表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/93

11.試練の城門

 この章は本当にここで終了です!

 次章から城内編となります!

(ついに来てしまった……)

 窓越しに見るそれは、山なのかと思ってしまった。

 煉瓦造りの強固な壁に、分厚い木の板がアーチ状にしてはめ込まれている。

 左右を見ると壁はずーっと、山の方向に消えていくかのように伸びていた。

 壁の上には灯りがあって、よく見ると人影が見える。守衛の面々だ。

(こ、こんなに大きいなんて……)

 昼間に見た景色の下に私はいる。

 あれほど小さく見えた城も、近づけば身の丈を遥かに超す大きさに、私は圧倒されてしまった。

(こんなところを本当に怪しまれずに入れるの……?)

 大丈夫と湊さんは言ったが、明らかに大丈夫じゃない。

(人がたくさんいる……)

 警備は手前の区画より圧倒的に堅かった。

 それでも馬車は何事もなく、恐れることなく進んでいく。

 私には地獄へのロードでしかない気がするのだけど……。

「止まれ」

 遠く聞こえた声で、キュッと馬車が止まった。私も身体を窓から離し、縮こまってしまう。

 規則正しい足音が近づいてきた。

「名を名乗れ」

 少しトーンを落とした声で、友彦さんに聞いている。

「鎌足友彦だ。野菜を卸しに来た次第だ」

 友彦さんは慣れた口調で答える。

「結構だ。後ろには荷物だけか?」

「いや、女房と新入りの子が乗っている」

 予想通りの回答で、気持ちを整えようと深呼吸をする。

「調べてもらっても構わないよ」

(ええっ! おじさんそんなあっさり教えるのっ!?)

 その一言で大パニックになった。

「そうか、では調べさせてもらう」

(えっ、あっ、ちょっと待って……)

 足音が馬車の前から来る。

 目が泳ぐ、呼吸が早くなる、手が震える、心臓が鳴りやまない。

 どうしようどうしようと思い、ふと湊さんが視界に入った。

 すると自信に満ちた目で私を制し、口パクで一言「大丈夫」とだけ私に伝えてきた。

「失礼するぞ」

 ほどなくして、荷台の入口から声を掛けられる。

「どうぞ」

 湊さんが入室を促した。

 入って来た門衛は黒の甲冑を纏い、頭には金属製の兜をかぶって、腰には白い刀を下げた男の人だった。

「一人ずつ名を名乗れ」

 聞かれることは湊さんから教えてもらっていたけど、いざ目の前に屈強な男が出てくると喉が固まってしまう。

「鎌足湊よ。いつもご苦労さま」

 湊さんは笑顔でサラッと答えた。

「こちらこそいつも感謝。で、そっちの子供は?」

 じろりとこっちを睨むように見てくる。

 声音は別段追い込むような感じじゃなかったけど、恐いものは恐い……。

 で、も……。

(ここで下がったら、私をあんなところに置いていったあの皇女に会えない!)

 自分の中の勇気を奮い立たせる。

「あ、あの、私は、1ヶ月前から鎌足さんのところで、働き始めました、か、川上、彩夏、です……」

 つっかえながら、教えてくれた言葉を口から紡ぐ。

「証拠は?」

 心臓が肋骨を突き破りそうなほど跳ねた。

(しょ、証拠!?)

「ほいよ」

 焦る私を遮り、湊さんが懐から何か紙を取り出した。

(えっ、何それ……?)

 私はその紙を凝視。一方の受け取った門衛はしばらく目を通す。

「……あぁ、大丈夫なようだな」

 そして、紙を湊さんに返した。私は思わずホッと息を吐く。

「一応、荷物も確認させてもらうが、良いか?」

「全然大丈夫さ。隅々まで見てもらって構わないよ」

 湊さんの一言で、門衛は荷物を調べ始める。

 その間の私はというと、もうただただ背筋をピンッと伸ばして、姿勢を正すしかなかった。

 湊さんはリラックスした姿勢で、平然と門衛の一挙手一投足を見ている。

「怪しいものは何もないようだな」

 10分程して、全ての荷の確認が終わった。

「そりゃまぁ、安心と信頼の八百屋のかまたりだからね。変なことはしないさ」

 にこりと門衛に微笑み、何かを牽制する湊さん。

 それを見ると、門衛の険しい表情が一気に崩れた。

「まぁ、常の確認は大事ですからね。疑うことはないですが、仕方ないです……」

 やれやれといった表情でため息をつき、小声にはなるが口調を一変させる。

「こっちも分かってることだからいいんだよ。お疲れ様」

「お気遣いありがとうございます」

 湊さんがねぎらいの言葉をかけると、門衛も微笑み素直な感想を伝えていた。

「と、もうこんな時間か……。では、いつもご苦労さまです」

 一瞬こっちを向いて微笑し、表情を戻して荷台から出ていった。

 足音がまた前の方に向かう。

「すべて確認し終えた。通ってもいいぞ」

 さっきの門衛が友彦さんに話しかけた。

「おう、いつもわざわざありがとうな」

 友彦さんは手を挙げて答え、それから馬を前に進める。

――ギギギギギギ……

 動き始めて少しすると、木の軋む音が聞こえた。

 窓から少し覗くと、木製の分厚い扉がゆっくりと開いていく。

(いよいよ、沙恵のいる城に……)

 長い道のりだった。

 ダメかと思った時もある。

 でも、様々な運命が私をここまで誘ってくれた

 私は改めて意を決し、鎌足夫妻と共に、薄暗い大きな口を開けた場所へと入って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