25:憂い事が減ってよかったよ
今回のプラン、そうソラス伯爵令嬢撃退プランです。
この撃退プランの目的は三つ。
まず、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢に、自分達の罪を認めさせること。
次に、認めた罪に対し、贖罪を行うこと。
最後に、この魔王城から自ら立ち去ってもらうこと。
最初は、ソラス伯爵令嬢の部屋に、アーガイルが魔術を使い、怪奇現象を起こし、その現象をオーマン公爵令嬢が究明。ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢に恨みを持つ令嬢の生霊による犯行であると明かし、解決するには、彼女達への謝罪と魔王城を去ることが必要とするつもりでした。
でもこの方法だと、グラスが突然割れるとか、女性の悲鳴が聞こえるとか、インパクトとしては少し弱いもの。そこで霊を出した方がいいのでは、となりました。
霊を出すならと、オーマン公爵令嬢が交霊会を思いつき、そこでアーガイルは人間が使うウイジャ盤とプランシェットのことを思い出し、計画はどんどんブラッシュアップされていきました。
その結果、ソラス伯爵令嬢撃退プランが完成します。魔王城で目撃される霊という嘘の話。正体を暴けば水晶宮への招待と、ソラス伯爵令嬢が絶対に食らいつく餌を用意。後は道具を揃え、アーガイルの魔術で物が壊れたり、白い煙だったりを出し、後はオーマン公爵令嬢の迫真の演技でプランをすすめるというものでした。
生霊として登場した七名の令嬢は、すべてオーマン公爵令嬢が知っている令嬢で、過去に実際、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢から嫌がらせを受けていました。それを知っていたのは、オーマン公爵令嬢が、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢による被害者を減らそうと目を光らせていたからです。本当に、オーマン公爵令嬢は、善人だと思います。
「まあ、私はいつも通り、普段の自分でいただけですわ。ただ、霊が乗り移った瞬間とか、頑張り過ぎてしまい……。本当にテーブルに額を打ちつけ、少し痛かったですけど。ともかくすべてうまくいって良かったですわ」
オーマン公爵令嬢は出来立てのスフレを美味しそうに食べながら、ソラス伯爵令嬢撃退プランの顛末を、アーガイルに語って聞かせました。
「うん、本当に、オーマン公爵令嬢、君はよくやってくれたよ。御礼に別途、王宮の温室で育てた珍しいフルーツを届けよう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「そしてスフレはおかわりして構わないから」
オーマン公爵令嬢は感涙しながら、スフレを食べています。一方のアーガイルは私を膝にのせ、優しく撫でながら、オーマン公爵令嬢との会話を続けていました。
「それで、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢は、殿下に何か連絡を?」
「これから始まるバカンスシーズンを魔王城で過ごすつもりでいたが、所用があり、領地に戻ることになった――そう連絡が来たよ。あとはお悩みの霊は今月中にはいなくなると思います、と予言めいたことも書かれていたね。ねえ、ミア」
「みやん(はい!)」
今朝、その手紙はアーガイルに届けられ、その時点で既にソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢は魔王城を出発していました。例年であれば、出発前、1時間ほどお茶に付き合わされることが慣例になっていたとのこと。それがなくなり、アーガイルは「憂い事が減ってよかったよ」と微笑んでいました。
「ところでオーマン公爵令嬢は例年通り、魔王城に滞在するのだろう?」
するとオーマン公爵令嬢は「それが殿下……」と、スフレを食べる手を止めました。とても残念そうに、でも嬉しそうに話し出しました。
「実は例のお茶会に参加していたアル男爵令嬢と意気投合しまして。彼女の領地は穀物の生産は魔界随一ですし、ブランド牛を産出していることで有名ですわよね。それで招待いただけると聞いたので、お邪魔させていただこうかと」
「なるほど。オーマン公爵令嬢は昔から、美味しい物を食べるのが好きだったからね。いいのではないかな。確かにアル男爵令嬢の領地は、食べ物が美味しいことで知られているから。楽しんでくるといい」
アーガイルは私を見て「ねえ、ミアもそう思うだろう?」と頭を撫でるので「みゃぁ~(はいにゃ~)」と、デレデレ声になってしまいます。アーガイルのゴッドフィンガーで頭を撫でられると、すぐにデレてしまうのです。
「それで、いつ、出発なんだい?」
「一週間後です。魔王城の夏の開始を祝うサマーフェスティバルを楽しませていただいてから、出発しようと考えています!」
夏の開始を祝うサマーフェスティバル。
始めて聞くイベントです。
顔をあげ、アーガイルのアイスブルーの瞳を見つめると……。
「ミア、サマーフェスティバルは魔界の一大イベントなんだよ。周囲の森もランタンで照らし、森のあちこちにお店が出て、美味しい物をみんなで食べ歩きしたり、宝探しをしたり肝試しもあったりの5日間のイベントだよ」
それはとても楽しそうなイベント。
オーマン公爵令嬢とアル男爵令嬢が、このイベントの後に領地に向かうのは納得に思えました。
「今年は一緒に楽しもう、ミア」
アーガイルが私の背を優しく撫でてくれました。
【断罪終了後シリーズについて~その3~】
本作はこのシリーズの第四弾ということで、他の3作品についてちょこっとご紹介。
第三弾は6/18に日間恋愛異世界転生ランキング20位を獲得。
完結作品なので一気読みできます!
この作品はランキングに長~くいてくれるのです。
消えた?と思ったらまたランクインしているという読者様ありがとう作品。
『断罪終了後に覚醒した悪役令嬢
殿下の女性慣れの練習相手に?』
https://ncode.syosetu.com/n8557ig/
元悪役令嬢で暇人になった主人公は
完璧なのに自己評価が低い元引きこもり殿下の女性慣れの相手に選ばれるが……。
○ハッピーエンドです!
○派手な事件やバトルはなく、ほんわかじれ愛系です!
○男女間の認識の違いなど恋愛お役立ち情報はあり!
○「あ、そういうこと!」というサプライズ要素あり!
○終盤、読んでいるとじわ~と頬が緩みます!


















































