10.近づく不安
再びサヤカの語りに戻ります。
ここで次の章に移します!
「……ゃかちゃん、彩夏ちゃん起きて」
「ん……んぅ……」
どれぐらいが過ぎたのだろうか? 馬車の揺れとは違う揺れを感じ目が覚める。
「そろそろ起きないと、門衛たちの取り調べが始まっちゃうよ」
声がするので目を開けると、眠る前と景色が違っていた。
意識がはっきりとしないので、暫く瞬きしてみる。
「……?」
あまり目も覚めなかったので目線を下に持って行くと、桃色の生地が視界に映った。
「……はっ!」
状況を把握し慌てて起き上がる。
見ると湊さんはただ優しく微笑んでいるだけだった。
「ご、ごめんなさい! 私、寝てしまって……」
「気にしなくていいのに。疲れていたんでしょ?」
頭をくしくしと撫でられる。
「全く、そんなに気を遣っちゃったらダメよ。もっと気楽に、ね」
「はい」
丸め込まれてしまった……。湊さんの包容力は侮れない。
「疲れは取れた?」
「えぇっと、大丈夫だと思います」
「よし、じゃあ城にも近づいてきたから、もう一回服装から整えていこうか」
そうして私をきちんとした体勢で座らせると、少しはだけた甚平を整えていく。
窓から外を眺めると、すっかり暗闇が支配していた。
街の灯だけが風に揺らめいており、人影もあまり見当たらない。昼間の喧噪はどこへやら。
「すっかり夜ですね。人もいないですし……」
「あぁ、ここは城に近いから、そもそも人は少ないよ。中心はこの時間でもにぎやかだけど、城の近くで騒ぐ奴はいないね」
「うるさいと王城に迷惑だからですか?」
打倒ともいえる答えを出す。しかし、湊さんはうーんと少し唸って答える。
「それもあるけど……。よく見てみて」
窓の外を言われたとおりによく見てみる。
歩く人影はまばらで、ただ単純に人が少ないようにしか見えない。
だけど、少しだけ違和感がある。
(あれ? 武器を持っている人しかいない。それに……)
「一人で歩いている人がいませんね。みんな必ず2~4人ぐらいで行動しているように見えます」
そう答えてから湊さんに視線を戻すと、大きく目を開けて私を見ていた。
「えっと、どうしました?」
「……良い観察眼だね。思わず背筋が凍ったよ」
半笑いで台詞を口にしていた。
「彩夏ちゃんの言う通り。ここは一人で歩く人はいないの。なんでだと思う?」
難しい質問かもしれないけど、と湊さんは少し意地悪そうに付け加えた。
「う~ん、一人でいたら怪しまれるから、みんなでいるって感じですかね?」
「悪くない答えだね。それも一つの理由だよ」
ちょっと小馬鹿にされたようで、ムスッとする。
「ごめんごめん。そんなに怒らないでね」
私の服をきれいに直し、また頭を撫でてご機嫌を取ってきた。
別に嫌いじゃないけど……。
「王城の近くなのは言った通りなんだけど……」
頷いて答える。
「そしてその周囲は、王城の関係者しか住めないようになっているの。何かあってもすぐに集まれるし、兵もそろえられるからね」
合理的かつ分かりやすい理由だとは思った。
「つまりこの一帯は、王城の中と言っても過言ではなくて、警備も街より厳しい。複数で行動しているのは、全員が警備隊ってところだね」
「へぇ~」
思わず感嘆の声を上げた。
しかし大きな疑問も残る。
「でも、それって私達は怪しいのでは? こんな場所で呼び止められてもおかしくはないと思うんですけど……」
不安になるのは当然である。急に取り調べられても、子供の私は対応できないからね……。
「そこは信頼かな? もう彼らも見慣れているし、私達も別段変なことをするわけじゃないからね」
だけど当然のように、揺らぐものがないように、湊さんはあっさりと力強く応える。
「まぁ、何かあっても私達が何とかするから、安心して自分のことを考えていて」
「はい、ありがとうございます!」
その声で私は安心できた。
一つ深呼吸をし、こんがらがっていた気持ちの糸をほぐす。
「沙恵までもう少し、頑張らなきゃですね」
「そうそうその意気だよ」
肩をポンポンと叩かれ、私の気持ちはますます落ち着いていった。
といいましたが、次の更新分でこの章を締めます。
区切りが悪すぎましたし……。
失礼いたしました。




