6.私の覚悟と理由
「さっきも言ったけど、一先ずは護衛のための準備段階と私の話し相手になって欲しいの。もちろん、サヤカが断るならそれはそれで構わないからね」
そうは言っても沙恵の目からは、期待の眼差しが見えている。
「逆に沙恵は断られたらどうするの?」
「そ、その時は……」
また詰まった。断られることは頭にない感じだね。
「と、とにかく、ここまで聞いてサヤカはどう思う!?」
ごり押ししてきた……。切羽詰まり過ぎじゃないかなぁ……。
「わ、私としてはちょっと恐いんだけど……」
断ろうかと考えて、濁す言葉を咄嗟に口にした。
だがその時、別のことが頭をよぎる。
それは、地球での生活。
自分にとっては苦痛でしかない、生きていても仕方がないと思わされる現状。
そして、周りからは全く必要とされていない場所。
死すら覚悟したあの歪な世界。
そこに私がこだわる必要は……。
『私はあなたを必要としているんだしね』
そう、沙恵はあの夢でそう言ってくれた。
世界に絶望した私の心に、希望の火を灯した金言。
その言葉を頼りに私は、ここまで来たんだ。
「サヤカ?」
「えっ?」
「どうしたの? 急に固まったりして」
沙恵が心配になるくらいには沈黙してしまったようだ。
「うぅん、何でもないよ」
咄嗟に何でもないような風に見せる。
「沙恵、やはり荷が重いから、彩夏ちゃんも固まったんじゃないの?」
「うぅ、やっぱりそうかなぁ……?」
湊さんの一撃に、明らかな落胆の色を隠せない沙恵。
「しょうがない、お父さんに何とか3人集まったことだけは報告して、あと一人は……。何とかして探すしかないかぁ」
「まぁ、仕方ないよ。彩夏ちゃんだって元の世界のことがあるんだし、いきなりこんなこと言われたって困るもの……」
「あの!」
とんとん拍子で進んでいく話に、私は声を張って割って入った。
「わ、私、その護衛の話、引き受けたいです!」
声を抑えることなく、自分のできる最大音量で2人に伝える。
驚いたのか、私を見つめたまま2人とも動かない。
「え、えっと、そのぉ……」
何だか不安になって、か細い声を出してしまう。
「サ、サヤカ……」
そんな中、瞳に涙を湛えた沙恵の口が再び動き出す。
「本当に、本当に良い……」
「彩夏ちゃん、本当にいいの!!!???」
と、物凄い剣幕で湊さんが沙恵の言葉を遮った。
「良いかい? よく聞いて。もしこのままあなたが護衛任務についちゃったら、あなたの命も危険にさらされるのよ? それでもあなたはこの仕事を引き受けたいと思っているの!?」
湊さんが止めるのも当たり前だ。
私にメリットはないのかもしれない。
どころかいつ死ぬか分かったもんでもないしね。
「分かってます。色々と不安なことは多いですし、死ぬのは恐いですけど……」
恐いよ? 恐いけど……。
「沙恵を信じたいんです」
だからと言って、折角沙恵が私にくれたチャンスだ。
「私は、沙恵が私を信じてくれたから、こうして出会えたんだと思います。だったら、私も沙恵を信じていきたいんです」
根拠はない。
でも、自分の気持ちを奮い立たせてくれた沙恵に恩返しをしたい。
そんな気持ちで今私は、この仕事を引き受けるつもりでいる。
「湊さん、止めてくれてありがとうございます。でも、こうなったら毒を食らわば皿までです! やれるだけやってみたいんです!!」
だからお願いします! と、何故か湊さんにお願いする。
奇妙な光景だけど、恐らく正解だと思った。
湊さんの了承を得られなければ、ここから先へは進めない。
そう思っての行動だった。




