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太古より、人の家族

作者: A.kujou


昔、家に1匹の犬が居た。

白と黒のシベリアンハスキー

名前はユキ


私と彼女は、私が生まれた時から一緒だった。

成犬の彼女と私は、いつも一緒だった。


遊び疲れて眠る私に、彼女はいつもタオルをかけてくれていた。


私が幼稚園へ入る頃、彼女の背に乗るのが好きだった。

私が幼稚園へ入った頃、彼女に抱かれるのが好きだった。

私が幼稚園に慣れた頃、彼女のお腹で眠るのが好きだった。


とにかく私と彼女はずっと一緒で、

寝るときも一緒

彼女はまさに当たり前の家族だった。



私が幼稚園を卒園した頃、彼女は出来た事が出来なくなった。


私が小学校へ入る頃、彼女の背に乗れなくなった。

私が小学校へ入った頃、彼女は私を抱けなくなった。

私が小学校に慣れた頃、彼女のお腹で寝れなくなった。



子供だった私は、とても悲しんだ

それでも私と彼女は常に一緒だった。


彼女は、段々と元気をなくして行った。

歩く姿もどこかおぼつかず、私はそんな彼女が不思議で仕方がなかった。


それでも彼女は遊び疲れて眠る私に、おぼつかない脚で歩み寄り、何度も何度も落としながらもタオルをかけてくれた。



私が小学校を卒業する頃、彼女は歩けなくなり始めた。



遊び疲れて眠る私に、彼女がタオルをかけてくれることはなくなった。


彼女は何も出来なくなった。

それは昔の私と同じ

私は彼女の変わり様に悲しみを覚え始めたり

同時に、ある使命感が湧き始めた

彼女は私の家族だ。

家族に私は、恩返しを始めた。



私が中学校へ入る頃、彼女を背負う様になった。

私が中学校へ入った頃、彼女を抱く様になった。

私が中学校に慣れた頃、彼女をお腹で寝かす様になった。



私は、彼女が私にしてくれた事を彼女にしてあげた。

私にとってそれは、

恩返しであり親孝行だった。


私はサークルの中で、彼女を抱いて眠った。

私の温もりは、彼女を温めた。

彼女の温もりは、私を冷ました。



私が中学校を卒業する頃、彼女は動けなくなった。



サークルの中で横たわる彼女を見て、私は涙を流した。


背に乗って遊んだ事

抱かれて眠った事

共にテレビを見た事

タオルをかけてくれた事


その全てが過去になった事が、痛みを感じるほど辛かった。



私が高校へ入る頃、彼女は立てなくなった。

私が高校へ入った頃、彼女の体は痩せていった。

私が高校に慣れた頃、彼女は食べ物を口にしなくなった。



サークルの前で、私は泣き崩れた。

親は、私と共に泣き、私の背中を叩いた。

そんな私を、彼女は目だけ向けてくれていた。

その目は、まるで、泣き崩れる私にタオルをかけたがっているかのように思えた。

私は、涙で揺れる視界の中サークルの端に置いてある彼女がいつも私にかけてくれていたタオルを手に取った。



私が子供だった頃、背に乗せてくれた彼女

私が子供だった頃、抱いてくれた彼女

私が子供だった頃、お腹で眠らせてくれた彼女


共に遊び、

共に眠り、

共に朝を迎えた彼女に、

私はタオルをかけてあげた。





それが、最後の親孝行となった。

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