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俺が彼女に告る理由  作者: 本間 甲介
理由その2~ゴールデンウィーク~
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初登校

「いよいよか……」


 二週間後の月曜日。身体の怪我もすっかり癒え、ついに俺は「高校生活」を始める朝を迎えた。


「分かっていると思うけど……電車で行きなさいよ」


「はい……」


 自転車に乗った俺に、母は厳しい言葉をかけてくる。俺は素直にうなずき、自転車を駅までこいだ。


 駅に到着し、俺は同じ高校、他の高校の制服がいっぱい乗った電車に乗って、次の次の駅へと向かった。


 その間、同じ高校の生徒たちの様々な会話が耳に入ってきた。ガラにもなく、俺は緊張しだした。


 駅を降り、生徒たちについていくこと五分。念願の学校が見えてきた。


 さらに緊張が増す。俺は無心で校内に入った。


「えっと、俺のクラスはと……」


 事前に電話で教師から教えてもらったクラス【1―B】へと向かう。


「とにかく、最初が肝心だよな」


 次々と生徒たちが入っていく中、俺は呼吸を整えた。


「よしっ!」


 恐れるものは何もない。俺は勢いよくドアを開いた。 


「皆見一将、みんなよろしく!」


 固すぎずちゃらけ過ぎず……俺は自然体で教室内にいるみんなに自己紹介をした。


「…………」


「…………」


 だが、これは失敗だった。「作られた場」ではない、唐突に行われた自己紹介は、まったく受け入れられなかった。


「よろしくー」


 約一名、見知った顔のやつが答えてくれたが、あとはすぐにそれぞれの会話に戻った。 


 ――目的は達成した。俺は、自分の席を見つけるとすぐにイスに座った。この時の俺の胸中はあまりの恥ずかしさで顔を上げることができず、ひたすらカバンの中をあさるふりして、チャイムが鳴るのを待った。


 目を背けていた事実に向き直らなければならない。理由はどうあれみんなよりスタートの遅い俺は、人一倍頑張らきゃ友達は一人もできな――。


「皆見くん、おはようございます」


 凛とした、透き通るような声で呼ばれる。その声に反応したのは、俺だけじゃなかった。


 自然と顔が上がる。その声の主を見て、俺は……。


「朝桐さん。おはよう」



 すでに友達が出来ていたことを、思い出した。

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