1.頑張れお手伝い!
3ヶ月ぶりぐらいの更新はいよいよ新章突入です。
お待たせして申し訳ありませんが、まずはゆっくりご覧ください。
城門へ入った時点からのスタートです。
外壁の内に入ると、灰色の石畳が緑色の絨毯を縫うように通っている。
花畑をイメージしていただけに、ちょっとがっかりな景色だ。
その中を暫く進んでいくと……。
(あれが、沙恵の住んでるお城……)
昼間に見た城が近づいてくるにつれ、鼓動が高鳴る。
そしてついに、私は城の真下の木でできた扉に到着。
(い、いよいよ、会いに来たんだ……!)
満を持して馬車から降りようとした、その瞬間――。
「彩夏ちゃん」
湊さんに少し強い口調で呼び止められる。
「は、はい!」
心臓が跳ね上がり、思わず後ろを振り向く。
「まだ駄目よ。勝手に入っちゃ」
鋭い眼差しで私の行動は制御された。
怒られることを覚悟で、目を伏せる。
何かガタガタと物音がするけど、恐すぎて目を開けられない。
「怒る訳じゃないよ。まずは――」
目を開けると、湊さんが歩いてきて一つ箱を持たせてきた。
「あっ、ちょっと……」
「荷物を運んでもらっても良い? あなたはあくまでも、”八百屋のかまたり”のお手伝いさんでしょ? だったら、荷物運びを手伝ってくれなきゃ」
やれやれと肩をすくめる湊さんの表情は、少し悪戯を働いた子供を嗜めるような感じだった。
「ごめんなさい……」
危うく自分の立場を忘れるところだった。浮足立ってるねぇ……。
「それに、心配しなくても会えるからね」
誰にとは言わずもがな。なので、色めき立った。
「沙恵にですか!?」
「しっ!」
今度は人差し指を立て、興奮する私を止める。
「あうっ!」
「ごめんね。でも、気を付けてほしい。ここは王族の住まうお城。敬称もつけずに話しているところを聞かれたら、不敬、要するに尊敬していないとされて捕まって、元の世界には絶対に帰れないからね。気を付けてちょうだい」
帰れない、その言葉が重くのしかかり、私は無言で頷くしかなかった。
「さ、手早く済ませようかね。荷物は多くないけど遅くなってしまったから……。アンタ!」
湊さんが外で馬の世話をしていた友彦さんに呼びかける。
「何だい母ちゃん」
「重い荷物は私達で運ぶよ。彩夏ちゃんには軽いものを運ばせるから」
「んなこたぁわかってるって」
そんなこんなで荷降ろしを手伝うことになった。
湊さんが戸を叩いて来客を告げると、お城の給仕と一緒に荷降ろしが始まる。
運ぶ場所は扉の横辺り。できる限り馬車は近づけていたけど、流石に横までは難しいため、残り15mぐらいの距離から運ぶこととなった。
馬車の中にいた時から思っていたけど、本当に量が多い。軽バン大の荷車の中に、人一人が通れる隙間を少し作っただけで、座席以外は所狭しと荷物が乗っているのだ。
私の背丈よりも詰まれているため、迫力は満点。
その中でも比較的軽いものを運ばせてもらっていたけど、何度も往復するため腕がすぐパンパンになる。
聞いたら2日に一度は王城に行くとのこと。
そして毎回、この量を運んでいるそうだ。
(こ、これは、相当きついよぉ……)
汗を拭う暇もなく、とにかく一生懸命に運ぶ。
ふと思った。
こんなに自分から積極的に動くことなんて、今までなかったかもしれない。
恐怖心に駆られて渋々始めたものだったけど、いつの間にか力になりたいと思って荷物を運んでいた。
(誰かの力になりたいなんて、今まで思ったことなかったなぁ)
そんなことを思いながら仕事をしていると、あんなにいっぱい積み上がってブロックを消していくゲームなら限界まで来ていたような箱の山が、残り1箱となっていた。
「それで最後だね。彩夏ちゃんお願いしていい?」
「は、はい!」
正直、疲れて運べそうになかったけど、湊さんの声掛けのおかげで気力を振り絞り最後の1つを持っていく。
運ぶ間、特に城の給仕たちに怪しまれることもなく私達は仕事を終えた。
「お疲れ、嬢ちゃん!」
「おぉ、よく頑張ったね。結構大変な仕事なのに。お疲れ様」
友彦さんと湊さんからねぎらいの言葉を掛けられる。
それがとても心地よかった。
「ありがとうございます!!」
もらった言葉が嬉しすぎて私は全力のお辞儀を繰り出し、それを見た二人は楽しそうに笑いだした。
それから今後についての話を鎌足夫妻は給仕の方々と交換する。
仕入れる食材の種類、量、価格、それ以外にも細かいところまで詰めていて、それだけで優に30分は経過していった。
と――。
「あっ、鎌足様! ちょうど良かったです」
突然、外扉と反対側にあった扉から、肩から袖口にかけて銀の太い一本線入りの黒の和装に身を包んだ女性が入ってくる。それに反応したのは湊さん。
「どうされました?」
「お話したいことがありまして、どちらか片方いらっしゃっていただければと思います。それから――」
言葉を区切り、女性の視線が下に動いたかと思うと、その目が私を捕らえる。
「そちらのお手伝いさんにも、一緒に来てほしいのですが……」
「えっ?」
いきなりの要望にどう反応していいか分からない。
そもそも、見ず知らずの人間に来てほしいと頼むのもどうかと思う。
意図が読めず鎌足夫妻に助けを求めると……。
「分かりました。それでは、私湊が伺いましょう。あんた、それで良い?」
「ここは母ちゃんが良いかもな。俺は話をまとめておくから、行ってきな」
二人ともあっさりと快諾し、とんとん拍子に話が進んでいく。
一方の私は完全に置いてけぼりだ。何が起こっているのか皆目見当もつかない。
「急で申し訳ないけど、彩夏ちゃん。少しだけ付き合ってくれても良い?」
湊さんがこちらに少し困り顔で許可を求めてきた。
「わ、分かりました……」
怪しいけど今は従う以外の方法がないと悟り、私は湊さんに怖々と着いていった。




