前日譚1
「さっさと出ろ。釈放だ」
牢兵はそう言うと乱暴に俺を押して、強引に前へ歩かせる。釈放だと言うのにまだ足枷は付けられたままなのは、正式に最高裁判長から釈放の令が出てからでなければ外してはならないのか、それとも俺がただ恐れられているのか、このどちらかだろう。
牢獄は明かりこそあるがとても薄暗く、その上天井から漏れ出している地下水のせいでずっと湿っぽい。牢の扉もそのせいで錆びついてしまっていて、人を収容するにはあまりにも衛生的に良くない場所であった。だから長いことここにいた俺としては、地上に出る階段を登るたび増していく日の光はかなり辛い。
地上に出ると景色を見る暇さえ当たれられず、早速馬車に詰め込まれて、最高裁判所に連れて行かれる。ここに来た時は道はかなり凸凹していたはずだが、車輪ごしに伝わる衝撃から察するに今はそうではないようだ。
やがて馬車が止まると、牢兵によってまたも強引に裁判所内に連れて行かれた。入り口に入って正面の巨大な扉を開けると、完全武装の騎士が道の両側にずらっと並んでおり、その先には裁判長が死体を見るかのような目でこちらを睨んでいた。
裁判長の前に膝をつき、頭を地面に つくほど下げると、心の底では拒絶したい気持ちでいっぱいだというような声音でこう言い放った。
「ギフト・アルデンテ、本日をもって貴様に課せられていた刑、禁錮200年を解く」
足枷は外され、体の自由がきくようになった。するとまるで付け加えるかのように、こう続けた。
「二度と戻ってくるなよ、化け物」