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6.売り買いの応酬

 自分の事の様に沙恵が罵倒されたことに対して怒るサヤカは、ケイに対してとんでもないことを提案する。

「な、何だよ急に……」

 それまで饒舌にしゃべっていたケイの口が、初めて戸惑いを見せる。

「私のことはいくらでも罵倒しても良い! だけど、それと沙恵に関しては関係ないじゃない!!」

「か、関係あるだろ! お前を連れてきた責任があるって……」

「だからその人の全てを否定するの!? ばっかなこと言ってんじゃないわよ!!」

 もう自分の怒りが治まる気配はなく、気持ちだけが私の口を動かしていた。

「沙恵が何も言わないからって、あんたがそこまでとやかく言う必要なんてない! 私にだったらいくらでも言えばいいじゃない!! 急に攻撃する相手を変えて、反論できないように言いまくって、それで何か変わる訳!!??」

「じゃあ、あんたじゃダメってはっきり言えばいいのか!?」

「そうだね!!」

 えっ? と驚きの顔を見せるケイ。

「だから、私はあんたの意見を受けて、絶対に沙恵への言葉を取り消させてやる! 私自身が証明してやるんだから!!」

「それはつまり……」

 途端、ケイの顔が悪く歪み、不敵な笑みを浮かべた。

「俺と勝負しようって話か?」

「ダメなの?」

 その顔にムカついて、私は強く言い返す。

「くっくっく……」

 すると、顔を下に向け、怪しく笑い出し……。

「くっはっはっはっはっ!!」

 遂には顔を大きく仰いで、のけ反るようにして爆笑し始めた。

「お、お前、自分が何言ってんのか分かってんのか!? 戦ったこともねぇ奴と、修羅場を潜り抜けてきた俺。どっちが勝つか明白じゃねぇかよ!!」

 あははは、と笑いが止まらないようで、足もばたばたと動かし、身体全体で可笑しさを表現している。

「そ、そんなに笑わなくてもいいんじゃないの!?」

「いやいや本当に、人の実力も分かっていないんだな。こりゃ頭も相当おめでたそうだ」

「何ですって……!」

 文句をあざ笑うように一蹴されて、私はますます怒りに震える。

「良いよ、やってやろうじゃん。その代わり、負けたらお前は護衛役を降りろよ。その条件が飲めねぇと、勝負してやらねぇからな」

 ある程度笑い終えたかと思うと、ケイは目つきを鋭くこちらへ向け、私の心を逆なでするかのように挑発してきた。

「分かった!」

 ここまで来たらやるしかない。

 沙恵の汚名返上のため、私は条件を飲む。

 代わりに私も右手でケイを指差し、こっちからの条件を突きつけた。

「その代わり、私が勝ったら沙恵にちゃんと謝ってね! 約束だよ!!」

「勝てる根拠もないのに良く言ったもんだ……。別に良いけどよ」

 私が売った喧嘩をしっかり買うスタンスで、ケイも勝負を承諾。

 ここに私とケイの一騎打ちが成立した。

「じゃあ、俺からも条件良いかな?」

 ここで静観していた康一から手が上がる。

「何だイチ、急に出しゃばりやがって……」

「まぁまぁ落ち着きなって。このまま戦っても当然、サヤカちゃんが勝てる見込みはないのは明白。それで負けても正直彼女たちは、特に沙恵は納得いかないだろう。だから――」

 その上げた手の薬指と小指を折り、指を3本残した。

「3ヶ月後。3カ月後に再び城に集合。この部屋から見える広場を使って勝負をしてもらう。それで良い?」

 私達に目配せをして、条件の良し悪しを問う。

「俺は良いぜ。3ヶ月でどうにかなるとも思えねぇけどな」

 含み笑いでケイはイチの条件を飲んだ。

「私も大丈夫。どうせ勝負する以外の選択肢なんてないんだしね」

 私は再びケイを睨みつける。

「おぉ恐い恐い。そんな目で睨みつけられたら負けちゃうね……」

 にやにやと本当に鬱陶しい表情で私の敵意をあしらう。

「沙恵、挨拶も終わったから私は帰るよ! このままここにいても仕方ないからね!!」

 そしてボケっとしていた沙恵の手を引っ掴んで、入ってきたドアの方へと歩いていく。

「えっ? えっ!? ちょっと、待って! まだ私の整理がつかないんだけど!!??」

 戸惑う沙恵の事は考えず、引き戸に手をかけた時――。

「せいぜい3ヶ月。無駄なあがきをしなよ」

 私の歯がギシりと鳴る。

(今に見ておきなさいよ……!!)

 思いながら戸を勢いよく開け沙恵が出たのを確認し、わざと音を思いっ切り立てて閉めた。

 こうして私は無謀とも言える挑戦を、ここで安易に交わしてしまったのだ。

 ケイの発言、本当に嫌な感じですねぇ……。

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