表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/93

3.推測を超える事態

 一旦自宅に戻り、残りの二人を呼び出してから状況を説明する。

 話し終えた後、ケイが口を開いた。

「あぁあ、秘密にしておけば、こんなことにならなかっただろうにね」

 頭に強めの手刀をくらわせる。

「いたっ! 何すんだよサヤカ!!」

 暫く俯いた後、頭を押さえながら、睨みつけるようにケイは抗議してきた。私は眉を寄せて反論する。

「あんた馬鹿じゃないの! 彼女はどれだけ怖くても、目をそらしたくても、それでもこうやって私たちを頼ってくれたのよ! そんな言葉で片付けないで!!」

 空気を読めないから余計な一言をどんどん挟むため、突っ込まざるを得ない。

「だけどさ、そう思うのも当たり前だろ? 彼女は依頼を出さなければ、こんなところで命を落とすことはなかったんだからさ」

 否定はできない。ケイの言う通り、彼女は目をつぶっていれば、今でも表面上はそれなりに(・・・・・)楽しい日常を送れたかもしれない。

 かといって、黙っていても罪悪感が溜まっていくだけだったと思うから、どっちがいいとは言えないのも確かだ。

「でもさ、それを知らんぷりできなかったのがその子なんでしょ?」

 そういってマックスが口を挟んできた。

「ぼくたちに教えてくれたこともすごいことだし、たぶん、殺されることを知っていて、それでも止めたいと思ったから教えたんだよね? それってとってもすごいことじゃん! ほめようよ!」

 所々言葉が幼稚ではあるが、流石に勘の良さはチーム内いちのため、空気が悪くなりかける時にしっかりとフォローを入れてくれる。

 しかし、「褒めようよ」って……?

 まぁそんなことより。

「とにかく、一刻も早くこの問題を解決するよ。今回の遺族の方々も、そして、手紙をくれた彼女も報われないから、こうなったら全員で片付けよう」

 手早く依頼を受けることを告げると、ケイとマックスの二人が頷く。

 ただ、イチだけが頷いていない。

「イチどうしたの?」

「全員で行くのか? そうなると今夜の警護はどうする? このままだと明日、あいつから文句言われるぞ」

「それはもう大丈夫。とりあえず連絡とって了承は取れたから、今晩は自由に動けると思うよ。ただし、明日までかかると変なしっぺ返しが来そうだからさっさと動こう」

 ああね、とイチも反論せず頷いて了解した。

「で、どうやって見つける? どう見ても無差別でやっているようにしか見えないんだが……」

 イチがそう疑問を呈した。確かに表立ってみれば一見して関係ないように見える今回の事件だが、殺害された人たちの年齢を見ていて法則性に気づくのに時間はかからなかった。

「歳、というか被害者たちの学年は一緒なんじゃないかな? 殺された人たちの年齢は34から35歳だったから、これには完璧な法則性があると思ったのよ。そんでもってこの資料を見て」

 そうして私が机に広げたものは、この国の中でも超が付くほどの有名中等校「昂麗こうらい中等校」のある時代の二年生、日本でいえば中学二年生にあたる学年の名簿。

「赤い丸で示したのが今回の被害者なんだけど……」

「5、6、本当だ、殺された人と数が合うね」

 マックスが感心したように覗き込む。他の二人もなるほどな、と頷きながら見ている。

「つまり、この中に犯人がいるということか……」

「それもあるけど、この中の誰かがこの後狙われるんじゃないかな、と思ってね」

「というか、これどこで手に入れたんだ? 名簿の持ち出しとか、犯罪臭しかしない……」

「仕方ないじゃん。調査のために必要だったんだから」

 前者の質問はイチ、後者の詰問はケイである。とりあえず、両者の問いには簡単に答え、私は作戦の遂行のためにこの名簿を推察する。

「そうなってくると、大事なのは次の被害者が誰なのかってことなんだけど……」

 言ってから思わず黙り込んでしまう。正直、被害者は分かったけど、何せ名簿には百人以上の名前が組と名前順に沿って並べてある。ここから次のターゲットを探せとかちょっと無茶な話だ。イチとマックスも腕を組んで唸っている。

 そんな時に……。

「これってそういえば、昂麗中等校の名簿だよな?」

 ケイが口を開く。

「確か20年前に何かあったような気がするような……」

 一旦黙りこくって、ケイは鼻の下に右手の人差し指を当て考え込む。時計の音だけが時間の流れを知らせてくれた。

「あっ、そうそう」

 突然顔をあげ、ケイは何かを思い出したようだ。


「確かこいつらだ、"集団でいじめを行っていた"のって」


 聞き捨てならない言葉が耳に届いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