いじめの始まり……
「行ってきまーす」
朝、中学校へ向かおうと家を出る流間に母が心配そうに言う。
「いってらっしゃい、車とか気をつけてね!」
「分かってるって!」
「あははっ!相変わらず、流間のかあさんは心配性だな!」
流間の家まで呼びにきた春樹は、流間の母の言葉を聞いて笑いながら言った。
「まぁ~うるさいけどな」
流間は呆れたように言った。
涼しい風がふく朝、流間と春樹はアニメの話しや家族の話しなどをしながら、学校へ向かった。
「おはよー……え…?」
流間と春樹が教室の扉を開けたら、幼なじみの景斗と、景斗の友達二人と……うずくまっているあざだらけの瑠衣の姿がみえた。クラスの皆はみて見ぬふり。
「よぅ!流間!おはよー!」
「な…何やってんだよっ!?」
「何って…見たら分かるだろ?」
景斗は瑠衣を踏みながら言った。
「………。」
瑠衣は何か言いたそうな顔だ。
「景斗……なんで……なんで河口くんをいじめてるんだよ…」
「いじめ……?これはいじめじゃないぜ?ただの遊びだ。なっ、河口?」
景斗はいじめを遊びと言っている。景斗は瑠衣に視線を向けた。友達としての暖かい視線ではない。
「う……うん……。」
かすれた声で瑠衣は言う。景斗が怖いのだろう。遊びじゃないと言えない。
「遊びって……これが遊びって言うのか?!景斗っ!!」
「え?逆にこれがいじめに見えるのか?……ほら、流間と春樹もあそぼうぜ!」
そう言って景斗は瑠衣を蹴り飛ばした。
そして流間の耳元で、皆には聞こえないような声でいった。
「俺たちはいとこで同い年、ずっと一緒にいただろ?先生にちくるなよ?それよりお前も河口と遊ぼうぜ?俺らのグループに来いよ……いとこだろ?」
「な……」
流間は景斗と小さい頃からよく遊んでいて、仲がよかった。流間が困っているときは、景斗が助けてくれた。そんな景斗が人をいじめるなんて、信じられない。でもこれはいじめだ。
しかも景斗が言っていたのは、いじめのグループに来いと言うことになる。
(いじめはダメだ……けど…景斗を裏切れない……でも…)
「やべっ!先生くる!」
突然、廊下で見張っていた景斗の友達の月島光星が大声で言った。
「ほら、さっさと立て!」
瑠衣は景斗に言われ立ち上がり、フラフラと自分の席に座った。
「このクラスでちくったやつがいたら、すぐわかるからな!自分も河口みたいになりたくなかったら、黙っとけ!しかもこれは遊びだ。瑠衣も遊びだって言ってるんだからな!」
黒板の前で景斗は大きな声で、皆に言った。
流間は手を強く握りしめた。
(クソ……どうすればいいんだ……!)
「おい、流間も早く座れよ?先生くるぜ?」
「う…うん。」
流間と景斗が席についたあと、すぐに先生がきた。
先生が何か話している。だけど流間には、全然聞こえなかった。
これからの学校生活……どうなってしまうのか……




