美術室で
今日の授業が終わり、流間は部活の部屋へ向かった。
ちなみに流間は美術部。友達の春樹も一緒だ。
「いやぁ~、美術部はアニメイラスト描くのかな~って思ってたけど…違ったな~」
「…なぁ!」
流間は姉の影響で、アニメが好きになった。それで、アニメイラストを描きたいと思い美術部に入ったのだが…風景画や自画像など、想像していたのと違ったらしい。
春樹も同じ理由で美術部に入った仲間だ。
「ん…?」
「どした~流間?」
「あそこにいるのって…河口くんじゃね…?」
美術室の前に、瑠衣が立っていた。
「あっ!ほんとだ~!絵描くの好きって言ってたから、美術部に入るのかな?」
すると瑠衣は、流間達の視線に気づいたらしく、小さくお辞儀をした。
「どうしたの?」
流間は瑠衣に、聞いた。
「あの…美術室って…ここであってますか?」
「あってるよ!河口くんも美術部入るの?」
「はい…!榊原さん達も美術部なんですか…?」
「そうだよ!宜しくなっ!」
瑠衣は知ってる人がいて、ホッとした。
「宜しくお願いします…!」
そう言って、美術室に入った。
「席はこっちだよ~」
「あ…ありがとうございます。」
春樹が瑠衣に席を教えた。美術室の席はクラスごとに一列に座る。
瑠衣の隣の人は知らない人で、瑠衣は緊張しているようだ。
「皆そろったねー?」
「一組の高橋さんと四組の山崎さん欠席です。」
「わかりました。高橋さんと山崎さんね~」
美術部の女の先生、斎藤先生が確認をしたあと、部長が欠席者を言った。
そして、斎藤先生がメモをとった後、ノートをパタンと閉じて前を向いて話す。
「えーっと、今日は風景画を描いてもらいます!キレイだな~と思った景色や、感動した景色、心に残った景色を描いてね~。画用紙は前にあるから…一番前の席の子、自分の列の人数分取りに来てね。」
「風景画…かぁ……」
流間はボソッと言った。
「オレは苦手だなぁ…」と言いながら、春樹は流間に画用紙を回した。
「サンキュ~……はい、河口くん」
「ありがとう」
瑠衣は画用紙をもらって、裏に名前を書いたあと、すぐに描きだした。
案が浮かばなかった流間は、瑠衣の絵をちらっと見た。
(すげぇー!……早く描いてるのにバランスがとれてる…綺麗だし…)
瑠衣は迷う暇もなく描いている。それが流間には、魔法のように見えた。
(……でも何か違和感が……?)
流間は首を傾げる。瑠衣の絵は何か物足りないと言うか……暗い感じがする。
一つの家に、外灯が一つしかなく、明かりが足りない。まるで絵の中の家が一人ぼっちで泣いているように見える。
「はい、榊原くんも自分の描くっ!」
「あ…!はいっ!」
斎藤先生に肩をトンとされた流間は、自分がボーッと見ていた事に気づいた。
そして、案が浮かばないまま、適当に鉛筆を動かした。