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8.珍客

 湊が先生を引き受けることとなり、本格的な修行を始めるサヤカ。

 そんな時、思わぬ客が二人の元へとやって来る。

 私が湊さんに戦い方を教えていただいて1ヶ月。

 ちょうど小学校も夏休みに入ったため、ほとんど毎日湊さんの所で修行に明け暮れていた(両親には図書館に行くと言って別の所から異世界入りしている)。

 湊さんはまず私のひょろくて弱い身体を鍛えることから始め、少し身体ができ始めてから戦い方を教えている。

 いわく『3ヶ月あるけどとにかく身体を鍛えないと。戦術云々は詰込みになるかもだけど、相手にならない身体じゃどうしようもないしね』とのこと。

 なので修行の内訳は5割筋トレと走り込み、2割武器の使い方と実戦に近い訓練、1割物操力の使い方、そして1割は休憩という感じで進んでいる。

 そのおかげか私の体力は大幅に向上し、1時間同じペースで走っても疲れないぐらいにはなったし、自分の体重の半分ぐらいの重量のものは持てるようになった。

 物操力は詠唱と具現の二つがしっかりしていないと発動できないようで、初めは四苦八苦していたけど、毎日の練習のおかげか形にはなりつつある。

 武器に関しては遠めからでも狙える武器の方が良いのでは? という湊さんの言葉に従って、私でも扱いやすい理由から短銃(半自動式ピストル)を使うことに決めた。

 初めて触る銃は重々しくちょっと怖かったけど、湊さんが構え方から撃ち方、狙い方をしっかりと教えてくれたから、少しずつではあるけど慣れていっている。

 そんな感じで順調に修行を進める中……。

「おぉ、ここがサヤカの修行場所か~!」

 ちょっと甲高い少年の声が、練習場の端から聞こえてきた。

「あれ? 何で久寿くんがここに??」

 その人物は沙恵の護衛の一人としていた槇原久寿(ひさとし)だった。

 久寿は私達を見つけると大きく手を振って、走って私達の元へとやってきた。

 因みに今は筋トレが終わった後の休憩時間である。

「ん? 君は一体誰だい?」

 湊さんが若干警戒して立ち上がり、はすに構えだす。

「僕? 僕は槇原久寿! 沙恵を護るためにえらばれて、サヤカの仲間になる人だよ!」

「えっ!? 言い切っちゃうの!!??」

 あっけらかんと久寿が未定の予定を言い切った。

「あぁ、君がその一人ね。私は鎌足湊。この子の先生を引き受けさせていただいているよ」

「先生見つかったんだ! 良かった! どうなったかなっておもってたんだ」

 屈託のない笑顔を振りまき、湊さんの警戒心を溶かしていっている……。

「何だか気が抜けちゃった。こんな明るい子に護衛が務まるのか心配だけど、あの子の目は本物だと思うから、大丈夫か」

 やれやれと肩をすくめつつも、突然来た人物を来客として招くことに湊さんはしたみたい。

「で、久寿くん。何でここに来たの?」

 挨拶はそこまでかなと思って、私は久寿に来た理由を求めた。

「あっ、くん呼び嫌だ」

「へっ?」

 がしかし、何故か話は敬称についてに発展する。

「いや、だって、まだよく知らないのに、呼び捨てにするのも……」

「えぇ~。僕は何だか嫌だな。心が遠い気がするもん」

 もん、って言われてもなぁ……、と思いつつ、これを解決しないと話が進まないと思ってちょっと考える。

「ねぇ、まきはらひさとし、ってどう書くの?」

「えっとね、確か……。おばさん、紙と筆ある?」

「うん? ちょっと待っててね」

 そう言うと湊さんがおもむろに懐から紙と筆と墨汁を貯めている球形の器を取り出して、久寿に差し出した。

 それを受け取ると地面に座って、文字を書き始めた。

「こんな字」

 そうやって見せてもらったのは少しよれよれの字。槇がひらがなで、後の原久寿は漢字という、なんともちぐはぐな文字だった。

「まきは難しかったから、漢字で書けるのはこれだけだよ」

「う、うん。分かったよ」

 捕捉しなくても良い説明をされつつ、じっと文字を見つめる。

(確か久って『く』って読めるよね? 後寿って字は『す』とも読めたから……)

「ま……くす? まっくす? マックスってどう?」

 何となく口を突いて出た言葉を発してみる。

「まっくす……。マックス……!」

 すると久寿の顔に、今まで見た中での一番の笑顔が浮かんできた。

「マックス! 良いと思う! 何だかかっこいいから!!」

 そうして暫く口の中で反芻して、自分の物にしようとしている。

「うん! サヤカ、ありがとう! じゃあこれから『マックス』って呼んで!」

「えっ、良いの!? 滅茶苦茶適当だったんだけど!!??」

「良いよ! 久寿よりもずっといいもん!!」

 適当につけたあだ名を、気に入られてしまったようだ。

 とりあえず話は進みそうだったから、私はまた同じ質問をする。

「じゃあ、マックス。何でここに来たの?」

 恐る恐るあだ名で呼んでみると、また深々としわを作って嬉しそうにする。

「うん、それなんだけどね……」

 と少し笑顔が溶けて、目の奥に真剣な眼差しが見えた。

「僕と戦って欲しいなって」

 そんなことをさらっと口走られた……。

「ふぇっ?」

 約束の日まであと2カ月のこの日。

 私は突然、護衛メンバーの一人から、宣戦布告を受けてしまった。

 何故最初の話でマックスと呼ばれていたのか?

 疑問は解消されましたでしょうか?

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