24:真相
交霊会の翌日。
アーガイルの部屋に、オーマン公爵令嬢がやってきました。
今日のオーマン公爵令嬢はベージュにクリームイエローのフリルがついたドレス姿です。その姿はまるで、これから食べるスフレのような色合い。もしかするとこれから食べるスフレへの期待感から、このドレスを選んだのでしょうか。
一方のアーガイルは、白藤色のゆったりしたいつもの服に、アメジストが飾られた銀細工が美しいベルトをつけています。
「昨日は、名演技だったようだね。ミアにいろいろ聞いたら、君が大活躍したと教えてくれたよ」
そう。
昨日のお茶会の後。
オーマン公爵令嬢は、私をアーガイルの部屋まで連れ帰ってくれました。部屋についた時、アーガイルはまだ戻っておらず、私は一緒に部屋でアーガイルの帰りを待とうと、オーマン公爵令嬢に伝えようとしたのですが……。
それはうまく伝わらず、私が必死になっていることから、オーマン公爵令嬢はクロエを呼びました。その結果、私はクロエにトイレに連れて行かれることに。トイレから戻ると、オーマン公爵令嬢の姿はなく、でもアーガイルが戻っていました。
アーガイルはお茶会の様子を私に尋ね、私はそこで頑張って身振り手振り、頷き鳴くことで、オーマン公爵令嬢の大活躍ぶりを伝えていたのです。
「まあ、スフレ10回分ぐらいは頑張ったと思いますわ」
そう言うとオーマン公爵令嬢は、窓辺に用意されたテーブル席に腰をおろします。私もアーガイルと一緒に、その対面の席に腰おろしました。
「ご所望のスフレは、間もなく到着するよ」
アーガイルの言葉に、オーマン公爵令嬢の瞳が輝きます。そこにメイドが来て、まずは紅茶をカップに注ぎました。
「わたしは離れた場所からミアの合図に従い、あの部屋の怪奇現象を演出していたわけだけど。実際はどんな感じだったのかな?」
オーマン公爵令嬢に紅茶をすすめながら、アーガイルは尋ねました。
そう。
昨日の交霊会。
あれは全部、アーガイルが思いついたソラス伯爵令嬢撃退プランを遂行していたのです。
オーマン公爵令嬢は、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢が、偶然を装った嫌がらせを仕掛けていることに気づいていました。気づいていたと言っても、いつもそれは遂行された後。そしてそれは偶然を装っているので、言い逃れが可能なもの。つまりソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢が、自分達がやったと認めない限り、追及しにくいものばかりでした。
ただ、察知することはできました。なぜなら、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢がそう言った嫌がらせを仕掛けるのは、アーガイルに好意を抱いたり、親密そうに話している令嬢。そこで、アーガイルと親しくする令嬢に、オーマン公爵令嬢は注意喚起をしたのですが……。それはそれで誤解されてしまいます。
オーマン公爵令嬢は、アーガイルと仲良くしようとすると、牽制してくる、と。オーマン公爵令嬢はただ、犠牲者を増やしたくない思いで「殿下とあまりに仲良くし過ぎると、反感を買う可能性があります。嫌がらせを受けるかもしれないから、気を付けた方がいいですわよ」と伝えていたのですが、それが誤解されてしまったのです。
さらに不運だったのは、オーマン公爵令嬢は、アーガイルと仲が良いのに、嫌がらせを受けている様子がない……と思われてしまったこと。そうなると、嫌がらせをするのは忠告している本人なのでは?となってしまいます。
実際のところ、オーマン公爵令嬢は、ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢から、嫌がらせを受けていない――わけではなかったのです。アレルギーがある食べ物を渡されたり、落馬させられるといった嫌がらせを、受けていなかっただけでした。
それには理由があります。オーマン公爵令嬢は、公爵家の中でも、アーガイルのいとこであるファウスに継ぐ有力な貴族。さすがのソラス伯爵令嬢でも、怪我をさせるなどの嫌がらせはできませんでした。
その代わりが言葉による暴力。交霊会の冒頭で、エル伯爵令嬢がやったようなことです。
オーマン公爵令嬢も最初から強い(?)令嬢ではなかったそうで。ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢から、ねちねち言葉による嫌がらせを受け始めた時は、傷つくことも多くあったとのこと。でもオーマン公爵令嬢は、機転も利き、頭の回転も速かったのです。よってそういった言葉による嫌がらせへの返しも、だんだんできるようになったのですから、そこはさすが!
その結果、オーマン公爵令嬢は悪役令嬢のような存在感になり、アーガイルに近づくと、オーマン公爵令嬢に睨まれる――そんな風潮が増々出来上がってしまったようです。
そう考えると、オーマン公爵令嬢は何も悪くないのに、本当に損な役回りというのでしょうか。でも本人は既に鋼メンタルを手に入れたようで、「ソラス伯爵令嬢とエル伯爵令嬢なんて、いつでもぎゃふんと言わせることができますわ」と笑います。
それに公爵家として力のあるオーマン公爵令嬢に睨まれたくないと思う令嬢は多いようで、次第にアーガイルのちょっかいを出すのは、ソラス伯爵令嬢ぐらいになっていました。
そのアーガイルは妃を、私を迎えました。そうなって初めて数多の令嬢達は、アーガイルに近づくことができるようになったのです。アーガイルの心を捉えたのは、妃である私。オーマン公爵令嬢の怒りは、私に向かっているだろうというわけです。昨晩、舞踏会で沢山ダンスを申し込まれたのが、その証拠。
魔王様は素敵。でもお妃様がいらっしゃる。ならば記念にダンスを踊れたら――というわけですね。
ともかくオーマン公爵令嬢を、アーガイルが考えたソラス伯爵令嬢撃退プランに巻き込むことができたからこそ、今回のプランは成功したと言えます。
【断罪終了後シリーズについて~その2~】
本作はこのシリーズの第四弾ということで、他の3作品についてちょこっとご紹介。
第二弾は6/6に日間恋愛異世界転生ランキング10位を獲得。
完結作品なので一気読みできます!
ページ下部にイラストバナーがあり、タップORクリックで目次ページに飛びます!
『断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと
気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇』
https://ncode.syosetu.com/n4301if/
皇太子から断罪され、殺人未遂の容疑者(悪役令嬢)と被害者になってから前世の記憶を取り戻した二人。つまりは乙女ゲームの世界に転生していたと、全てが終わった後に気づいたのだが。え、本当に私がヒロインを殺そうとしたの? え、あたしが悪役令嬢に殺されかけたの?
ミステリー要素も楽しめ、悪役令嬢とヒロイン、それぞれの立場から核心に迫ります!
ちなみにURL、スマホ(iphone)では文字列の上で長押しすると、範囲選択できるようになり、コピーというメニューが表示されます。あとはそれをブラウザのURL欄に貼り付ければ、当該ページに飛べることを知ったのは……実はごく最近の元アンドロイドユーザーの筆者なのでした(汗)。


















































