15.熱のぶつかり合い
戦いの前に沈んでいたサヤカを焚きつけることに成功したケイ。
ここから最後の戦いが始まる。
旗へと先に走り出した俺は、最初に距離を取るため後ろを振り返らずに走り出す。
「させない!! [我が手より生まれし水よ、綱となりて相手を絡みとれ”水綱”]」
サヤカは俺を捕まえようと、水で綱を作り飛ばしてきた。
「はっ、そんな攻撃で俺が止まるかよ!」
自慢の脚の速さでサヤカの攻撃をかいくぐる。だが――。
「うおっ!?」
急に地面がぬかるみ、踏み込む脚が滑った。
どうやら水の綱は見せかけで、その先で俺の脚元を少し狂わせるのが目的だったようだ。
間一髪で倒れることはなかったが、少し動きを止めた間にサヤカが俺を追い越す。
「勝って証明してやるんだから! 沙恵は間違ってないんだって!!」
そのまま速度を上げて置き去りにしようとするが、残念ながら考えが浅い!
「そんな速さで俺を置いてきぼりにしようなんざ、まだまだ戦いに慣れてない証拠だな!」
サヤカへそう宣言してから少しだけ乾いた地点へ足を運び、そこでもう一度地面を踏み込む。
「おらあああああ!!」
そして、一気に地面を蹴飛ばし、少しだけ離れたサヤカへすぐに追いついた。
「なっ!?」
「速さならそこらへんの奴には負けねぇ! 当然、お前にもな!!」
見計らってサヤカに小刀で攻撃を仕掛ける。
だが流石にさっき戦ってみて感じた、こいつの強さは分かっている。
案の定、距離を取ったかと思ったら、すぐに俺の足下へ銃を何発も撃ち込んできた。
(攻撃に対する反応が良すぎんだよ)
少し心に悪態を吐いて、弾を避けていく。
サヤカはある程度撃った後、旗を目掛けて進む。
(あくまでも銃は離すためか……。だが)
そんなことは織り込み済み。
だったら、それ以上のことをあいつにするだけだ。
「りゃぁっ!」
持っていた小刀を上空へ放り投げる。
俺はそれに続いて、サヤカ目掛けて突進。
チラチラと俺の方を確認しながら走っているから、すぐに近づく俺に気付いて銃を構える。だが――。
「俺ばかり見てたんじゃダメだぜ! 見上げなよ!」
あえて忠告を出して、注意を小刀へ向けさせる。
サヤカは上を見て気付き、これ以上進むと危ないことを察知して、右方向へと避けた。
(狙いはそれだ!)
[道を塞げ″炎壁″!]
「きゃっ!」
サヤカと旗の間に炎の壁を作る。
短いが時間稼ぎにはなるだろう。その隙に足を速めて放った小刀を掴み、旗へ突っ込んで……。
[”水柱”っ!!]
と思ったが、流石に一筋縄ではいかず、俺の目の前を水が勢いよく通り過ぎていく。
「顔をやけどしたらどうすんのよ!!」
その後ろから炎を割って出てきたサヤカは、怒りを目に宿していた。
「そこまで考えちゃいねぇよ。お前の足を止められたら十分だから、なっ!」
水の塊が目の前から消えた瞬間、自分の足を更に加速させる。
「ちょっと、待ちなさい!」
当然サヤカも後を追いかけてきた。
「待てと言われて待つ馬鹿はいるかってぇの!」
この勝負は別に相手を戦闘不能にする必要はない。先に棒を取った方が勝ちだ。つまり――。
(さっきの戦いを見ても、こいつに速さはない。先に立てば俺の方が早いのは間違いない!)
油断はならないがある程度決着はつけられる。
このまま走り抜けたいところだが、後ろをチラッと見ると何かぶつくさ言いながら追いかけてくるサヤカが見えた。
(どうせ小細工だろ? 避け切ってやるよ)
旗まで恐らく二差(およそ400m)。
駆け抜ければすぐ取れる位置までは来ている。
どんな攻撃が来ても返り討ちにできる心構えはある。
[”大水鎚”!!]
するとサヤカの詠唱が終わったようだ。
「?」
だが、言葉の意味が分からない。
まぁ、そんなに大した物は出してこないだろう。と――。
(あん? 何か地面がキラキラしてんな……)
そんなことを考えていた自分が甘かった。
「だあああああありゃあああああああああ!!!!」
「はぁっ!?」
咄嗟に上を見上げると、俺の周囲二間(4m)に巨大な水の塊が出現していた。




