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8.友達なぞクラスに一人居れば充分だと思う

 薬は大神未輪おおがみみわの目が覚めてからにしようという事で、その場を戻ってきた他のメンバーに任せ、私と男子生徒Cは洋館の探索に着ていた。

 東大とうだい神倉かみくらと男子生徒Aが探した館の西側にはホテルの跡を示すように客室らしき部屋が並んでいたらしい。しかし、そのほとんどが丁度のない空き部屋ばかりだったそうで大神未輪おおがみみわをゆっくり寝かせてやれる様な部屋は無かったそうで、倉庫から辛うじてシーツを数枚見つけただけであった。

 どうやらこの館、主な設備は東に割り振られているらしい、食堂、居間、キッチンはもう見て回ったので私と男子生徒Cが探索すると場所はそんなに無いだろう。というのが皆の見解だ。

 私は男子生徒Cを引き連れて廊下を奥へ奥へと進んでいた。


 「なぁ、一緒に行くより手分けして探した方が良いんじゃないかー?」


 男子生徒が私に声をかける。私と二人きりなのが気まずいのかも知れない。


 「何か見つけた時に二人でいた方が運びやすいでしょう?それに」


 ふいと男子生徒Cに視線を向けて。


 「見張ってないと何するか分からないわよ、私」


 私の言葉に男子生徒Cは何かを言いたいような言いたくないようなむず痒いような顔をした。そのまま暫く廊下を歩いているとぽつりとCが口を開く。


 「…何で委員長は大神おおがみをあんなに…気にするんだ?」

 「嫌いであることに理由が必要?」


 私の言葉に男子生徒Cはきょとんとした顔をする。

 「…驚いた」


 「何が?」

 「委員長がそんな事言うとは思わなかった」

 「私が彼女を煩わしく感じているのは周知の事実だと思っていたけど?」

 「でも、今まではっきりそう言った事は無かったろう」


  事実、彼女について私が誰かに悪し様言ったことは無い。そんな事しなくとも態度で私が彼女の事を良く思っていないのは明白であるし、周囲の人間にとってもわたしが大神未輪おおがみみわを嫌いであるらしい、で充分であった。


 「当たり前でしょう」

 「じゃあ何でー?」

 「あなたに言っても害にも益にもならないだろうからよ」

 「やな信用のされ方だなー」

 「だったらもう少しクラスに溶け込む努力をしたら?」


 今更な事を言うが、実は私はクラス委員長なのだ。と言っても自ら進んで成ろうとした訳でも、推薦された訳でもない。委員決めの際に誰も立候補しなかったため一番最初にクラス全員での勝ち残りジャンケンにて決められたのだ。35人で一斉にジャンケンをしたのにも関わらず2回戦目でアイコ無しのコールド決めをされたときは軽くいじめかと思った。


 そんなこんなで委員長に成ってしまったが実際の所、委員長の仕事は一切していない。その後副委員長に立候補した東大とうだいと他の各委員に殆どの仕事を取られてしまったからだ。そんな訳で私が委員長になってしたことといえば皆が仕事をしているのを一歩後ろから眺めていることだけである。

 なんだこれいじめか。私が大神未輪おおがみみわと同じ班に成ったのもこれが原因である。


 大神未輪おおがみみわと言う人物は控えめで儚げでなおかつ性格も外見も良い完璧な人間だ。しかし、得てして完璧な人間というのは存外敵を造りやすい物で、私が彼女を嫌いであるらしいと言う事実は、大多数の女子にとって、男子生徒達の関心を引く彼女を攻撃するのに充分な理由と判断されたらしい。


 つまり彼女は一部を除いた残りの女子にハブハブされているのである。それが、更に男子の同情を買い、さらにそれで女子から反感を買うので事態は泥沼化している。


 因みに一部の女子というのは神倉かみくらの事でつまりクラスの女子で彼女の味方は一人だけなのだ。まぁ1日の学校での総会話時間が10分にも満たない私からすれば友達なぞクラスに一人居れば充分だと思う。


 いや別に私が省られている訳ではない。何ならクラスの一大グループは常に私の周りに集まっているし、私を中心にして世間話をしている。ただ会話を振られないだけだ。

 そして私も率先して話しかけたりしないので結果、1日に発した言葉がおはようとさよならだけになると言うこともあるというだけで、決していじめられている訳ではないはずだ。多分。


 そんな訳で大神未輪おおがみみわ神倉かみくらの二人が仲良く他の女子の班に入れて貰えるわけもなく結果余り者を委員長だからというだけで先生に押し付けられた私の班に流れてきたのである。




 「これでも普通にしてるつもりなんだけどねー」

 「普通…?」


 頬を掻きながらいう男子生徒Cを横目に見ながら私は首を捻った。思い出されるのは普段の彼の学校での行動だ。その1、英語ではない外国語の分厚い本を持ち歩く、但し読んでいるところを見たことがない。その2、月に数日間随分派手な眼帯をしてくる、毎回彼は物貰いと言い張っていたが毎月の事なのでそのうち誰も何も聞かなくなった。

 別に今日は特に目立った事はしていないが普段の彼は非常に浮いている。浮いているというのに浮いている状態で受け入れられているという非常に稀有な存在である。


 「ほら中二病って普通の奴がなる奴だろう」

 「そういう事いっちゃうから浮いてるのよ」

 「まぁ、僕は委員長の事好きよー」

 話の脈絡が掴めない。


 「いきなり、何の話?」

 「そんなに自分の事落とさなくても良いんじゃないって事」

 「…」

 私は何も答えず手近にあったドアを開けた。


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