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1.日常に来た一枚の手紙

 依頼主の女の子の名前を「沢渡さわたりかえで」に変更しました。


2019/12/31更新

2020/01/01更新

2020/10/12更新

「助けてください

 あなた方にしかできないことだと思い、今回依頼しました

 私たちの父が一緒になって犯罪に手を染めています

 この前密かに後ろをついていった際に、

 父たちは私の知らない人の家に複数人で入り、

 その後、血まみれで出てきたのを目撃しました

 次の日にはその家の人の名前が死体となって載りました

 お願いがあります 父を捕まえてください

 そして、殺さないでください

 殺された遺族の方からすれば誠に遺憾なこととは思いますが、

 何といっても大切な父です

 私ができればいいですが、父には敵いません

 できることなら生きて罪を償っていってもらいたい

 だからこそ、あなた方へ依頼したのです

 どうか、どうか、よろしくお願いします

                          沢渡さわたり かえで


 晩春の暖かい空気が薫る早朝の時間。

 起きて階段を降りると、玄関の戸に挟まっていた紙に気付いた。

 居間に移動し、座布団に座って手紙を開封して書いてある内容がこれ。

(本当にこの手の依頼が来るとは思わなかった……)

 基本は人探しや警備、または巡回等の簡単な依頼を受けるばかりで、こうして来る依頼もその類であったけど、殺人犯の捕獲を依頼されたのは初めてだった。

(あれ? これはもしかして……?)

 少しして私は理解する。

 この話は、最近街を騒がせている連続無差別殺人事件だろうと。


 一週間くらい前から何ら関係性のないような家々を狙った殺人がこの街で行われており、その家に住む家族全員が殺されている。そのあまりにも残酷なやり口から人々は『狂乱に満ちた(やから)の仕業』と巷で専ら噂になっている。


 しかし、この文面からは複数での犯行なのが分かる。

 私もこの事件の動向を追いかけていたため、被害者の背景も大体は見えてきてはいた。

(この手の事件はまだ合同の時しかやったことないなぁ……)

 だけど、掲示板に張ってあるこの手の仕事は私達の階級では受けられないし、この依頼を受けられる階級の人たちがいることが前提で『掲示板の依頼』は受けることとなっている。

 ただ、依頼が直接届くと話は別で、その依頼は単独で遂行しても大丈夫となる。

 それにしても、自分の父親が殺人犯だなんて思いたくもないけど、よく勇気を振り絞って書いてくれたと感じた。

 封筒にはもう一枚紙があり、依頼主の住所が記され、そこで話をしたいと書かれてあった。

 所々字が走っている。

 相当火急であったはずだ。

(これは、急いでいかなくちゃ……)

 私はすぐに動きたくなったが、私一人の問題ではない。

(で、あいつらはまだ起きてこないのかな……?)

 まずはメンバーの確認を取らなければならないのに、肝心の3人はまだ2階にいるようだ。

 ということで上に行こうと腰を上げる。

「どうしたの? 何だか怖い顔して……」

 居間の入口を見ると仲間のマックスが寝癖のついた深緑色の短髪を乱暴にかき、眠い目をこすりながら降りてきていた。

「ちょうど良かったマックス、急いで上のアホ2人を呼んできて。緊急性の高い依頼が来たから」

「え~、いやだよ~」

 即答で断られる。

「あんた近いんだし、男部屋なんだからいいじゃん」

「もう上に行く元気ないよ~。ご飯食べないと行かないからね~。サヤカいってらっしゃ~い」

 手を振りながら机に突っ伏して定位置に居座る。

 ふつふつと沸く怒りを胸に収め、動かない阿保はほっといて、これ見よがしにどしどしと階段を上がった。

「サヤカ落ち着け、防音はそこまでないんだから、近所迷惑になるぞ」

「うっさい、さっさと起きて!」

 男部屋に着くと一人、長い白髪を陽の光に照らしながら窓際に立っていた。

「あれ? イチだけ?」

「俺は今起きたばかりだ」

「ということはあんたが最後かい」

「起こされてしまった」

「でしょうね。と、そんなことより……」

 少し寝ぼけ眼のイチにも手紙を見せる。

「何だ?」

「緊急案件。とりあえず読んで」

「はいよ。ん~……」

 内容を吟味しているのか、しばらく無言で見つめる。

「どう思う?」

 中々口を開かないから、イチに尋ねる。

「本来なら上の階級の人たちに頼まないといけないが……」

 腕組みして宙を見つめ考えてはいるが、悩んでいるようだ。

「なんだなんだ二人して」

 戸の方を振り向くと、ブロンドの髪で左目を隠しているケイが、空の籠を持ってこっちを見ていた。

「こっちのセリフだけど、ケイこそ何してんの?」

「洗濯だよ! 見てわからねぇか!?」

 何故か激怒される。

「そんなことより、下にも行かずお前らの方は何してんだよ?」

「これ」

 部屋に入って来たケイに、イチが手紙を渡す。

「玄関にあったんか?」

「そう。戸に挟んであってね」

「俺が起きた時にはなかったから、その間に入れたのか」

 そうして手紙に目を通す。

「あぁ、連続殺人事件か。いつまでかかるのかと思っていたんだよね」

 通し終えて納得したのか、手紙を私に返してきた。

「なんちゅう言いぐさ……」

「まぁ、警察が逮捕に時間がかかりすぎているのは分かるが……」

 イチと二人でケイの発言を諫める。

「で、受けんの?」

 その質問に私達も口を噤んだ。

「ったく、悩んでるぐらいだったら、とりあえず話し合おうぜ。どうせここで時間潰してもしょうがねぇしさ」

 ケイの提案に納得し、二人と一緒に階段を下りた。

 髪の色と形を統一させました。

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