心の友との出会い
友達になったあの日から、俺がこうして朝桐さんに会うのは今日で二度目だった。
「あの、身体はもう大丈夫なんですか?」
朝桐さんは、内緒話をするかのように、俺の耳元でささやく。クラスメイトたちの視線が一気に集まったような気がした。
「全然大丈夫だよ」
そう答えると、朝桐さんはほっとした顔になった。
「あの、これから困ったことがあったら、なんでも言ってくださいね」
朝桐さんは俺から離れ、ニコッと笑う。
「うん、ありがとう」
友達……なはずだが、やはりまだ朝桐さんには「壁」があるように感じられた。そこでチャイムが鳴った。
「じゃあ、またあとで」
彼女はそう言い残し、自分の席へと向かった。
「君、皆見くん?」
担任教師が来るまでのわずかな間、後ろの席の奴が声をかけてきた。振り返ると、ひょろりとした背の高い男子だった。
「ああ。そうだよ」
「話は聞いたよ。大変だったね」
「はは、まあな」
逆の立場なら俺もそうするだろうが、できれば同情はやめてほしい。
「で、彼女とはどういう関係なの?」
と思ったら、いきなり男子は話題を変えてきた。そこにはいい意味で遠慮がなかった。
「友達かな」
肩の力が抜ける。俺は正直に答えた。
「へえ、怪しいなあ」
見た目に似合わず、どんどん攻めてくる。俺はここである疑問が浮かんだ。
「知らねえの?」
俺はおそるおそる、ぼかした言い方で尋ねた。
「え、なにが?」
きょとんとする男子。俺は確認を取った。
「俺のこと、なんて聞いてる?」
「自転車のチェーンが外れたとかなんとかで、壁にぶつかったんでしょ。……違うの?」
「……いや、そのとおりだよ。ったく、運が悪かったぜ」
俺は笑って誤魔化す。男子も疑うことはなく、遠慮のない笑い声を上げた。
どうやら話が曲解してみんなに伝わっているようだ。たぶん、他の者も俺と彼女の間にあった出来事(主に俺が悪い)を知らないようだ。
「ある意味よかったな……」
俺は朝桐さんに変な疑いがかからないことが分かり、安心した。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は仲間夏彦。よろしく」
男子がここで初めて自己紹介をした。
「おう、よろしく。皆見一将だ」
俺は同じく自己紹介をする。……今になって分かったことだが、俺は仲間夏彦と、これから先もずっと親友で居続けられる、そんな感覚があった。