4.挑発
やってきたサヤカは以前と雰囲気が違う。
少しリズムを乱されたケイもちょっと考えを巡らせ……。
10分は過ぎただろうか。
「二人とも準備は良い?」
突然声をかけ間を取り持つのは、この戦いの原因である沙恵だ。
「とりあえずは大丈夫だ」
そのぐらいの時間があれば、身体を温めるぐらいは造作でもない。
「私も大丈夫」
そう言いつつ、サヤカは入念にあちこちを伸ばしている。
(本当に勝つ気でいやがるな)
無駄なあがきと思ってはいるが……。
(3カ月で震えが分からない、いや、無いほどに鍛えられているのか……?)
奥底では得体の知れない懸念が渦巻いていた。
「じゃあ、勝負内容を説明するね」
沙恵が長々と説明していたが要するに、勝敗はどちらかが先に戦闘不能となるか、まいったと言わせれば勝利となる。
非常に簡単で分かりやすい。
「二人とも他に聴きたいことはある?」
「「大丈夫」だ」
おっと声が被ってしまったようだ……。まぁ別に良いんだが。
「合図は私が離れたところで出すから、後は思う存分戦って頂戴ね」
それだけ言って沙恵はさっさと安全地帯へと避難していった。
沙恵の耳に届かないところへ行ったのを見計らい、俺は少しゆがめた笑顔でサヤカを見た。
「おい、今すぐ泣いて土下座して謝るってんなら、仲間にしてやって良いぜ。ただし――」
目を細め少し溜めてから。
「俺らの世話係だがな」
屈辱的な言葉を言えば相手の神経を逆なですることは間違いない。これで怒るかしょぼくれてくれれば無駄な勝負はしなくて済む。
「えぇ……。何そのつまらない提案……」
だがサヤカはつまらないと一蹴してきた。
「何だか、負けるのが恐くて言っているとしか思えないんだけど……」
(はっ? 俺が負けるだって??)
何故俺がそんな言葉を返されなければいけないのか?
理解ができなかった……。
「上等だ……。そこまで言うなら、てめぇを地べたに張り付かせて、泣いて謝らせてやるよ……!」
「あんたが怒りに飲まれてんじゃん・」
「ぐっ!!」
(こいつは本気で俺を怒らせた! 全力で叩き潰してやる!!)
その未来を確定させ、俺は右手に小刀を持つ。
「よーい、はじめ!!」
待ちに待った開戦の合図が、遠く離れた沙恵の口から発せられた!
次回からバトル開始です!(引っ張るような形になってしまい、申し訳ありません)




