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#93 離脱

 









 ココット、遅いですね。


 私はココットに命ぜられたままに、馬車の中で待機していました。馬を手繰る魔剣士は既に出発準備万端と言った様子であり、それは周囲の他の馬車も同じでした。


 私は馬車の小窓から外の様子をちらりと見た後、すぐに窓にかけられた布を下ろして馬車の中に座り込んで膝を抱えました。


 そして黒い前髪を弄りながら、馬車の隅の木を眺めて、思い出します。





 ココットに連れられルイカーナへ攻め入るために魔王城を出る時の事です。


 四天王エルクーロは私を呼び止めていました。


 そして恐れる私にあの魔族は言ったのです。ココットを頼むと。


 今となってはその真意もわからなくもありません。あの時の私は憎悪に心を埋め尽くされていて、エルクーロの目にただ怯えと憎しみを込めた目で返すだけでしたが……。


 始めてあの四天王の男を見た時、ココットと一緒に居た時の事です。


 あの四天王の男は……あの方は。私がココットの細い首にこの手をかけて絞め殺そうとした時。


 本当に、本当に心配そうな目でココットを見ていたな、と。


 あの目は、とても複雑な心持ちが感じられましたが、なんというか……。



「魔に愛された姫君、か……そして私はその使用人。……なんでこうなっちゃったのですかね」



 私は前髪を両手でくしゃりと握り込むようにして、顔を覆いました。


 クォートラやゾフ、ツォーネ。ココットの軍の魔族たちは皆、ココットを娘のように愛し、尊敬している。あのエルクーロでさえココットを気にかけている。私だってそう。


 私は馬車の中でごろりと寝転がり、天井を眺めて手を伸ばしました。


 ココットに付き従い、支え、最後まで見届ける。彼女は言った。私に全てを見せると。彼女の望みは叶うでしょう。


 私は彼女が多くの人を殺すのを見てなお、彼女に心を寄せている。そしてこれから今私がいるバルタの人々ですら皆殺しにしようとしているのに、皆に警鐘を鳴らす言葉すら出てこない。



「お父様、キエルは心に従いました。貴女の娘は悪魔に魂を売りました。願わくばどうか、この頬を張ってくださいまし……」



 そう、呟いたのち。


 馬車の外で兵士たちの話声が聞こえて私は飛び起きました。


 できるだけ端且つ後方に用意した我々の馬車ですが、バレてしまえば元も子もなく。騎士たちはのんびりと世間話をしていますから、気は抜けているようですが……私たちは気を抜けません。


 再び小窓の布をずらして外を見れば、兵士たちが会話しているのが見えました。



「そういえばお前聞いたか? 聖女様の噂」


「ん? ああ、聖女様か。戦場から戻っているんだろう? お顔を見たことはないが」


「普段は教皇庁に御籠になられているからな。ユナイル様の現身があまり俗世に顔を出すのは良くないんだそうだ」


「はー、そんなもんかねえ。俺は一度でいいからご尊顔を拝みたいがね。歴代の聖女は皆美しいって話だろう?」


「それもそうだが……どうにも今代の聖女様はいわく付きでな」




 私はついその兵士たちの会話に耳を澄ませました。


 そして、彼らの話す内容に、眉根を潜めるのでした。







 ♢









 クーが我々の前に立ちはだかる。


 わかっていた事だったが改めて、言葉で言われたことに歯噛みしていた。


 私は未だ人ごみの多い通りを、苛立ちを隠さず歩いていた。


 フードなど被っていない。周囲の視線が私を異物のように見ているのは分かった。あえて見せつけるようにして歩いていた。


 既にこの街に悪魔の相がいることは周知の事実。騎士でもなければわざわざ私のようなものに構う事もあるまいとしてだが、その実本心では苛立ったから少し自棄を起こしていただけだった。



