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5.2.危機の顛末

 こちらも更新完了です!


2020/01/05更新

 脳と視界が揺れている中、私は何とか体を捻って躱しつつ、捻った回転を生かし左足で脇腹に蹴りを入れる。相手は男ではあるけれど、脛に仕込んだ鉄板(1枚3kgくらい)の威力を考えれば、十分な攻撃になる。そして入った瞬間、相手が横方向に転ぶ。

 とはいったものの、せいぜい次の反撃にかかる時間を遅くしただけでそれ程の距離は転がらない。ただ、ダメージは少しあったのか、蹴られた脇腹を押さえている。

 相手が膝を着きながら着地をし、体勢を整え、顔をゆがめながら再度攻撃を仕掛けてくる。

[我が一撃の雷光となれ"雷拳らいけん"!]

 割と低い、いい声で名称を発した。そして名前の通り、その拳には雷撃が走っており、この攻撃でおおよそ片を付けようという魂胆が見えていた。

(あのパンチはまずい……)

 流石に、男相手に素手で戦うのは無謀というもの。なので、こちらは武器で対応。

 相手との距離は目測3m。こちらが左右どちらに避けても、彼は反応するだろう。

(だったら……)

 特攻をかけて距離を詰める。十二分に引きつけ、攻撃が当たるまでおよそ1m。すでに相手は準備を整え、どこに私が避けてもいいように体勢を崩しつつ、右拳を飛ばす。左右後方に避ければ、二撃目の餌食になっただろうが、そうはならない。

 私はあえて勢いに任せつつ、相手の懐に足から潜り込み、仰向けの体勢から二丁の銃を引き抜き、腹の橋と端に構えて引き金を引く。真ん中を狙わない理由は、心臓、もしくは内臓を撃って万が一殺してしまわないようにするためだ。

 銃弾は実弾……ではないものの、威力は確実なゴム弾をゼロ射程距離で発射。ここまでは予定通り。


 しかし弾は当たらなかった!


 相手は体を思いっ切り捻り、二つの銃弾の間を掻い潜った。そしてその代わりに、右膝の蹴りが眼前に迫る!

 私は思考回路を必死に回転させて避ける方向を探していた。

 その間、わずかコンマ五秒の出来事。

 意を決して、私は滑り込ませた体を更に地面の方へと近づける。いうなれば、顔と体が一直線の状態だ。同時に腕も頭の上に伸ばして、万歳の格好で地面に下ろした。そしてその直後――


 膝が鼻先を掠めていった!


(うわっと! 危機一髪!!)

 なんとか顔面粉砕骨折は免れたが、地面に仰向けで倒れた状況では反撃がしづらい。

(もう! 結構うまくいったのに……)

 そう思いつつ、何かできないかと素早く相手を見やる。

 すると、相手はまだこちらを振り返ってはいなかった。よく見ると右脇腹を押さえている。あの攻撃はやはり、多少なりともダメージになったみたいだ。

 更に下した腕に持っていた銃口が相手に向いている。

(一か八か!)

 私はチャンスだと感じ、両手に持っていた銃を相手の脚に向け、二発の弾丸を放つ!

 一発は相手の左側を通り過ぎてしまう。

 だが、天は私に味方した。

 もう一つは見事に相手の右太腿を直撃! 攻撃された部分を庇うように屈み込む相手を見て、反撃を遅延させることに成功した。

(ここが勝負どころ!)

 体を回転させうつ伏せになり、素早く立ち上がる。そして、自分のできうる限りの最高速度で相手へと突っ込む。

 犯人はそれに気づき、何とかこちらを振り返って拳を突き出してきた。しかし、操力を込めたさっきのパンチよりも明らかに弱体化したその攻撃を私は難なく避け、相手の右側へと回り込み、右足で腹部側面を蹴る。足に受けたダメージが大きかったのか、膝を大きくつき横に倒れた。

 こうなれば、ほとんど戦闘不能に近いのだが、油断も容赦もしない。

 追い打ちをかけるように、私は思いっ切り足を振り上げ、倒れた相手が起き上がれないよう鳩尾にもう一発蹴りを入れた。

「がぁっ……!!」

 短い断末魔が耳に刺さった。相手は攻撃された部分を両腕で庇う。そして、憎々しげにこちらを見上げた後、こうべが自重に耐えきれなかったのか重力に従うように地面へと突っ伏し、そのまま動かなくなった。まるで、パソコンの電源がシャットアウトしたかのようだ。暫く待つが、動く気配がない。

 その状態に私は別の恐怖を覚える。

(し、死んでないよね……?)

 恐る恐る脈と息の有無を確認する。どうやら、脈も息もあるようで死んではいない。ほっと安堵の溜息をついた。

 気絶を確認できたため、私は次の行動に移る。

 まずは自分の懐からロープを取り出す。このロープは、ある特殊な結び方をすると相手の物操力を完全に封じ込めることができる。それを使い相手の両腕と両足を縛り、行動を不能にさせた。

 後は転移魔法の陣を描いて……、なんてことはしない。

 今度は右ポケットから小型の機械を取り出し、犯人の腕に巻き付け、電源を入れる。しっかりと電源が入ったことを確認したところで、私はその場を後にした。

 この機械は俗にいう「発信機」で、電源を入れることにより近くの警察署がこれをキャッチ。あとは勝手に警官が駆けつけて犯人を連行していくのである。

 ……話が脱線してしまった。とりあえず戻すね。

 耳のインカムからは火花を散らす金属音が鳴り止まない。戦いは続いている。

 私が倒したため、人数は恐らく残り四人。

 一人捕まえた報告をしたいけど、今話しかけたら隙をつかれて殺されかねないため、何も言わずにマックス達のいる方向へと駆け出す。

 夜はまだまだ長くなりそうだなぁ、と思ってしまった。

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