10.戦いの行方 その1
3人を簡単にいなし、まだ余裕そうな湊。
残るは3人だが、果たして……?
その隙を狙ってか、残り三人が三角形を作り、湊さんを取り囲む。
「へぇ。ちょっとは頭を使えるようになったみたいだね? 経験できてる良い証拠だよ」
さも教師の言いそうなセリフを使って皮肉る。
「何だ偉そうに……? たかが二人を伸しただけで……」
「まだ、三対一だ。数的には勝てるってもんよ」
「……」
三人はじりじりと湊さんとの距離を近づける。ただし、攻撃が簡単に届かない位置までくると、その場で腰を落とし、様子を見た。
風がそよぐ。
言葉も、唾を飲むことすらも憚れる静寂。
ジワリと汗が額に滲んだ。
「終わりにしてやる!」
空気が一気に変化する。
途端、三人が一斉に手の平を湊さんに向けた!
[空に花咲け、雷一閃!]
[乱れを生み出せ、嵐直!]
[灰塵もろとも焼き尽くせ、炎撃!]
そして、同時詠唱の直後、雷の咆哮が、風の轟音が、炎の爆発が、一直線に湊さんへ向かっていく!
対角線上に人はいないため、巻き込む恐れもない。
短い距離で囲われているため、湊さんは一歩も動けない。
詰んだか?
いや、湊さんは微かに左の口角を吊り上げている。
「まだまだ分からせる必要があるみたいだね」
と、湊さんは頭を下にして、両手を地面に着ける。そしてそのまま――。
逆立ちした!
[我が円より放て、渦巻水!]
両手を上手く操りながら、脚を開き回転すると、水が輪を描き攻撃を弾き飛ばしていく。湊さんが再び仁王立ちになる頃には、三種の攻撃の姿は微塵も感じられなかった。
だが――。
「はっ! もう油断しねぇ!!」
攻撃を弾き飛ばされたが、リーダー以外の二人がナイフを握って、湊さんに突っ込む。リーダーは右手に雷の球体を作り、攻撃のタイミングを窺っている。
先に炎を操っていた男が、低い体勢からナイフを掬い上げるように湊さんへ切りかかってきた。湊さんはそれをバク転でかわし、ついでに腕を使って空へと跳ねあがった。
そして、向かってきていたもう一人の風を操る男の両肩に着地。何が何やら分かっていないそいつをよそに、湊さんは脚を閉じる。
「あ……がっ……!」
苦しいのか両腕を使って、湊さんの脚を剥がそうとするが、ますます絞めあがっているようである。
「歯ぁ食いしばっておきなよ」
攻撃をスカしていた炎の男が、二撃目を喰らわせようと突っ込んでくる。今度は横一線にナイフを素早く薙いだ。
が――。
「小刀を投げるとか、工夫がないね!」
そう言って後ろに勢いよく、大きく倒れていく湊さん。同時に、挟んでいた男も倒れていく。
ナイフは当たることなく、何もない虚空を裂いただけだった。
そして、地面に着く前にまた湊さんは地面に手をつき――。
挟んでいた男を持ち上げた。
そこにはちょうど、ナイフで攻撃を繰り出した男の身体があり。
「ごふっ……!」
見事、持ち上げた男の爪先を鳩尾にクリーンヒットさせた。
そして持ち上げていた男も当たった時点で脚を離して置き去りにし、湊さんはまた可憐なバク転をして地面へと降り立つ。
その姿は子を守らんとする、獅子にも虎にも見えた。