 人々は私が通ると次々にそっと道を開けた。


 私はその連中の目が異物を見るような眼であることを確認して、自嘲気味に笑いながら歩いた。




「ココット?」



 不意に私の名を呼ぶ声。まさかクーが追いかけてきたのかと思ったが振り返ってみれば相手は別だった。


 その姿を頭から足まで見て、私は少し驚いた後……憎々しげに笑った。



「随分と綺麗な服を着せてもらったじゃないか、ジジ」



 私を呼び止めたのはジジだった。


 ジジはしっかりした作りの白い服を着ていた。教皇庁で与えられたのだろうな。


 わざと嫌味を込めて言ってやった私の言葉に、ジジは恥ずかしそうに頬を染めて腰布を持ちひらりと回った。



「ああ、これね……教皇様から皆頂いたんだ。心を綺麗にしてくれるんだって……」


「ふぅん」



 私は興味を示さず、すぐにジジから目を背けて再びキエルらの待つ門への道を歩き始めた。


 背後で慌てた声と足音がして、すぐにジジは私を追いかけた。





 時刻は夜。街の連中は夕飯の支度を終えていて食事も済んでいる筈だ。


 この人ごみはただの遊び人にしか見えなかった。


 実際のところは夜の散歩をする習慣があるらしいので、それに合わせて市も遅くまで賑わっているのだとクーが教えてくれたのだが、私には汚らわしく見えた。



「ねえ、ココットってば!」



 ずっと私の隣を歩くジジは頑なに無視をした私に構わずに話しかけ続けていたが、ついに耐えかねて声を大きくした。


 私は深いため息の後足を止め、くるりとジジに面と向かう。



「なんだ騒々しい。耳元で大声を出すな。鼓膜が破れる」


「なんでそんな機嫌悪いのさ! この前だって用を足しに行くって言っていなくなって……一週間だよ? 教皇様のお話も聞かずに何してたのさ!」


「お前には関係ない。話なんか聞く必要もない」



 楽しそうに一人で教皇庁で出た食事がどうとか参拝者に振舞う食事の給仕をさせてもらっただとかそんな話に意味はないのだ。むしろ不快ですらある。


 飯を与えられて尻尾を振るのは動物だけだ。


 だが言葉にして否定はし辛かった。その厚意を与えているのがクーであるならば、私とて複雑な思いはある。


 しかしてたとえクーの厚意だとしても私はそれを受けるつもりはない。私は飼い慣らせない。私が認めるのは私と……私に復讐の手段を与えてくれたエルク―ロ様だけだ。




 と、ジジが突然小さく悲鳴を上げたので何かと思えば、彼女の足の隙間をネズミが走り抜けていくのが見えた。



「なんだネズミくらいでだらしない」



 私は呆れかえり、青い顔で立つジジから再び顔を背けて歩き始めた。


 だがすぐにまた私の後を追いかける足音が聞こえて、また私の顔の横にジジの顔がひょっこり顔を出した。



「ココットってなんだか男の子みたいだよ。せっかく可愛い顔してるんだから女の子らしくしないと」


「不要だ。男の子と言われる方が馴染む。それに女の子らしさってなんだ? ネズミを見て悲鳴を上げる事か? 女の子らしさなんか知らない」


「ダメだよ! ココットいまいくつさ」


「12」


「じゃあもうあと1年もすれば結婚できる年なんだから! しっかり女の子っぽくしなきゃ!」



 私はその言葉に目を少しだけ開いた。


 そうか、そういう文化だったなこの世界は。13にもなれば女は男に娶られる。レイメも確か若くしてアウタナ伯に娶られたと話してくれていたな。


 だが私には関係のない話だ。結婚するつもりも、まして男に娶られるつもりもない。ありえない事だ。私の心には今も男性が残っているし、色恋沙汰など無縁。復讐には不要だ。




「私もさ! このバルタでまともな仕事にありつけたらさ、いい人見つけてさ、お嫁さんにしてもらっちゃったりして~!」


「なんでそんなに楽観していられるんだ。周りの連中の目を見ろ。豚に真珠って顔してお前のその薄気味悪い白いローブを見てるぞ」


「豚に真珠って何?」


「私の故郷の言葉だ。とにかくよく思われてないってわかるだろ」



 ジジは私の言葉に首をかしげていたが、すぐに唇を尖らせた。



