18.歩み寄り
やたら恥ずかしがるケイを問いただしたサヤカ。
追い詰められて出た言葉に、サヤカの反応は?
「だ、だからよ! お前のことを認めるって言ってんだよ! こ、このぐらい分かれってんだ!!」
赤面させながらケイは私へ言葉をぶつける。
「…………」
その勢いに圧されて咄嗟に声を出せなかったけど、はっきりと言いたいことは伝わった。
(つまり……)
「沙恵の護衛をしても、良いの……?」
一応声を落として確認してみる。
「そうだよ! まぁ、まだ鍛えないといけないからすぐにってわけではないけどよ……」
(そっかー……、私……)
「沙恵の護衛になれるんだぁ……」
嬉しさよりもほっとした感情の方が上回ってた。
「そんな明るい仕事じゃねえけどな。裏方だし、何かあった時は俺らが守らないといけねぇから大変だぞ?」
そんなことは分かっている。でも――。
「ケイは、私のことを必要だって認めてくれたってことだよね?」
「な、あ、あぁ……」
少しにこやかに言ったら、何故かケイは少し目を逸らしてしまう。
そこまでは言ってねぇけどな、と小声で言ったのを聞き逃しはしないけどね。何気に見せた可愛い所がまたおかしくて口元を緩ませていると――。
「入るよー!」
扉の向こうから聴き馴染みのある元気な声が聞こえてきた。
「いいよー」
「じゃあ入るねー!」
予想通り、いの一番に部屋へ入ってきたのはマックスだった。その後ろからイチ、湊さん、そして何故か暗い表情の沙恵が続く。
「あっ、元気になったんだ―。よかったー」
「遠くから見ていたよ。突然倒れるから何事かと思ったが、まさか操力切れとはなぁ」
マックスとイチがそれぞれにしゃべりだし、更に場がほぐれてきた。
「二人にも心配させちゃったみたいだね。絶対に勝たなきゃ! って思って戦ってたけど、最後まで持たなかったよ」
「あんまり無茶はだめだよ~? 大変なことになるのはサヤカなんだからね」
マックスの眦が下がり、かなり心配していたことが分かる。
「うん、ごめんね」
「女の子が無理に力を使うものじゃないのは確かだ。しかし、戦いは見事だったと思うよ」
反対にイチは、何でか上から目線で私の戦いを論評している。けど、褒められたことは少し嬉しかった。
「はいよ、ちょっとどいて」
そこを割って入るかのようにして、湊さんが私に近づく。
「異常がないか見てみるからね。ほら、窓布を閉めるし覗かれても困るから、男どもは一旦出ていきな」
手を振ってケイ達を部屋から出した後、窓布と呼んでいた布をカーテンのように閉めて、私の服を全部脱がせた。
それから手首を軽く握り、目を見つめ、身体を眺めた。
身体を眺める目が、ちょっぴりくすぐったい。
「脈も大丈夫、目も正常、傷はあざはあるけど骨は折れてないみたいね。あと、どこかひどく痛んだり、気持ち悪かったりしない?」
「はい、大丈夫です」
しっかり声に力を乗せて言ったんだけど、湊さんは少しだけ瞼を落とす。
「今のところは大丈夫かもしれないけど、何かあったら絶対に医者の所に行きなよ」
そう言うと湊さんは私の頭をポンポンと叩き、覗き込むようにして言葉を繋いだ。
「命より大事なものはないんだからね」
「えっ?」
悲しむかのような湿った言葉に、私は上手く返事が出来なかった。
その言葉の重さを、私は今でも推し量ることができない。
でも、その言葉が「おもい」ということだけは理解できた。
「さぁ、暗い顔してないで着替えた着替えた!」
「わっ!」
急にニカッと笑ったと思ったら、湊さんは私に服を放り投げてくる。
「ま、そこまで気にはしていないから安心しなって」
高笑いする湊さんに違和感を覚えつつも詮索はしないでおき、私はいそいそと着替えることにした。




