3.苦悩と後押し
さて、仲間に会わせると言ってきた沙恵。
これから共にしていくメンバーに会いに行くことになったが、サヤカはどうも表情が優れないようです。
(うーん……)
厨房を訪れて仕事を手伝ったのち、鎌足夫妻と別れて沙恵の後ろを着いていく道中、私は頭が地面に向かって倒れていくのではないかと思う程悩んでいた。
(まさか仲間を紹介されるとはねえ……)
人間関係で難儀してきた私にとって、仲間の存在は正直微妙なところだ。
『まぁ、今いる子たちも同じようなもんか』
ふと、そんな沙恵の言葉がよみがえってくる。
(そういえば、夢で言ってたね)
ここ最近の私の動向が忙しかったからすっかり抜け落ちてたけど、確かに言っていた。
……あいつ、さらって口走っていたね。
その大事なことを軽くで済ませた本人は、ウキウキで城の中を進んでいるので薄情なものだ。
「良し! 到着したよ!」
そんな呑気に進んでいた沙恵は、客間一、と書かれた扉の前で止まった。
「ここにサヤカの仕事仲間が待っているの! どう? ちょっと楽しみでしょう?」
「え、えぇっと……」
右頬を若干引き攣らせながらはにかむ私は何と醜いことだろうか……。
「どうしたの? 会いたくない?」
「あ、会いたいよ! 会いたい……、けど……」
「もしかして、人と接点を持つの、好きじゃなかった……?」
そう言われて私は黙りこくってしまった。
今はみんな、私に対して何もしなくなったけど、つい数日前まで私はいじめの対象だった。
深く刻まれた傷を癒すのに、一体どれだけの年月がかかるか分からないんだから、たった数日で人嫌いが治るはずがない。
勢いで鎌足夫妻や沙恵とは仲良くなれたけど、やっぱり新しい出会いには躊躇してしまう。
「そういえば、私に対しても最初は警戒心剥きだしだったよね……」
沙恵が夢のことを思い出して、バツが悪そうな顔をした。
その顔を見たくなくて、私は自分の胸元を見つめてしまう。
「でも大丈夫だよ!」
と思ったら私の手を取ってきた。
びっくりして沙恵を見ると、ニコッと笑って私を見ている。
「今度は独りぼっちじゃないんだから! 私がついている! だから、心配事は私に任せてね!!」
またもや勢いで私を勇気づける言葉をかける皇女。
根拠もへったくれもないその言葉だけど、私に魔法をかけてくれる不思議な力があった。
「沙恵って、馬鹿だよね?」
「えっ? 急に何で罵倒されてるの!?」
ふふふっ、と笑いながら言うと、沙恵が若干ショックを受けたような表情をした。
「ごめん、悪い意味じゃないよ?」
すぅっ、と深呼吸をして、ゆっくり沙恵のちょっと情けない表情を愛おしく眺めながら続ける。
「沙恵って考えるとか立ち止まるとかしないでさ、その場その場で結構判断するじゃん? それが凄いなと思って、私にはできないことだなって思ってね」
「ねぇ? それって褒めてるの……?」
「褒めてるよ♪」
本当かなぁ……? とぶつくさ言っている沙恵だけど、何だかんだ言って引っ張ってしまうところに、彼女のカリスマ性を感じたりする。
才能なのか、単純なのか。
でも間違いなく私にとっては助けとなり、動く原動力となることは間違いなかった。
「まぁいっか。そんなことより早く行こう」
「そうだね」
さっきまでの不安は何処へ行ったのか。
沙恵に手を引っ張られ、私は部屋へと導かれた。
「ごめーん、お待たせしたね!」
そう言うとずかずかと部屋へと押し入っていく。
「沙恵うるさいよ。もう少し静かに入って来れないのか?」
沙恵の呼びかけに返事するのが聞こえて、私は少し沙恵に隠れながら奥を覗く。
そこには、私と同じ年にしか見えない3人の少年たちが、それぞれ好きなところに座ってこっちを見ていた。




