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11.戦いの行方 その2

 残るは主犯の男一人だけ!

 数的有利は既に廃されたこの状況の行方は……?

[一瞬の(ぎょく)に慄け、(らい)(らい)!]

 息つく暇もなく、残ったリーダー格の男が湊さんへ攻撃を仕掛ける。

 それを湊さんはひらりと右にかわした。

 直後、男はジグザグに動き、狙いを定められないようにしながら距離を詰める。

 湊さんは腰を低くし、どう動いても良いように応戦する構えを取った。

 もうすぐ切っ先が当たるところまで接近。

 緊張が走る。

 いよいよ一戦交えるかと考えていた。が、しかし――。

 男は湊さんに突っ込まなかった。

 代わりに――。


 私に向かってくる!


「えっ……!?」

 猪が如き速さで、湊さんに脇目も振らず私へと標準を定めた。

 突然の敵意の矛先が、私を縛り付け動けなくした。

 覗いていた壁からやっとの思いで手を離したが、時すでに遅く、私は右手を掴まれた!

「や、やめて……」

「るっせえ、静かにしろ!」

 男はそのまま私の背後に回り、余った手に持っていたナイフを私の首元に突き付ける。

「ヒッ……!!」

「へっ! ババア油断したな? 何もてめぇに攻撃しなくったって、こういった手段もあるんだよ!」

 男が勝ち誇ったように強気で声を発した。

 薄目でチラリと湊さんを見ると、流石に首元に刃物を突き付けられている状況では迂闊に動けないようだ。

 下は覗けない。ナイフが届きそうな気配がする中で、下を見たら気絶しそうだから。

「そうだババァ、そのままでいろよ……。俺が見えなくなってから動くことだな」

 じりじりと袋小路の入口から離れていく。抵抗もできず、私は大人しく男に引きずられる一方だった。

 雫が頬を伝う。

 絶体絶命の状況だ。

 私の人生はここまでなのか?

 頭の中で走馬燈が去来する。

 短い命であった。

 沙恵にも終ぞ会うことができなかった。

 こんな淋しい人生があるなんて……。


(絶対にいや!!)


 そう心で叫んだ瞬間、何故か頭は急速冷蔵された。

 足は地面に着いており動かせる。腕や手は掴まれているし、迂闊に動かすと首に刃物が入る可能性があるから使えない。

 代わりに、簡単に使えるところがあった。

 私は諦めムードを漂わせ、刃が当たらない位置まで頭を下げる。

「ふふっ、良い子じゃねぇか……。このまま連れて行くからな……」

 既に勝利を確信しているのだろう。声からは余裕の色が出ている。

 だからこそ、その隙をつけるというものだ!

「ふんっ!」

「いってぇ!!」

 私は頭を思いっ切り振り上げ、後頭部で胸を勢いよく突いた。

 それから更に、少し曲がっていた脚で飛び上がり、男のあごを天頂部で攻撃!

「うぐぁっ!!」

 私自身も痛いが、相手のナイフの切っ先が首から完全に離れる。

 拍子に右手から掴む力が無くなった。

(ち、チャンス!)

 私は左手で男のナイフを持っていた手を払いのけ、一目散に湊さんへ一直線に走る!

「くそっ! 待ちやがれ!!」

 悔しさで吠えた男の声が背中に届く。

 しかし、尻餅を着く音は聞こえたため、すぐに動くことができないことは分かった。

 この好機は逃さない!

 一陣の風が如く、自分でも驚く速さで、覚束ない足取りながらも、脚を動かす!

 とにかくとにかく、とにかく前へ!

(もう少し……、あと少し……!)

 湊さんのいる地点まで手が届く距離まで来た! と思ったら……。


 私の左側を反対方向に風が薙いだ。


 慌てて脚を止め後ろを見ると、いつの間にか湊さんが男の首に腕を回しキメていた。

「もうそろそろ聞こえなくなるから一言だけ。ババァと二度と呼ぶんじゃないよ!」

 あれ気にしていたんだ……。

「あぐぐっ……、ぐぶっ……」

 そして電池が切れたように、口から泡を吹きながら、男が力無くあっさりと気絶した。そして湊さんは男の顔をペチンペチンと叩き……。

「もういいわよね?」

 完全に意識が無くなったことを確認して、首から腕を離した。

 私も危険が及ばなくなったことを確認して近づいていく。

「いやぁごめんね……。ちょっと不意にそっちに行ったもんだから、一瞬混乱してしまったのよ……。これは完全に私の油断だったわ……」

 そう言って湊さんは頭を下げる。

「い、いえ! 私もここからすぐに離れるべきでした。ごめんなさい……」

 私も慌てて頭を下げ返す。

「まぁでも、とっさにあの判断は凄いね! まさか″頭″を使って攻撃するなんて、考えもしなかったよ」

「もうがむしゃらでしたから、何が何でもって感じで……」

「じゃあ尚更、良い方向に運が向いて良かったじゃない? とりあえず、大きな怪我は負っていないようだしね」

 頭をぐしぐしと撫でられる。少し乱暴だけど、温もりはしっかり伝わってきた。

 と同時に――。

(あれ? 意識が……)

 急に目の前が真っ白に変色する。

 景色の全てが霧に覆われたようであった。

「お嬢ちゃん! 大丈夫!?」

 湊さんの声が遠く聞こえるが、脳は理解する前に思考を止める。

 そのまま私は、恐怖と温もりの入り混じった奇妙な闇の中へと引きずり込まれてしまった。

 ということで、これにて三章は終了です!

 サヤカの土壇場度胸、いかがでしたか?

 次は四章目に突入いたします!

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