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3.皇女の自室へ

 やっと出会えた異世界の皇女様。

 つながった世界でどんな道を見せてくれるか、ワクワクが止まらないサヤカちゃんです。

「お久しぶりです、沙恵皇女(こうじょ)。本日はお声をかけていただき、光栄でございます」

 湊さんが深々とお辞儀をする。私もそれに倣い、続けて頭を下げた。

「湊様、お久しぶりです。お忙しいところお呼び立てして申し訳ありませんでした」

 チラッと沙恵を見ると、一緒にお辞儀をし、すぐにスッと顔を上げた。

(目の前の美しい少女は誰……?)

 夢の中、それから暗闇での快活な印象があったため、本当に沙恵かと疑いたくなる。

 しかし容姿は、間違いなくあのときにあった沙恵には間違いない……はず。

 考え事をしているうちに湊さんも顔を上げたため、合わせて私も同じようにした。

「ここでは何ですから、私の部屋に行きましょうか」

「皇女様のお部屋にお招きいただけるとは、嬉しい所存です」

 湊さんがかしこまったように承諾した。しかし、さっきから妙な感じがする。

(湊さん、沙恵に会ってから声のトーンが落ちたような……?)

 横顔も笑顔ではあるけど、何か影が入ったかのようで少し怖い。沙恵も何かを感じ取っているのか、笑顔が引きつっている気がした。

 そうして沙恵は踵を返し、私達を引き連れて部屋へと向かった。


 階段を二つ昇って辿り着いたのは、3階の角。

 恐らく私達の入ってきたところとは反対側にある場所だ。

 その一角の扉の前。白い壁に茶色の引き戸がはまっている感じ。

 沙恵は持ち手付近に右手をかざし、静かに目を閉じる。

《汝よ。この声を、この姿を、信じ疑わぬなら、その扉を開け放て》

――カチッ

 沙恵の呟きに応じる様に、鍵の開く音が扉から聞こえた。

「おぉ……」

 夢にまで見たファンタスティックな現象に、私はますます色めき立つ。

 沙恵が引き戸を左にスライドさせて、部屋へと入っていく。湊さんも見慣れた光景なのか、後ろを着いて入っていった。

 私は今来た道を少しだけ振り返って、二人の後を追い部屋へと入る。

 部屋は少し変わった形をしていた。

 廊下へ通じる扉を背にして扇形になっていて、左には別の壁で仕切られた小部屋がある。その扉も木製の引き戸だった。

 壁は薄桃色塗られ、いかにも女の子らしい感じがする。

 手前は一段高くなっていて、靴を脱いで上がる感じ。上がったところは居間で、8畳分の畳が敷かれ、壁には足が畳まれたちゃぶ台が立てかけられていた。その中央付近には座布団が3枚もあり、明らかに私らを待っていたことは分かる。

 右奥は台所のようで、右側にかまど、左に流し台の様なものがあって、流し台側の近くにすりガラスの棚があった。

 一通り部屋を見渡した私は玄関で靴を脱ぎ部屋へと上がる。

(お姫さまって言ってたから、もっとキラキラした部屋を想像していたんだけど……)

 意外なぐらい内装はシンプルだったから、ギャップにちょっと驚いていた。

「では、お茶を淹れてきますので、サヤカも湊様も腰を下ろしてください。さて、何を淹れようか……」


「ちょっと待ちな沙恵」


「「!!?」」

 恐ろしく腹の底に響く低い声が、そそくさと台所へ行こうとしていた沙恵の脚をその場に縫い付ける。

 後ろをゆっくり振り返ると、私を先に部屋へと上げて扉を閉めた湊さんが、青筋を浮かべた笑顔で沙恵を睨んでいた。

「は、はい……、何でしょう……、か?」

 上ずった声を沙恵が漏らす。振り返ろうとは絶対にしない。

 一方の湊さんは部屋へ入る一動作一動作をゆっくり丁寧に、そこだけ時間の流れが違うような感じで動いている。

 そして、足音を忍ばせ、私を素通りし、沙恵へと近づくと……。

「ひっ!!!」

 沙恵の後頭部を右手で鷲掴みにした。

「あ、あの、おてやわらかに、おねがい……、したいかなぁ……、っと」

「そうだね。あんたの柔らかい頭はとても掴みやすくて、力を入れやすいんだよねぇ……」

 そう口にした途端、指に力が入ったことが見て取れ。

「ああああああああああ! ごめんなさい、ごめんなさい!! ごめんなさああああああああああああああい!!!」

 城中に響き渡る程の悲鳴を、沙恵は壊れたスピーカーの様に上げていた。

 片手で人の頭を鷲掴みって、中々高度なことではないでしょうかね?

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