16.決着
旗を目掛けて走る2人。
ここでサヤカは、大技を繰り出してケイを止めようとする。
ケイはこのピンチをどう潜り抜けるのか?
「うぉおおおおおおい、ちょっとまてえええええ!!!!」
突如現れた水の塊に、俺は動けなくなった。
「待ってって言って、先に待たなかったのは、どっち~……、よっ!!」
そのままサヤカはまさに鎚のように、大きな水を俺の頭上に落としてくる。
(流石に避けきれねぇ!)
迫りくる水の塊はどんなに走ろうが間違いなくつぶされるだろう。
(詠唱間に合えよ……!)
[炎の天幕を我が頭上に”炎蓋”!]
――ジュワッ
少々早口だったが成功し、上から降ってくる水の一部を蒸発させて穴を開けることができた。
(よしっ、これで進め……。あん?)
走ろうと思って前を見る。
俺がいる場所は確かに濡れてないが、あの水の塊が残っている。
(仕方ねぇ。後ろにぃっ!?)
振り向いてさらに驚く。
(み、水が残ってる!!??)
よく見ると周囲は水に囲まれてた。困惑するが、少し思考を巡らせる。
(ま、まさか……?)
その可能性に至った瞬間、旗の方向とは逆に水が動き出した!
「流石に俺の炎でも抜けねぇっ、てっ!!」
思わず叫んでしまうぐらいには恐すぎる。だから、急いで同じ方向に走り出すしかなかった。
(てか、こんなに力使って大丈夫なのか、あいつは!?)
そんなことを考えはするが、そんなことよりこの状況を何とかしたい。
俺は脚を止めずに考えた。
(はっ、その手があった!)
抜け出せる可能性の一つをひらめき、迫ってくる水のせいで詠唱はできないことを考えて、文字だけを叫ぶ。
[”炎突”!!]
地面に両手を向けて炎を出す勢いで空中へ飛んでいく。
(ちょっと危険だが、これしか方法がねぇ……!)
抜け出し切ったところで着地点を見てみるが――。
(くそっ、もう届きそうじゃねえか!)
それより先にサヤカの姿を捉えると、もうかなり旗の近くへ来ていた。
恐らく1差(200m)もない。
(流石に落下だけはどうにもならねぇ!)
歯がゆい気持ちが心を支配する。
(着地で少し痛むが、自分の足に賭ける!!)
――ドンッ
そして時間を引き延ばされたような落下が終わり、俺の足が地面に勢いよく激突した。
「っ痛~~~~~~~!!!!」
流石に着地直後は痛みに耐えられなかったようだ。が――。
「う、うおおおおおおお!!!!!!」
歯を食いしばってそれに耐えつつ脚に鞭を打ち、旗の方向へと駆け出す。
(くそ! 滅茶苦茶滑るじゃねぇか!!)
だが、さっきの水の塊が地面にいたせいか、濡れていて思うような速さを出せない。
(なら!)
[道を塞げ″炎壁″!]
俺はもう一度、サヤカへ炎の壁を送りつける。
少し気を取られてくれれば俺がこの濡れた部分を通り過ぎ、乾いた地面をしっかり踏みしめて一気に近づくことができると思ってのことだ。
(これで少しは脚が止ま……。なっ!!??)
しかし、止まることはなかった。
サヤカは後ろを少し見ると、左手を上げ身体より大きな水の盾を作っていた。
(だから、器用過ぎんだろ!! 3カ月で鍛えられる勘じゃねぇって!!)
そのまま俺の攻撃は無残にも散り、サヤカは目の前に来た旗へと飛び込んだ!
「もらったあああああああああ!!!!」
そう叫ぶサヤカの手が棒にかかりそうになる。
この距離からではどの攻撃も、どんな邪魔も、そして自分の手も届かないことが分かり敗北を確信した、その瞬間――。
――ドサッ
サヤカの身体から力が抜け、旗の手前で倒れてしまった。
「えっ?」
あまりに突然のことで、俺は一瞬動けなくなってしまうが、慌ててサヤカの元へと駆け寄る。
見ると息はあるが意識はないみたいだ。
「お、おいサヤカ? 大丈夫か??」
顔を軽く叩きながら呼んでみるが、反応は一切ない。
「と、取っちゃうぞ~、良いのか~……?」
その意識のないサヤカへ言葉を掛けながら、俺は旗を掴んだ。
「ほ、ほら、俺の、勝ちだぞぉ……」
勝ち名乗りも風にさらわれ、俺はこの状況を虚しく思う。
(こんな勝ち方、俺は、俺は……)
「認めたくねぇよ……」
こうして、俺とサヤカの勝負はあっけない幕切れとなった。
ケイのパートはここまでです!
次からは再びサヤカが語り手です!
※少しだけ文を修正しました。




