8.歪む景色に響く一声
押し倒されてしまったサヤカの運命は……?
「もう優しくなんかしてやらねぇ! お前を散々犯して、俺らの快楽道具にしてやるよ! ありがたく思いな!!」
その一言共に、私の服を無理矢理破く!
未熟な私の身体が、見知らぬ場所で露わになった!
「いや! 離して! 触らないで!!」
抵抗を試みようと腕と脚を無茶苦茶に振り回す。だけど、効果はいまいちだった。
「うるせぇ! 大人しくしないお前が悪い! いい加減観念しな!!」
「おい、こいつそそるような体してんな!」
男たちが思い思いの感想を口にしている間にも、下の服まで全て破かれ、私は下着だけの状態になる!
「うぅ……! やめ……! 誰か助け……」
もう下着にも手を掛けられてしまっている。脚を思いっ切り閉じて抵抗するが、大事なところをこじ開けられるのも時間の問題だった。
「はっ! 助けなんか来るわけないだろ!」
冷ややかに抑制しようとする声が耳障りに届く。
だけど私は無視し、抵抗と諦めの間にある力で、口を塞がれる前の最後の一声を振り絞った!
「誰か……誰か助けてえええええええええええええええええええええ!!」
「はいよ!!」
一瞬、空耳かと疑った。
女性の声が耳に届いたのだ。
しかも聞き覚えのある、少し歳のいった女性の声。
(ま、まさか……!?)
そのまさかを疑った直後――。
「ぶはっ!!」
轟音と共に、私の身体から圧が消えた。
どころか、周囲から男たちが消えている。
(えっ? えっ??)
頭が状況に追い付けない。
身を起こして確認すると、目の前にはいつの間にか水を浴びた男たちが倒れている。
その男たちも一瞬のこと過ぎるせいか、目を瞬かせるだけであった。
「ごめんよ。探すのに手間取ってしまってね」
恐る恐る、でも確信をもって振り返る。
炎の壁があった地点に立っていたのは、紛れもなく、想像通りな――。
「み、湊……さん……」
「やぁ、お嬢ちゃん」
私を助けてくれた女性――鎌足湊であった。
その湊さんは私の姿を見て顔を曇らせる。
「ほんのちょっと目を離しただけなのに、あられもない姿になっちゃったね……」
その言葉で私は慌てて腕を胸元につける。
すると、肩にするりと柔らかいものが乗せられた。
「とりあえず、応急処置で申し訳ないけど、おばさんの汚い上着で隠しな」
「えっ、あ、ありがとうございます……」
返事をしてからありがたくその上着で前をきつく閉じ、見えないように隠す。
それを見届けた湊さんはフッと一息ついて、ゆっくりと視線の男たちへと移し……。
「そんでもって……。か弱い女の子に傷をつけようってのは、どこのふざけた餓鬼どもだい?」
ライオンをも射殺すような目で睨みつけた。
いつの間にか男たちは次から次へと立ち上がり、手には小型のナイフのようなものを持って、臨戦態勢を整えつつあった。
「てめぇ、一体何なんだ?」
先程柔らかそうな口調で話していた男が、ドスを利かせた声で湊さんに問う。
「ひっ……!」
情けないけど、私は短い悲鳴を上げてしまった。
しかし湊さんは涼しい顔で、男たちを見渡す。
「私? 私はこの子の保護者だよ。あんた等みたいな下衆な輩から守るために、ここに来たのさ」
嬉しい衝撃だった。
衒いもなく、言い澱むことなく、「保護者」と言い放つ湊さん。
まだ出会って間もない私を。
得体だって知れない私を。
護るべき対象と見てくれていた。
湊さんに後光が射し、信頼度が超加速で上昇していく。
「へっ! 保護者かよ! だったら敵じゃねぇな!!」
かと言って、男たちが臨戦態勢を解くことはない。
その中でも不敵な笑みを深くするのは、私に猫撫で声を接してきた男だ。
恐らくこいつがリーダーで間違いない。
「状況が読み込めねぇのかおばさん? 一人伸びてはいるが、それでも6対1だ。勝ち目なんてもんはねぇんだよ」
確かに、数的有利は向こうにある。
しかも全員武器を持っているのに対し、湊さんは丸腰だ。
追い込まれているのは、見るからにこっちの方であった。
「う~ん、あんた等若いねぇ……」
しかし湊さんは、寧ろ悩まし気に、困った顔で彼らを見つめている。
「若いのは悪くないけど……。もう少し、相手の実力をしっかり見極める力も養った方が良いよ」
「何?」
「どうせさ、小刀持って、多人数で脅して、力無い女の子を襲って来たんだろうけど、強いのと戦ったことはないようだし、鍛えているとも思えないしね」
図星なのか男は一気に黙った。
「多人数でかかってくるのは構わないけど、どうなっても知らないから……ね?」
間を取ってからの確認の語尾。
明らかな挑発だ。
案の定、男たちはイライラを倍増させたようである。
「後悔させてやるよ……。俺らを雑魚呼ばわりしたことを、絶対に後悔させてやるよ……!」
震える肩がどれだけ頭に血を登らせているか分かる。
いつ感情の爆発で、こっちに突っ込んできてもおかしくない。
時間の問題だった。




