8.夢と現に挟まれて
この前投稿した時からかなりの年月が経ってしまいましたね……。
短いですが、少しずつまた書いていきます!
「んぁ……」
(何今の……?)
気がついたら自分のベッドに戻ってきていた。
(今見た夢は、現実?)
矛盾の言葉が浮かんだが、しかしそう思いたくなるのも当然。記憶の片隅に残っているのは、単なる夢にしては鮮明に残り過ぎたからだ。
(3日後……)
私は寝ぼけ霞む目をこすり、ベッドの前の壁に貼ってあるカレンダーを見てみる。
(あぁ、そうだったね。私の誕生日……)
自分の生まれた価値なんか見いだせなかったから、すっかり忘れていた自分の生まれた日。今まではただ家族に祝ってもらうだけの、正直に言えば退屈な日だった。
でも、今回は違う。
生まれてきた意味を持たせてくれそうな、特別な日になりそうだからだ。
(私が生まれた意味があるなら……、沙恵が信じてくれたなら……)
眠っていた頭はすっかり冴え、血の温かさをその身の内に感じながらこんなことを考える。
それもそうだなぁと思った。何せ……。
『それに私は、あなたを必要としているんだしね』
こんなことを言われてしまったら、どうしたって信じたくなるんじゃないかな?
沙恵との約束の日まではちょっと先だから、2日間は当たり前だけどしっかりと学校へ通う。
すきっとした青い空の下、鳥の声が響き渡るいつもと変わらない道中。
そして、誰にも会わずに教室へと到着した。
(今日もいい天気だなぁ……)
着いて早々自分の席に座り、机の上に手を置いてその上に頭を乗せ、外へと視線を移す。私は空の向こう側まで、考え事に耽りながら見つめていた。
(あの人は……、沙恵は一体どこから来たんだろう?)
どこから入ってきたのかは分かったものの、そもそもどこから来たのかは分からない。沙恵はただ「自分たちとは違う世界から来た」としか言っていないからね。
そしてそこに付け加えられたワードは、私が違う世界へと心を奪われるはめとなった。
(お姫様かぁ……、きれいだったなぁ……、素敵だったなぁ……)
この脳内お花畑のお嬢様は、一体誰でしょうね?
あっ、小学生の私か……。
まぁいいや、話を進めていこう。
そうこうしていると、ぼちぼちと他の児童の足音がして、教室に入ってきた。みんなこっちを見ようとしていない……だろう。
だろうというのも、私はずっと窓を眺めていたからだ。誰が入ってきても、正直何も気にすることがないし、気にする必要がない。
だってこの時、気づいたことがあったからね。そこにいる人間は、私を必要としないし、私も必要としないことに。
それよりも私を必要としてくれた人のことを―沙恵のことを思っていた方が、心が安定する。
人間楽な方に流れたくなるからね……。
と、何てことない変なことを考えていると、廊下から書けてくる音が聞こえてきた。
「おぉ、今日は随分と異臭を放っているなぁ!」
そして、ついに奴らが―私の外敵たちがやってきた。
今日も私の耳に入るよう、わざわざ大きな声でそんなことを言いふらす。
「まったく、ここはごみ溜めとか汚水処理場じゃないんだぞ。そんな奴が来る場所じゃねえんだよ!」
きゃはははははははっ! とリーダー格の奴が笑い出すと、その取り巻きたちも一緒になって笑いだす。最近、社会科見学で「下水(奴は汚水)処理場」という単語を得たため、味を占めたのか使いだした。
まぁ、そんなことはどうでもいいので、私はとりあえず窓の外をじっと見る。
「おいおいおいおい、なんだか珍しい反応だなぁ。俺を楽しませたいために開発したんだろ?」
何か言ってくるが本当にどうでもいい。だから、ずっと無視をしていた。
「おい、彩夏さんよ……。もしかして、無視かい? 悲しいなぁ……」
で、わざわざ私のところに来て、言わなきゃいけないかなぁ……? そんでもって、私の見えるところに来て見下ろすのやめてほしいんだけど……、とは思った。
「おい聞いてんのか? お前、耳ついてなかったのか? それとも、耳が腐っちまったのかなぁ?」
そういえば本当に最低な言葉を使われたっけね。この時は声音がだんだん怒り口調になっているのに気づいていたけど、だからどうした的な感じだった。
「くそがっ! 無視してんじゃねぇよ!!」
そう言い放って、拳が飛んできた。
「はぁ……」
暴力に訴えるとは救えない奴……。
「なっ!?」
ということで、その拳を止めた。
その行動に驚いたのだろう。情けない声が出てしまっている。
「ねぇ、邪魔なんだけど。人から楽しみを奪って何が楽しいの?」
何というか人が変わったのか? と自分でも思ってしまった。
昨日までの怯えていた私は一体何だったのか?
「いい加減、私に付きまとうのやめて。何? 私のことが好きなの? それじゃあ、ストーカーじゃん」
頬が確実にダメな笑い方をしているのが分かる。
挑発だ。
人生で初めて挑発をしたのだ。
「なっ、そ、そんな訳ないだろ! お前が嫌だか、やっているに決まってんだろうが!!」
その割には顔と共に耳が赤くなっていたので、あぁ、そういうこと、と理解した。
「う、うるせぇ!! こうなったら容赦しねぇぞ!!!」
再び拳が飛んできた。今度は全体重をかけて顔面に殴りに来る。
面倒くさかったので私は……。
体を屈めて、奴の腹辺りのベルトを掴み、そのまま後ろに投げ飛ばす。
(何だ、こいつ結構軽かったんだね)
そんなことを思いながら、無表情に手を後ろに放った。
「うっ、うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
そしてそのまま体が吹っ飛んでいく。
「いってぇ……」
運が良いことに投げた場所は取り巻きがいたから、顔面骨折とかは免れたみたい。
「さて、もうつかかってこない?」
私が確認がてら後ろを振り向いて奴に聴く。
「あ、あぁ……、あああああぁ……」
しかし返答はない。それどころか、何でか私を恐怖の眼差しで見ている。
すると――
「おーい何やってんだ?」
先生が教室へと入ってきた。しかも私の席にがある後ろのドアからだ。
「おいおい、本当に何やってんだよ。ほら怪我はないか? なんでこうなったのか話せるか?」
先生がいじめっ子に手を差し伸べる。
「ご、ごめんなさい……」
小さな声でその言葉を呟いた後……。
「ごめんなさあああああああああい!!!!」
一気に声を上げて、自分の席に逃げるようにして着いた。それと同じように、取り巻きたちも自分の席やクラスへと戻っていった。
「だ、大丈夫……なのか? なぁ川上、何か知らないか?」
「別に、何もないですよ」
私はすまし顔でさも何もなかったかのように言った。
「そ、そうか……。じゃあ、ホームルーム始めっぞー!」
先生は困惑しつつも、今日の出席を取り始めた。