「もーっ、幸せになる話したっていいじゃない。ずーっとそうやって何か睨んでるような顔してるから悪い事しか考えられないんだヨ」


「放っておけ。それに顔つきを変えたくらいで幸せになどなれるわけがないとも」


「なーれーるーよー! ココットだっていい人見つければすぐなんだから! 恋は人を変えるんだよ」


「そう言う話じゃない! 大体こんな地獄めいた世界だぞ。いい人なんかいないというに」


「一人くらいいるでしょ」



 いないというに、と再度言いかけて適当に浮かべた男連中。


 部下の魔族どもくらいしか男となど出会っていない。そういう生き方を選んでいる。


 だがふと頭に浮かんだエルクーロ様の顔に、私は自分で驚いて慌てて自分の頬を張った。


 だがそれを見られていたかジジがにまーっと笑って顔を覗き込んでくる。それで見透かされたように感じて私は顔が紅潮するのを感じた。



「違う! そういうのではない! あの方は私の恩人で……」


「やっぱり誰かいるんだ~ココットも乙女だねえ」


「だから! エルクーロ様はただ私に良くしてくださるだけでそんなの恐れ多く……」


「エル、クーロ……?」




 しまった。口が滑った。墓穴だ。全力で墓穴を掘り抜いた。


 慌てすぎて言ってはならない名を口にしてしまった。私は紅潮した顔のまま目だけを後悔に染めて口を覆う。


 ジジは驚いたような顔で私を見るだけ。


 当たり前だ。エルクーロ。その名は知らぬ者はいない。ファルトマーレ最大の敵、魔王軍の四天王。"黒曜"を冠するエルクーロ以外ありえない名なのだから。



 その名は恐怖と憎しみの象徴として人々の中に刻まれている。そんな名を口にすれば売国奴扱いを受けて然る。


 ジジは驚いた顔でゆっくり私に近づいてきて私が口に当てた手をむしり取る。


 やばい、まずい。人の街で魔族の名を口にするなど迂闊も迂闊。目立たぬようにするとクォートラ達にも言ってきたのにこれでは自爆。



「ココット、その人……」


「っ……ちが、あの、優しい方で……じゃなく、お前が思うような……あれでもそれでもはなく……」


「ダメだよココット! 四天王と同じ名前を名乗ってる人なんて、絶対だめだよ! 怪しいよ!」


「……へぁ?」



 私は呆れるほどマヌケな声を上げてしまった。


 ジジは真剣に私を心配するような顔で私の手を取っていた。



「ぜったいダメ男だよ! あれだよ、世間でよくないものとされているものをかっこいいと勘違いしている男だよ! もしかしてココットダメな男が好みなの? そんなのだめ! 私のココットはちゃんとした人が相手じゃないと!」


「いや、あの方はダメ男などでは……い、いや、そうなんだ! たまらなくダメな男でしょうがないんだが、名前も変えろと言っているけれど聞いてくれなくてだな……」


「なおさらダメだ~! すぐ別れよ!? ああ、まだだったらもう近づいちゃダメ!」


「あ、ああ、わかった! そうする……」




 ジジはとんでもない思い違いをしているようだ。


 私は盛大に安堵と呆れの息を零しながらがっくりと肩を落とした。


 そして誤魔化し通す為とはいえダメ男として話してしまったエルクーロ様、申し訳ございません。ですが貴方がいけないのです。私の頭に浮かんでなど来るものだから。



 私は項垂れながら再び頬を軽く張って歩き始めた。









 門までもう少しと言った所に来る頃には先ほどの焦った思考もとうに消え、再びむかむかとした陰鬱な気持ちが蘇っていた。


 いい加減ジジの話を聞くのが耳障りになってきたのもある。恋愛話は鳴りを潜め、再びバルタがどうのユナイル教がどうのといったことを話し始めたためだ。


 私の精神状態は今平穏ではない。のんびりした話など無駄も無駄だ。


 早く門で待つキエルらと合流しバルタを出て陣へ戻る。そして一度ルイカーナのエルクーロ様の下へ行き、攻略準備について再度話し合う必要がある。それも急ぎだ。


 防衛戦の構えと見たバルタが打って出てくるというのならば作戦の大幅な見直しが必要なのもある。クーが出陣してくる前に準備を済ませなくてはならない。余計な話で恥すらかいたのだ。巻いていかねば帳尻が合わない。



