2.日常の崩壊
全員がそろったところで緊急の話し合いを開く。
そして、まずは話を聞くのが良いのでは? というイチの意見が採用され、依頼主に合うメンバーも話し合われた。
今回、面会する面々は二人。女性ということと冷静な判断ができるという理由で、私とイチが出向くことに。急いである程度の身支度を済ませ、まだ朝日が昇って間もない時間に依頼主の家へと向かった。
周囲を気にしながら歩く。歩みを進めながら感じることは、ここ最近の事件の影響か、皆どこかおびえながら暮らしている感じがした。
しばらく歩くと少し青味のかかったレンガの家に到着する。
「ここかな?」
「みたいだな」
呼び鈴はないためノックをし、来客であることを伝えた。
しかし、返事は返ってこない。
「「……?」」
二人で顔を見合わせる。
疑問に思いながらイチがもう一度ノックするタイミングで、ふと下を見てみる。
赤い液体がドアの下から見えた。
「イチ! 下!」
「あっ? っ!?」
イチも認識した。
緊張が自然と高まる。恐る恐る両手を地面につけて、鼻を近づけ臭いをかいだ。ほんの少しだけだけど、私たちの背中に恐怖の戦慄を走らせるのは十分。
それは、まぎれもなく血だった。
二人で戸に耳を澄ませる。
物音ひとつしない。
「開けるよ……!」
思い切り引き戸を開け、中を確認する。
倒れていたのは女性だった。
イチが素早く脈を診る。
しかし、静かに首を振った……。
武器を構えて中へと入る。そして目の当たりにしたその惨状は――。
あまりにも残酷なものであった。
死後まだ一時間は経っておらず、血は生乾きのまま部屋中に飛散していた。ありとあらゆる家具が深紅に染まり、どれほどの血が流されたか分かる。
床の上だけでなく、壁にも机にも死体が乗っていた。
あったはずの命は、大人も子供も関係なく、一瞬で狩り取られてしまったのが分かるほど、深く切りつけられている。
窓を見るとそこだけが荒れていた。それが争った形跡だと推測する。そして、大きく開かれていた窓の下に、少し恰幅の良い男性が倒れていた。恐らく依頼者の父親であろう。家族を守ろうとして犯人たちと、仲間同士であっても戦ったことをうかがい知れた。
しかし皮肉にも自らの殺した者たちと同じ末路を辿ってしまったのは、犯人と言えども何とも味気ない。
少し見渡して、生きているものがいないか確認するが、残念ながら息の声は私とイチだけのようだった。
二人で眼を瞑り、手を合わせ、少しの間だが黙とうを行う。
その後、私たちはすぐに犯人たちを追いかけたかったが、状況を説明する必要があったため、まずは警察に連絡を取る。来る前にある程度把握しなければいけないため、慎重にものを動かさないような調査を行い、警察の到着後、経緯と事情を説明。ただし、第一発見者=容疑者の可能性を疑われるため、解放されたのは二時間後のことであった。
こうなったら私たちも危ないけど、毒を食らわば皿まで、だ。
私達は互いに頷き、巻き込まれた人たちの意思を汲み、正式な依頼として受けることにした。