7.サヤカの気持ち、ケイの気持ち
不意を突くものの、サヤカの反応速度に驚くケイ。
だが、サヤカは違う何かを感じ取っていて……。
2021/01/05更新
最後の部分に文を足しました。
「ねぇ!」
突然、サヤカから怒りを含んだ声をかけられる。
「なんだ、勝負の最中によ!」
口を出している余裕なんざないだろうに、よく話しかけられるなと……。
「それ、こっちの台詞だから!!」
明らかに怒りから発せられた声に、少し怯んでしまった。
「どうせ素人だとか、経験もないくせにとか、そんなこと思いながら勝負してるんでしょ!」
図星を突かれ言葉に詰まるが、言われっ放しは癪に障る。
「じ、事実を事実として認識して何が悪いってんだ!」
「そんなこと一番私が自覚してるよ!!!」
振り払うようにして吐き出した言葉からは、悔しさと覚悟が滲んでいるのが分かった。
「私はあんた達みたいに経験も知識も、体力だってまだまだだと思ってるよ!
だけど私はこの3カ月、必死にあんたを倒すために、きついことをいっぱいしてきた。
何度も挫けそうだったけど、2カ月前に知ったその差を埋めるために、私はやれることはやってきたつもりなの」
必死に訴えかけてくるその言葉に、心が何故か動かされる。。
「真剣に訓練して、真剣にあんたを倒すことだけを考えて、真剣に悩みに悩んできたのに……。なのに……」
言葉が一瞬途切れる。
気がつくと俺はサヤカの方に真っ直ぐ身体を向けていた。
「なのに、肝心のあんたがそんな心でどうすんのよ!!
私が倒そうと思っていた男は、いつまでも私に対して素人とか、弱いからとか、そんなこと考えながら戦うような男だったの!!??」
ぐっと喉が鳴る。
あまりにも的を射られすぎて、言うことは何もない……。
「そんな考え方で、あんたは今まで戦ってきてたの!?
自分が弱いからこそ鍛えてきたのに、あんたに認めてもらおうと思って頑張ってきたのに……。
沙恵がいるから、沙恵のために頑張ろうって思ってきたのに……!!
これじゃあんまりだよ!!!!」
「!!」
俺があまりにも勘違いしていたようだ。
見下して、決めつけて、挙句の果てになめてかかっていた。
(はっ、何だよ……。あんだけ油断しないようにやってきていたってのによ……)
戦いはいつでも命のやり取りになる。
模擬戦でもそれは当然のことだ。
だが俺は、彼女に対して最低な心意気を見せていた。
(全く、最低だな俺は……)
自分の抱いた気持ちを恥じたい気分だ。
怒りに震わせながら紡いだその口に、俺はかける言葉を見つけられない。




