13.帰り道
帰宅できない不安を覚えたサヤカであるが、沙恵は気にもしていない様子。
その心は果たして?
「沙恵、いくら何でも彩夏ちゃんを暗い道に出しちゃうのは駄目なんじゃ……」
湊さんが代わりに不安を吐露する。
「別に元来た道を戻る必要はないって」
「「?」」
その言葉の真意が分からず、湊さんと一緒に首をかしげていると……。
「はい、サヤカに必要な物」
懐から小さな金属製の輪っかを取り出してきた。
「これは何?」
「この指輪さえあればどこでも帰れるから安心してね」
あっさりとその正体を教えてくれたけど……。
「いや、そんなこと言われても、どう使ったらいいか分からないし……」
「簡単だよ。それを指にはめて壁に指輪をくっつけると、ちょっとの間だけどサヤカの世界に繋がるようになるから」
「何その便利な機能は……」
「ただ今回は、サヤカ側の入ってきた入口に出ることになるし、今後も繋いだ場所から入ってくることになるから、入る場所は考えてね」
要するに入口は好きなように決められるけど、出口は前に入り口として使った場所からしか出られないということらしい。
とは言ったものの、どう考えてもチート級の力であるのは間違いないよね。
「神族って、何でもありなんだね……」
「え~でも、逆にこんなことしかできないよ? みんなみたいに色んな技を繰り出すことはできないし、戦いに関してはからっきしだしね」
そう言う沙恵の笑顔には少し陰りがあり、何だか窮屈しているみたいに見えた。
「確かに、神族は私達とは違って戦いには出ないけど、この国の要だからね。今日はもう遅いし説明する暇はないけど、いなくてはいけない存在ではあるよ」
「うぅ、分かってるよおばさん……」
湊さんのフォローが入って少し沙恵の気持ちが落ち着く。
「じゃあ、彩夏ちゃん帰りましょうかね。帰りも乗せるから安心しおし」
「本当ですか! 湊さん、ありがとうございます!!」
「良いの良いの。女の子一人だけは無理だろうし、何かあっても対処できるからね」
言いながらウインクを飛ばしてくる湊さんはちょっと可愛かった。
「……で、サヤカ。帰るんだったら格好を元に戻さなきゃね」
「格好……?」
「いや、そのままじゃ警察どころか王城にいる騎士たちに捕まるよ……?」
そうして沙恵が指差した方に目を向けると、しっかり肌色が目に入ってしまった。
「あっ……、あぁ……」
自分の体温の上昇が、頬の熱さが、感覚で分かってくる。
「あ、す、すぐ、着てきます!!!!」
そう言って一目散に服目掛けて突進していった。
3日後にまた会う約束を交わし、沙恵と別れた後の馬車の車中。
湊さんと今度は隣り合って座り、すっかり陽も落ち切って街灯の明かりだけが頼りとなった道を逆方向へと進む。
「うーん! 長い1日だった!!」
腕を伸ばして身体を伸ばし、疲れを和らげようとする湊さん。
今更ながら、夫妻には迷惑をかけたと自覚してしまう。
「すみません、湊さん、友彦さん」
「どうしたの急に?」
謝る私に、湊さんは怪訝そうな声で問いかけてくる。
「いえ、だって私なんかのために時間を無駄にしてしまって、それにこんな遅くなってしまったんですよ……。もう謝るしか……、いたっ!」
ネガティブ思考になっていく私の脳天を、湊さんがまたチョップしてきた。
しかも、飛び出して怒られた時よりちょっと強い。
「はぁ、全く。すぐ謝るのは彩夏ちゃんの悪い癖だね」
「な、何でですかぁ……?」
頭を抑えながら涙目で湊さんに尋ねる。
「いいかい? 別に私達はあなたに依頼された訳でも、強制された訳でもなく『行き先が一緒で、手助けもしたかったから助けた』だけだからね? 謝罪の言葉なんてものはいらないの」
腕を組み、当然のことをしたまでと言った顔で私に話してくる。
「それに、大体の元凶は皇女様なんだから、あなたが責任を感じる必要はないしね」
「じゃ、じゃあ……。ありがとうございます……?」
「あはははは、何で疑問形なのか分からないけど、うんうん、それでよし!」
そして私の頭を撫でてきた。
今日で何回目か分からないその行為が、私の心を喜ばせる。
「帰りはうちを使って行きな。その方が確実に安全だからね」
「はい!」
終始和やかなムードの車内で、私は今日という特別な日を振り返る。
呼ばれてきた異世界で、馬車に轢かれそうになったり、連れ去られたり、そうかと思えば優しい夫婦に助けられて、沙恵と生身で出会って、そして、新たな自分へと生まれ変わった。
情報が多いかもしれないけど、今までと違う確かな「生きる」という喜び。
私の人生に、確かな光が灯った日。
(沙恵にもらった命だ。頑張っていきよう!)
そう決意できる気持ちをくれた沙恵に感謝する。
始まったばかりの生活だけど、不安は全くなかった。
それから八百屋のかまたりへと到着すると、運んできた木箱とかの片づけを手伝い、2人の許可を得て寝室の壁から地球へとつながせてもらい、私は帰路へと着いた。
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