10.儀式の前
儀式をするために神殿へとやってきた一行。
しかし、準備を進めるにあたって沙恵の訳の分からない提案に、サヤカの頭は止まってしまう。
「……………………はい?」
「だからね、服を全部脱いで、裸になってもらいたいの」
沙恵の発言のすべてが追い付かない。
「何で裸になる必要があるの……?」
「大丈夫だって! 今ここには幸い女の子しかいないし」
「だからって、裸になる必要ある!?」
当然の返しである。
これから行う儀式と何かしら関係はあるのかもしれないけど、唐突に人前で裸になれとか正気を疑うレベルだよね。
「大丈夫だから! 別に変な事とかしないし! 安心して良いからさ!!」
「夢の中で人の胸を躊躇なく触ってきたこと忘れてないからね、沙恵!!」
「うぐっ……」
そのことは一応忘れてなかったみたい。
「沙恵、それは流石に擁護できないよ……」
隣にいた湊さんも、流石にあきれてものも言えなくなった。
「まったく、しっかり儀式の内容を説明しないと、彩夏ちゃんも納得いかないでしょ」
「でも、サヤカは分からないだろうから、手っ取り早くやっちゃっていいかなと……」
まごまごと言い訳をしているが、ノリと勢いだけでやはり来たようである。
「分からないからこそ説明をする必要があるの! そこは間違っちゃだめよ」
「うぅ、ごめんなさい……」
湊さんの叱責を受け、沙恵はすぐさま謝る。
姿は容姿端麗だけど、言動や行動がまだ子供のような感じがした。
「ある程度任せようかと思ったけど仕方ない」
そうして、湊さんが結局代わりに説明する。
「今からここで行う儀式は、封力印を授ける儀式になるの。封力印は見せたよね?」
そう言って”水”の文字が描かれた左手の甲を私に見せる。
「そういえば、どうしてこの印があるんですか?」
封力印の具体的なところを説明されていなかったことに気付いて、湊さんに聞いてみた。
「簡単に言っちゃうと、封力印の役割は力を封じること」
嫌な顔一つせず、湊さんは話してくれる。
「私達の力は常に力が外に出ていて、封じないと体力が低下したり、いざという時に力が使えなくなっちゃうのよ」
容器のふたのような役割を持つのが封力印という訳だ。
「授けるにはこの陣を使用して、その手の甲に文字を刻まないといけないの」
へぇ、と思って聞いていたけど、ちょっと危険な言葉が混じっている気がした。
「えっ!? 文字を刻むんですか!!??」
「刻むって言っても、別に掘るわけじゃないよ。どっちかというと浮かび上がらせるって言い方が良いかな? 痛みはないから安心して」
要するに自分の身体に宿った力が文字を勝手に刻んでくれるらしい。
「だったら、別に裸になる必要ないんじゃ……?」
「その疑問は正しいけど、でも裸にならないといけないの。何でか分かる?」
「えぇっと……。そうですねぇ……」
突然聞かれてもどう答えていいか分からない。
「うーん、服が燃えるとか、あると上手く刻めなくて儀式が失敗するとか……」
「おっ、良い所に気付いたね」
にこやかな笑顔で湊さんが答えを言う。
「服があるとそれが邪魔しちゃって、上手く文字が出てこないことが昔あってね。それで今では儀式をする時は服を脱がなくちゃいけないの」
単純な理由だけど納得できた。
そして、これをすっ飛ばして服を速攻脱がせようとしてきた阿呆皇女の愚かさも分かる。
「本当は1歳になったぐらいで儀式を行うから、こう言っちゃなんだけど恥ずかしさとかないよね……。だから、そこに関してはちょっと我慢してもらうしかなくて……」
申し訳なさそうに湊さんは微笑んだ。
「理由が分かれば、男の子はいないですし我慢できますよ」
「だってさ沙恵。説明すればすんなり受け入れてくれたじゃない」
「追い打ち掛けないでよ、おばさん……」
更なる追撃に沙恵はますます小さくなった。
「さて、理由も分かったところで準備に移りましょうかね! ほら沙恵、いつまでもうじうじしないで、シャキッとする!」
「わ、分かった! 分かったから、ちょっと待ってて!!」
覇気を入れられて慌てふためく沙恵を横目に私は、恥ずかしい気持ちと沙恵のためという気持ちと共に、自分の衣服を脱ぎ始めた。




