複雑な日常
今日、春樹は日直で先に行ってしまい、流間はひとりで登校した。
教室のドアの前まできた。一度深呼吸をしてゆっくりドアを開けた。
(あれ……?景斗と河口くんがいない……?)
リュックはちゃんとある。靴もあった。
「……まさかっ!」
流間は自分の机にリュックを置き、教室をでた。
先生に「廊下は走るな」と言われた気がする。だが、それどころではない。
流間が向かったところはー……
トイレだった。
流間はいきよいよく、ドアを開けた。
「……!」
景斗と景斗の友達、月島光星、山本高太と……瑠衣がいた。
「おはよっ!流間!お前もこれやるかー?」
「……っ」
瑠衣は景斗に水をかけられていて、苦しそうに下を向いていた。
「これはな、トイレのきたなーい汚れが染み込んだモップの水なんだぜっ!」
高太がバケツを持ちながら言った。
「これはさすがに……遊びじゃ……。」
「ん?逆に遊びじゃないのか?」
光星は、瑠衣に汚い水をかけながらいった。
この前景斗にも言われた気がする……。
「ほら、楽しいから、流間もやろーぜっ!」
そう言って、景斗は流間にバケツを渡した。
『トイレの汚い水が染み込んだモップの水』……とても臭かった。しかもその水は濁っていて、ホコリやゴミなどがついていた。離れていても臭うこの臭い。瑠衣はつらそうな顔をしている。当たり前だ。
「早くやれよ?朝の会が始まっちまうからさ」
景斗に言われたが、やる気が出ない。瑠衣が可哀想だからだ。
「やらねーなら俺がやる!…えいっ!」
いきよいよく瑠衣に水をかけた光星。その後に高太もかけた。
3人は楽しそうに笑っている。なぜ笑えるのか、流間には分からなかった。
結局、瑠衣を助けられずに時間だけが過ぎていった。
心の中でずっとモヤモヤがのこっていて、勉強に集中できなかった。
放課はずっと瑠衣はいじめられていて、瑠衣の体はボロボロだ。
今日は掃除当番で、流間はゴミ袋をもってゴミ捨て場まで持って行った。
「……ん?」
ゴミ捨て場の近くのベンチに瑠衣が座っていた。
スケッチブックを持っている。絵を描いているのだろう。
流間は瑠衣に声をかけるか迷っていた。
(いじめられてるのに助けなかった。気安く話しかけるなんてダメだ。でも黙って前を通る訳にもいかない…)
ゴミ捨て場に行くならば、瑠衣の前を通らなければならない。