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10.光明?

 訳が分からないままに、岩の中へと引きずり込まれたサヤカ。

 本当にこの岩が、異世界への入り口となるのだろうか?

 真っ暗だ。


 見渡しても見渡し切れないほどの暗闇。


 底なんてもっての外の闇だ。


 そもそも、底なんてあるの?


 いやまずどうなっているの?


 これが落ちているのか、上に向かっているのかなんて、全く分からない。


 ただただ恐怖でしかない。


(これ、大丈夫だよね!?)

 不安だ。物凄く不安だ。

 沙恵のことを、……まぁ多少なりと信頼しているとはいえ、この状況では文句の一つや二つも言いたくなる。

 とりあえずこのままだと……。

(し、死んじゃう!!)

 そう思った途端――。

「あっ、来た来た! 良かったー!!」

 呑気な鈴の鳴るような声が頭上(いや、脚下か?)から聞こえた。

 というよりもこの空間全体に広がって聞こえてくる。

「沙恵ー! 沙恵、どこに居るのー!!」

 恐怖のあまり思いっ切り腹の底から声が出る。

 しかし、返事が返ってこない。

(えっ? 何で? 何で返事してくれないの……?)


「ばぁっ!」


 突然後ろから抱きつかれる。更にどうやら私の胸を触っているようだ。しかもいやらしい……。

 イラッとした。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……。サヤカ、首を絞めるのやめてちょうだい……!」

 なので、抱きついてきた人物のうなじ辺りに手を回し、思いっ切り絞める。

「こんな状況で抱きついてくる沙恵が悪い!」

「ご、ごめんごめん! ちょっと、話があるから、お願いだから、解いて……」

 不本意ながら渋々外す。しかし抱きつくのをやめないので、もう一度絞めようかとも思う。

「あ、ありがとう……。この状況だし本当はしちゃいけないのかなぁって思ったけど、ちょっと明るくしたくて……」

「そう思うんならやめて!! 私、今、本当に怖いんだから!!」

 何故その選択肢を選んだのか、今となっても理解ができない。いやまぁ、このアホの考えていることは本当に分からないんだけど……。

 とはいえ、来てくれて嬉しかった。正直一人寂しくこの暗闇にいたんじゃ、泣き出していた可能性はあったし。

(あれ? 沙恵の身体……?)

 そんな折、私はとあることに気付いた

「ねぇ沙恵、何で体薄いの?」

「ああ、これはね、私が今、この場所にいないからだよ」

「?」

「要するに、この前の夢と一緒で、私の身体は別のところにあるんだ」

「じゃあ、いつになったら本物の沙恵に会えるの?」

「大丈夫だよ。絶対に会えるから!」

 食い気味に、両肩をがっちり掴まれた。

 必死か。

「だけど、もう少し待って、私の本体は動ける立場じゃないから……」

「まぁ、お姫様だから仕方ないか……」

 ちょっとしゅんとしてしまう。折角の憧れが目の前にいるのに、その存在はまだ遥か遠くだから。

「分かった。その時を楽しみにしてるよ。必ず会おうね」

「うん!」

 そう言って、私の両手をやっぱりぶんぶんと上下させる。喜怒哀楽が激しく、忙しい人だ。

「もうすぐ出口だから、そろそろ私は自分の身体に戻るね」

 見ると落ちていく先に光が見えていた。この暗闇の出口のようだ。

 しかしここで1つ疑問が残る。

「ねぇ沙恵。これってこのままだと、頭から落ちない?」


 そう。


 私は頭から落ちている(・・・・・・・・)


 つまりこのままいくと、頭からいって、首の骨を折って、死ぬ恐れがあるのだ。

 それは洒落にならない……。

「それは大丈夫だよ!」

 あっけらかんとした笑顔で、そんなことを言い出した。


「落ちるというより、一瞬意識が無くなってその場にいるって感じになると思うから、安心していいよ!」


「…………」

 この姫さんは、一体何を言っているのだろうか?

 頭が狂っているとしか思えない。

「意識無くなるの……?」

「うん! でも、その後はちゃんと地面にいるから大丈夫だよ!」

「それ大丈夫じゃないよね!? 意識一回なくなってるじゃん!」

 そりゃそう言いたくなる。

 要するに一瞬でもどうなる分からなくなるのだ。

 おかしいことに気付いて欲しいと切に願うが……。

「とにかく、私を信じて! 絶対に大丈夫だから! ね!!」

 必死すぎる……。

 しかし、ここで疑っても埒が開かないことは明白なので、グッと文句を飲み干す。

「分かった……。沙恵を信じるよ……」

「本当? よかったぁ~!」

 良くはないが、もうこの際仕方ない。諦めて従うことにした。

「じゃあ、私はここで失礼するね。会えることを楽しみにしてるよ!」

「私も楽しみにしてるよ」

 昔の私は夢を魅せられていたんだなぁ……。純真無垢(?)って恐い。

 そうして、どこぞのお騒がせ姫様は私の目の前から姿を消した。

 また一人、風の音だけが耳を掠める暗闇の中に取り残された。

 そんな中で、私は一人考える。


(どんな世界なんだろう?)


 不安よりも期待の方が大きいのは確実。

 今までの自分からは、想像できない体験ができるという確信もある。

 だから私はこの世界に飛び込む。

(でも、絶対に何かいいことがある!)

 その思いをしっかりと抱き、私は静かに目を閉じて、光の隙間へと吸い込まれていった……。

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