「きゃあ! またネズミが! もうなんなのさ!」



 ジジがまたしても悲鳴を上げた。と、私の足元でもネズミが3匹ほど駆け抜けていく。


 それだけではない。あちらこちらからネズミがちよろりと出ては決まって同じ方へ向かって行った。


 全てが、門の方へ。



「やだなあ、もう。凶兆だよ」



 ジジが脱げてしまったらしい靴を履きなおして愚痴を零す。


 だが私は……ネズミとジジを交互に見た後わずかに、笑った。



「いいや……吉兆さ」



 ネズミたちは賢い。一足先に災いから逃げようという訳だ。私という災いから。


 笑う私を見てジジは一瞬眉根を潜めた。


 そして再び歩き始めた私を急ぎ追いかけたジジは私の手を取った。



「ねえココット、一緒に戻ろうよ! 今からでも教皇様にお会いできれば恩寵があるよ! 聖女様だって私達の味方なんだよ!」


「……まだそんなことを言うのか。むしろお前が私と来い。教皇だの聖女だのと、私たち悪魔の相が持つ憎しみは今更上から目線で与えられる情でどうにかなるものじゃあない! お前は憎むことをしないと言ったが私は違う! 綺麗な着物を着せられて目が曇っているのか? 私は忘れない!」


「だめだよココット! 街中でそんなこと言ったら……!」


「構うものか! どうせバルタは終わりだ!」



 叫んだ私の大声に、周囲の人々の目が一斉に私を向いた。


 焦ったようにジジが周囲を見て、私に顔を近づけてきた。言わんとしていることは分かったが、私は溜息を一つついた後ジジを睨んだ。



「戦争の最中だ。この平穏もすぐに終わる。そうなった時にまだ教皇が助けてくれるか? 死人は誰も助けられない」



 教皇だけではない。バルタに居る連中は皆殺しだ。


 そう言う意味を込めてジジを睨んだ。ジジは私の言っていることがまるで分らないという顔で私の手を震える手で握るばかり。



「バルタは落ちないよ……だってそれじゃ」


「今バルタを狙っている魔将軍はアウタナ、フリクテラ、ルイカーナを落としてきた者だ。四天王のエルクーロ様がその背後にいる」


「そんな……でもバルタには神殿騎士や聖女様、聖歌隊もいるんだから……! 安心だよ……! それにいくら魔将軍でも街の人たちを皆殺しになんて」


「全てを殺すさ。魔将軍は深い恨みを以て攻めてくる。この街に居るものは皆殺しだ。そこに一切の慈悲も容赦もない。お前も殺さなくてはいけなくなる」


「なに、ココット……何言ってるのさ。なんでわかるのさ!」


「私が、その魔将軍だからだ」



 ジジを睨みながらそう、告げる。一瞬、周囲の時間が止まったような静寂が訪れた。もちろんそれは私とジジの間だけではあったが、確かに私たちはお互いの目を見たまま、凍ったように動かなかった。


 私は彼女の震える目を見た後……ぷす、と口の端から息を漏らして笑みを見せた。



「冗談だよ、ジジ」



 ふっと笑ってすぐ笑みを消した私は掴まれていた手を振り払った。


 そして少し進んで、一度だけジジを振り返る。



「ジジ、これだけは言っておく。幸せは……与えられるものじゃない。教皇だろうがなんだろうがそんなものを誰か他人が与えてくれはしない。幸せは自分で掴み取るものだ。あいつらを信じるな……私と来い」



 そう言って手を伸ばす。私の中での、最後の勧誘。


 だがジジは、白いローブのすそをぎゅっと握りしめて私を困ったような顔で見るばかりだった。



「ココット、あなたの恨みは分かるよ。だけどわからないよ。やっと私たちが人間として生きられる場所に来たんだよ。ユナイル教だって、これから変わるよ! 信じてみようよ!」



