調子に乗った馬鹿の末路
ゴールデンウィークのあの日をキッカケにして、俺と朝桐さんの仲は縮まった。
といっても、それはあくまでも友達としてだ。一緒に買物に行く……なんていうハードルの高いことはできなかったが、俺たちは教室で会えばあいさつを交わすし、途中まで一緒に帰って話したりすることも多々あった。まあ、その際「お邪魔虫」がいることもあったがな。
スタートこそ遅れたが、それが逆に俺に「青春」を与えてくれることになった。俺は朝桐さんと一緒にいることが何より楽しかった。
けれど、楽しい時間というものは決して長くは続かない。それは世界の真理だった。
期末テストを終え、調子に乗ってゲームをして徹夜をした後の月曜日。あと少しで夏休みだと、浮かれていた時だった。放課後に俺は担任に職員室に呼び出され、ある一言を告げられた。
「あの、もう一度お願いします」
それはあまりに衝撃的な言葉で、俺はすぐにそれを受け入れられなかった。担任は呆れた顔になった。
「何度言っても結果は変わらん。補習だ、補習」
担任は俺の心に刻みつけるように、強調して言った。
「補習……ですか」
まともに声が出ない。そんな俺を無視するように、担任は説明する
「国語と社会、数学が赤点だ。よって夏休み最初の一週間は補習に来るように」
死刑宣告を受けたかのような気分だった。俺は頭が真っ白になり、その後担任が何を言ったのか分からないまま、頭を下げて職員室を出た。
そのまま自然と俺の足は便所に向かっていた。個室に入り、俺は便座に腰を下ろして、カバンから三枚の答案用紙を取り出した。
「……ひでえ点数だ」
ペケばかりのそれぞれの答案用紙。返された時はそうは思わなかったが、よくよく見たらひどい点数だった。
「ま、三つで済んでよかったな。ははは」
他もそこまで良い点数だとはいえない。俺は不幸中の幸いだと、自分をなぐさめた。
「ははは……はは……」
笑えば笑うほど、自分が惨めになってくる。
『平均点取れればべつにいーし』
中間テストの時はほとんど平均点は取れていた。だから俺は期末テスト前、自信たっぷりに夏彦にそう言った。その結果が、これだ。
あの時の自分をぶん殴りたい。俺は調子に乗って勉強を怠っていた自分が許せなかった。
「二度とこんな点は取らねえ……!」
俺はクソッタレな己の心を、便所にいる間にすべて流すことにした。




