先生!情景描写と心情描写はどうやってつなげるのですか?
これはパート2です。よろしければ1から見てください。
こんにちは一茜です。
前回と引き続き、和歌の修辞について語っていきます。
3.掛言葉
短く言うと、音の同じで意味の異なる2つの言葉が1つにまとめられて使われている。茜が一番重要だと思う修辞です。例えば、「まつ」が「松」と「待つ」の2つの意味で使われているなど。古典の思想として、
率直に言うのは恥ずかしい。頭のいい人にだけ分かるように、できるだけ婉曲的に伝えたい。
というのがあります。なので、和歌や漢詩に共通することとして、情景描写と心情描写の2つをうまく重ねて作られています。
掛言葉は、それらを繋げる「接着剤」のような役割です。まとめられている2つの言葉は、片方が情景描写。もう片方が心理描写に使われるのがほとんどです。
例えば……
難波江の
芦のかりねの
ひとよゆえ
みおつくしてや
恋渡るべき
難波の江の芦の刈った根の一節ではないが、一夜の仮寝のためにあなたに澪標ではないが、身を尽くして恋しないといけないのでしょうか
今回は「かりね」と「ひとよ」と「みおつくし」が掛言葉です。でも、こう思いませんでした?
「わかんないよなにそれ」
と。
仮寝……そのままです。でも言われないと気づかない系。
刈り根……そのままです。
一節……数え方の一種。ひとふし。
一夜……いちや。そもままです。
澪標……川の深さを示す印。船は水深が浅いところだと動かなくなるので、そうならないような標識。川から少し姿が出ている。
身を尽くし……そのままです。
一部は知らなければ無理というのが本音。
(関係ないけれどかけことばをギャグだと説明されるのが嫌いな茜。)
似たものとして、「反復」もある。
あさじゅうの
小野の篠原
忍ぶれど
あまりてなどか
人の恋しき
篠と忍がどちらも「しの」という読み方です。さらに2回目の「しの」のところで情景描写と心情描写が切り替わっていますね。それを意識して下の現代語訳を見てください。
あさじゅうの小野の篠原の「しの」ではないが、
忍んでも(我慢しても)どうしてあなたのことがこんなに恋しいのでしょうか。
ね。分かれているでしょ?
まあそうでない和歌もありますが。
4.比喩の「の」
和歌特有の「の」の使い方。まずは例から。
あしびきの
山鳥の尾の
しだり尾の
長々し夜を
ひとりかも寝む
どの「の」が比喩の「の」か分かりますか?正解は三番目の「の」です。
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のように長い夜中を1人で寝る
「のように」で訳し、掛詞とは少し異なり情景描写を風景描写のように読んで、それを例える時に使う助詞です。普通の古文ではこのような用法はないので、和歌だけに使われるものです。
でもこの「の」は省略されることもあるというのはここだけの話。
疲れたのでここで終了したいと思います。
ここまでありがとうございました。
みなさんが31音で描かれた世界の物理法則を理解することを願って。一茜
友達から聞いた話です。
「公園でお弁当食べていたらさ、猫がきてさ。腕の中に入ってきて、かわいいなーって思っていたらさ。手をひっかいて食材盗んで逃げてった。」
茜「そんなことあるのね」
猫は裏切っても和歌は裏切らない。(確信)