おっぱいまるだしで飛んでたあたしに ソラネコとラクダが教えてくれたこと
タイトルが、ほんっとにひどい!
いつも せなかをむずむずさせてた
ほんとはしてなかったとしても
そんな気がするんだって
あたしはあたしに言い聞かせてたんだ ほら きっと
あした 朝おきたら せなかに翼がはえてて
おきぬけのあたしは パジャマをはだけて
ぷるんって おっぱいが でちゃうのもかまわずに
ばさぁって はやしたての翼をひろげて
あたしの2階の部屋の窓から 飛びたつんだ
駅へむかうサラリーマンが
「おっぱいまるだし鳥人間だ!!」って
びっくりするだろうけど
ちがうよ そっちじゃない あたしが見て欲しいのは
ぷるんってでちゃった おっぱいじゃなくて
ばさぁってひろげた はやしたての翼のほうなのに
部屋にもどって
ブラくらい とってこようかと思ったけど
翼がはえてるせなかで
うまくつけられる自信がないから あきらめた
フロントホックで可愛いやつがあったから
帰ったら あとでためしてみよう
それにしても 空を飛ぶってすごい
太陽や 雲 月や お星さまをはりつけた
画用紙みたいに思ってた空が
こんなにも 奥ゆきのある広場だったなんて
空を飛ぶまえのあたしにはわからなかった
見て 見て
雲って あんなに3Dなんだよ
みっつの「D」のうち ひとつはドラゴンだとしても
のこりふたつはわかんないや
とにかく3D !
おっぱいまるだしのまま
つぎの雲をさがしてたら 海が見えてきちゃった
そしたらきっと あれは渡り鳥
カモメって可能性も捨てがたいけど
たぶん ウミネコだ
ネコミミも しっぽも 肉球もついてないけど
なんとなく そう
やっほー♡
ねこたちも あたしみたいに
せなかから翼がはえてきたら
あんたたちとおなじ ウミネコになれるのかなって
きいてみたら
「あいつら ねこたちに
ネコミミと しっぽはともかく
肉球まで失くす覚悟があるんだったらな」って
言われちゃった
「ネコミミや しっぽを失くさないでも
ウミネコにはなれるかもしれないけど
肉球をもったまま ウミネコにはなれないぜ
おれたたちの翼がどこからはえてるか 見てみなよ」
そんなふうに教えてくれたウミネコたちだったけど
あたしはべつのことで あたまがいっぱいで
それどころじゃなかった
だって あんたたち
ウミネコってゆうより ソラネコじゃん!!
ほんもののウミネコはきっと マーライオンの仲間で
いまごろ シーラカンスとごいっしょに
海底で 素潜りを楽しんでいるころ
あたしはソラネコたちにさよならすると
つぎの雲をさがしに飛んでった
おっぱいまるだしなことにも
なれてきたのは どうかと思うけど
そろそろ海をこえちゃうよ
どうせなら
コアラかパンダを見にいきたいって思ってたあたしが
たどりついたのはピラミッドで
スフィンクスが放し飼いされてる
だだっぴろい砂漠だった
スフィンクスはちょっと怖かったけど
翼がはえているくせに
なかなか飛ぼうとしないもんだから
ほっとくことにして
あたしは 砂漠を旅してるラクダたちに
あいさつにいくことにした
へろー♡
あんたたちも 翼をはやして
いっしょに飛んでみない? って
さそってみたかったのに
ちょっと それはむりみたい
だってラクダたちってば
せなかに おおきなこぶを背負ってて
翼をはやす すきまなんてなさそうなんだもん
そんなことをお悔やみもうしあげたら
ラクダたちは あきれ顔で
「おまえは ソラネコになにを教わったんだ?
せなかは翼をはやす場所じゃないだろ」って
ラクダったら こぶを背負ったせなかを誇らしげ
そういえば ソラネコたちもせなかじゃなくて
肩から翼をはやしてたよね
あいつらは だいじなものを背負うせなかをあけたまま
肉球を失くしてまで
両腕とひきかえに 肩から翼をはやしたんだ
ネコミミと しっぽまで
どうして 失くしちゃったのかまでは
ちょっと わかんないから このつぎ きいてみよう
それにひきかえ このあたしは
だいじなものを背負うために
あけとかなきゃなんないせなかに 翼をはやしちゃって
これから いったい どうするつもりなんだ?
フロントホックのブラが うまくつけられなかったら
おっぱいまるだしのまま 生きてくつもりなのか?
だからって あたしは
両腕を失くしてまで 肩から翼をはやす気はない
お絵描きも ギターも
キャッチボールもできなくなっちゃうもん
カレーライスだって
スプーンつかえなきゃ食べにくいし
ねこたちも 肉球を失くしたくないから
ソラネコにはならなかったんだから
だったら あたしもこのままでいい
あたしは せなかから翼をはやすのもあきらめて
せなかにホックのあるブラをつけて
翼がはえてなくて 空をとべなくて
おっぱいまるだしですらない あたしのままで
生きてくことをえらぶ
あたしには 翼は はやせないって
ソラネコと ラクダたちが教えてくれたんだ
あいかわらず せなかはむずむずしちゃうけど
あたしには もうちゃんとわかってる
あたしは翼のかわりに 両腕と 可愛いブラと
だいじなものを背負えるせなかをもってるんだって
空へのあこがれは捨てきれないけど
叶わないあこがれもきっと だいじなもののひとつ
あたしのせなかに背負ってくことにするよ
それでもまだ あたしの せまっちい せなかには
だいじなもの のっけるスペースはあいてる
翼をあきらめたぶん
いろんな たくさんの だいじなものに出逢って
なかには また あきらめなきゃなんないものも
いくつか もしかしたら いくつも
あるんだろうけど
背負えるだけ背負って
たまに ほっぽりだしちゃって 身軽になって
あたしは あのラクダたちのように
砂漠か 砂漠じゃないところを旅してくんだ
それが
おっぱいまるだしで飛んでたあたしに
ソラネコとラクダたちが教えてくれたこと
こんどの日曜日には
もっと 可愛いブラを買いにいこう
制作:瑞月風花先生
翼がなくちゃ飛べないなら、飛べなくたっていい。