 そんなジジの悲痛な言葉に、私は伸ばした手を静かに下した。


 そして眉間に手を当て、少し逡巡した後……ジジに背を向けた。



「話は終わりだ。人間を信じるな。いつか私の言った事が正しいと思う時が来る。必ずな」



 私はそう言い残して歩き始める。


 もしもと思い手を差し伸べたが、ジジは既に教皇や聖女に篭絡されていたようだ。だが、クー相手ならば仕方ないか、とも思う。


 それに理解できない話でもないのだ。我々悪魔の相を持つ者は虐げられた憎しみと同じだけ、苦しみから救われたい思いがあるのはわかる。だから甘言にも乗せられてしまったのだろう。


 少しだけ胸が痛んだ。私を選んでくれれば、いい友になれただろうに。私がバルタに侵攻した折には生け捕りにでもしようかと考えたが……そうなれば私はジジが掴んだと思っている幸せの略奪者だ。恨まれると分かっているのなら殺すしかあるまい。


 しかし、私が言った事は間違いではない。ジジは必ず、後悔する。そうなった時には、全てが遅いのに。きっと私が殺す必要も無くなるほどに、遅いのに。


 歩き出した背後からは、もう付いてくる足音はしなかった。











「キエル。遅くなった。出発まではまだ間に合うな?」



 人目を忍んで馬車の荷台に転がり込むようにして入った私は、中に居たキエルにそう聞いた。


 キエルは私が入ってきた瞬間警戒していたのか驚いて身構えたが、すぐに私にゆるんだ顔を見せた。



「は、はい。もうすぐかと……」


「そうか。……ならいい」



 私は荷台の中から馬車の御者に扮した魔剣士に帰還を知らせる。ちょうどもうすぐ出発するような様子だと聞いて、間に合った事に改めて安堵した。


 荷台に戻って手ごろな場所に腰かけると、頭を抱えて深く息を吐いた。


 ジジのやつ。同じ悪魔の相として私の憎悪を理解すると思ったのに。驚くべきはあの性根なのだろうな。誰も恨みはしない、か。未だにジジの事を引きずっている自分に辟易する。信じた所で、意味などないのに。


 そう自分に言い聞かせるのは、クーとの邂逅で揺らいでいる自分の心を諫めるためだったのもまた事実と認めて、私は歯噛みした。


 迷っているのは私とて同じ。だから早く、ここを離れねば。



 そう髪をくしゃくしゃと掻いていればキエルが寄って来て私の肩に手を置いた。



「あの、ココット! お耳に入れる話が……」


「なんだ」


「……いえ、その……なんでもありません」



 なんだというんだ。


 結局キエルは口ごもったまま何も語らずにいたので、私も何も言わずにごろりと横になり、荷台に敷かれていた布を寄せ集めて枕にすると頭の下に腕を置き、その下に敷いた。


 だがふと、私はいそいそと姿勢を直し、仰向けになって胸の上に手を置いた。そして馬車の隅で肩を壁にもたげているキエルに言った。



「私も、少しは女の子らしくした方がいいのだろうか?」


「えっ……? どうしたのです突然……」


「……なんでもないっ」



 私はまたすぐに少し赤くなった顔をキエルから隠すように横を向き、腕を枕にして寝そべった。


 少し経ったのち、馬車の周りが騒がしくなり、すぐにゆっくりと馬車が動き出した。



 そうして私たちはバルタを脱した。





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― 新着の感想 ―
[一言] この小説、もう私にドストライクで最高です! 本当に面白いですし気味悪いと思いますが読んでいる最中で興奮してしまいますw これからも自分のペースで頑張ってください
[良い点] ダメ人間として語られるエクルーロ様が面白かったw やはりジジは良いキャラしてる。 彼女はどうなってしまうのか…目が離せません!
[一言] まさかの恋愛要素追加とは 地味にヒーロー候補多かったしな 聖女様は叔母か姉なんだろうな
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