9.模擬戦開始
マックスの来た目的は、サヤカと戦うため。
この誘いをサヤカはどうするか……。
「ちょっと待って。何で私?」
戦い方を教わっているとはいえ、まだ素人。わざわざ私に勝負を挑む必要はないはずなんだけど……。
「だって暇なんだもん」
「それだけ!?」
「うん」
とても単純すぎて正気を疑ってしまう。
「僕たち3人しかいないからね。良く練習で戦う特訓しているけど、一人絶対に暇になるんだ。だから戦って欲しいなって」
「でも……」
私は助け舟を出して欲しくて、湊さんへ目線を送る。
その目線に気付いた湊さんはニコッと笑って……。
「じゃあ、まっくすくん……だっけ? 相手してもらってもいいかな?」
「ええっ!? ちょっと湊さん!!??」
ものの見事に舟を沈められた。
納得がいかなかったので、助けてもらいたくて食い下がる。
「何でですか! 私、まだ一度も実戦なんてやったことないんですよ!!」
「それも確かに考えたけど、逆に言えば経験しないと得られないことも多いよ。大事だからものは試しにやってみなさい」
「うえぇ、でも……」
「大丈夫! 別に命を取られる訳じゃないんだし、少しでも慣れておきなさいな」
え~……、とは思うけど、どう考えても逃げ道はない様子。
もう一度マックスに目をやると、今すぐにでもOKを貰えると信じて疑わない目をして、こっちを見ている。
さながら餌を待っている犬みたい。
「じゃ、じゃあ、やってみる?」
「本当に! ありがとう!!」
おぉう、物凄い喜んでくれた……。
ということで、いきなりではあるけれど、実戦形式の練習が始まることに。
「そうと決まったら、武器を一切使用しないで戦ってみようか。いきなり武器を使っての実戦は彩夏ちゃんには難しいから、とりあえずやってみましょ。マックス君はそれでいい?」
「うんいいよ!」
「彩夏ちゃんもそれで良い?」
「よく分かっていないですけど、湊さんがそう言うのであれば……」
不安な気持ちを殺せないまま渋々と承諾する。
そして、私は危険を考慮して防具を身に着けている中、ふとマックスの方に目をやった。
「ねぇマックス。その格好で戦うの?」
マックスはただボーっと突っ立っているだけで、準備も何もしようとしていない。
「そうだけど、何で?」
「何でって、だって危ないじゃん」
「そうだけど、だからと言ってそんなの着ちゃうと動けないからね。これで大丈夫だよ!」
何だかなめられている気がしてムッとするけど……。
(一発入れれば、勝てるってことじゃ……!)
と密かにそんな希望を胸に抱き、着々と準備をする。
「良し、これで良いかな? 彩夏ちゃん、準備は良い?」
「は、はい……!」
湊さんと一緒に着替え終えて、私はマックスと対峙。
「試合はとりあえず10分。合図は『はじめ』で開始。決着はどちらかが倒れるか、まいったと言うまで。時間になったら引き分けにするよ」
簡潔な説明を受け、私は改めて身体に力を入れる。
初めての実戦形式。
緊張からか、心臓の鼓動がしっかり耳にまで届いている。
前進からも変な汗がじわじわと出ている。
若干震えてもいるのだって分かる、けど……。
(まずは勝って、戦えるんだってことを見せるんだ!)
自身の力を証明するため、今の自分の力を出し切るつもりでその時を待った。
「……はじめ!」
湊さんが手を降ろすと同時に合図を出して開戦。
(始まっちゃった! だけど冷静に……)
私は一旦出方を窺うために、少し様子を見る――はずだった。
(えっ……?)
肝心のマックスは正面にいない。
拍子抜けして思わず力が緩んだその瞬間――。
「ここだよ!」
「えっ!」
声のする方に目を移す。
マックスが既に、拳の射程圏に私を捉えていた!
次から戦闘に入ります。




