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8.流れゆく

 長らく更新が遅くなりましたが、またアップ頑張ります!

 オレンジに輝く太陽が明るい色を連れ去って、暗い色が空を覆い尽くそうとする時間。

 荷を全て詰み終えた馬車は、暮れかけた景色を少しずつ置いてけぼりにして動き出す。

(景色がゆっくり動いてる!)

 その様子を小窓からじっと覗く私は、初めて乗った乗り物に心から喜んでいた。

「馬車は初めてかい?」

 私と反対側に座った湊さんが、頬杖を突きながら物珍しい目をしながら尋ねてくる。

「はい! 馬車ってお伽噺や遠い国にしかない物だと思っていたので、本物に乗れるなんてびっくりしてます!!」

 とびっきりの笑顔で答える私はさぞ眩しかったであろう。

「私達の国じゃ当たり前の事なんだけどね。でも、喜んでくれて良かったよ」

 呆れてはいるがはしゃぐ私を咎めることはせず、笑顔で見つめていた。

 私達はあの後、服を着替え、積み残しがないかチェックをして、この馬車に乗り込んだ。

 王城へ行くにあたり、身体を拭って綺麗にして小奇麗なものを着ていく。

 私は薄い水色の甚平を黄色い帯で留めて着た。

 他の二人もさっきまでと違う服を着ている。

 湊さんは桃色の、友彦さんは藍色の甚平だ。

「しかし良かったよ。その服が似合っていて」

 湊さんがしみじみと私の格好を観察していた。

 ふと私は疑問がよぎる。

「そういえば、この格好は失礼に当たらないんですか?」

「と言うと?」

「これから王城ってことは、偉い人のところに行くんですよね? もっとちゃんとした服装の方がよかったのかなぁ、と思いまして……」

 当然だけど私達より地位の高い人のところに向かうのだ。

 それなのに甚平というザ庶民の服で大丈夫なのかが気になってしまう。

「あぁ、そういうこと」

 しかし湊さんはそんなことを考えたこともなかったのか、合点がいくまで少しかかった。

「大丈夫、大丈夫。私達は業者としていくんだし、謁見しに行くわけじゃないから安心して良いよ」

 手を振って笑いながら、私の懸念を払拭する。

「それに、この格好じゃないと動きにくくて難しいのよ? 荷物を運ぶんだし、何回も往復するからね」

 理に適っていることも確かだったので、私は納得してこの会話を終えた。

 その間も黙々と友彦さんは馬を歩かせている。

 茶色い毛(栗毛色)のがっちりとした体格をしたその馬は、テレビで見たばん馬に出てくるような馬だった。

 最初見た時は体躯の大きさにびっくりしたけど、大人しく優しい性格で、ニンジンを食べさせるついでに鼻先を撫でると、つぶらな目を気持ちよさそうに瞑って答えてくれた。

 暫く戯れた後、友彦さんが馬車の前に馬を連れて行き、牽けるように装備を整え出発。

 引くのは友彦さんでどうやって馬が動くのか見ていたけど、手綱を少し動かしたら馬が反応し、そのまま前へと動き出した。

(全く分からなかった……。おじさんと馬の関係だから出来ることなんだろうけど……)

 神の御業が如き技術にただただ驚愕するばかりであった。

 さて、のらりくらりと馬道を進む私達。

 その間も木造と煉瓦で造られた建物を背景に、人々の織りなす風景を興味津々に眺める。

 建物は西洋の文化が混じっているような気がしなくもないけど、服装は和服そのものだ。

(あっ、あっちには刀を持ってる人がいる)

(えっ? あれ槍じゃない?)

 しかも、中には物騒なものを堂々と持ち歩いているし……。

(馬に乗ってる! あの馬もかっわいい!)

 優雅(?)に馬に跨っている人がいて、もう興味の対象は全く尽きない。

「彩夏ちゃんを見ていると、仕事をしに行くというより、旅に出る感じがするわね」

 またしんみりと、哀愁漂う表情で私のことを見つめる湊さん。

「あっ、そうですよね……。これからお仕事なのに、すみません……」

「あぁ、ごめんね気を遣わせちゃって。楽しそうだからこっちも嬉しくなっちゃってね、つい……」

 慌てて訂正する湊さんは何かを思い出して悲しそうな顔をしていた。

 深くは聞けないし今も理由は分からないけど、時々こんな顔をすることがあるから、何かあったのかな?

「と、まだちょっと先だけど、王城に着く前に準備しなくちゃいけないことがあった」

 話を誤魔化すかのように湊さんが話題を差し込んでくる。

「準備ですか?」

 気づかないふりをして、素直にその話題に乗った。

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