガイルのこの言葉を聞いた瞬間。
すっかりこのマンチカンの子猫の姿に慣れてしまっていましたが。そしてアーガイルは決して私に早く獣人族の姿に戻るようにと言うことはないのですが。
待ってくださっている。
それを噛みしめることになりました。
ちゃんと、元の姿に戻らないと。
アーガイルの妃として、ちゃんとふさわしいキャット族になるの、私!
そう思い、アーガイルのその胸にぎゅっと抱きつくと。
「ミアがそこにいてくれると、とても温かい。わたしは幸せだよ、ミア」
……!
優しいアーガイルに、涙が出そうになりました。


















































