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12.言い分

 なんとか耐えきり、芥田(あくた)の話を全て聞き終えた私は、うんうんと頷いて向き直る。

「沢渡さんだけならまだしも、その娘にまで手をかけるとか、本当に救いようもないね……。あきれるわ」

 嘆息と共にそんな言葉が出てきた。しかし、芥田は右から左へと言葉を流したのか、また口を開く。

「何言ってんだ? 俺は犯罪者の魔の手からこの街を救ってんだよ。それをお前らみたいな弱小自警団が何を横からつついてきてんだか……。恥を知れ」

 どっちが? とは言わないでおこう。

「あなたの性根は相当腐りきってるね。小林さんを殺したこともそうだし、沢渡さん一家を惨殺したのもそうだし」

「はっ? 馬鹿か小娘。田舎者が首席卒業なんて、学校の恥だろ? それを防ごうと思ってやったことだぜ。あいつが死んでしまったことは誤算だったが、俺は認められてしかるべき存在なんだよ」

 だいぶん言質は取れているんだけど、そろそろ押問答にも飽きてきた。

 というよりも、聞いていて腹立たしい。

「なるほどなるほど、そう言った理由で小林さんを殺したと……」

「だから殺してねぇって。あいつが勝手に死んだだけだろうが」

 どすの効いた声だが、私はそんな文句をどこ吹く風で聞き流した。

「だってさ考えれば分かるじゃん。あなたたちがそういったことをしなければ、小林さんは屋上へも行かず、隣の校舎に飛び移ろうともしなかったし、落ちることもなかった」

 前置きをして私は詰め寄り、芥田の胸倉をもう一度掴んだ。

「その時点で、あんたらは殺人を犯しているのと一緒なの……。それが理解できないって訳じゃないよね。特にこの国随一とされている昂麗中等校に進学できたのなら……。ね?」

 ぐいッと引き寄せ、目に力を籠める。それでも、芥田は怯まない。

「だが、もう30年も前の話だ。時効は時効だろう? ということは、それに関しての俺たちの咎めはないってことだ。恐らく、今回の沢渡を殺しただけだろう?」

 平然とした顔でそのことを聞いて来た。私は内心で舌打ちをし、ため息混じりに言葉を吐いた。

「正解よ。あなたたちが30年前に起こした事件の捜査は打ち切られているし、実況検分なんて今更しないから、そのことで捕まることはないね」

 そうして私は芥田の胸倉から腕を離した。

「やっぱりな」

 勝ち誇った目をする。恐らく、ざまぁみろと思われているのだろう。

(この性格でよく昂麗中等校へ進学できたね……。まぁ、人間性は関係ないから仕方のないことなんだろうけど)

 少しずつ芥田の顔が緩んでいくのが分かる。

 芥田の罪は、私達が証人としてどれほど説明しても、懲役20年以下相当でしかない。つまり、それ以上の刑罰は対象外になってしまうのだ。

「確かに、警察はあなたたちを罪に問えないよね。それは喜んでいいじゃない?」

 私は呆れ口調でそう言った。

「ちょっと待て。何だ今の?」

 すると、にやついていた芥田は何かに気づいたようだ。


「 “警察”は?」


「うん? そうだよ、“警察”はね」

 そして私はイチの方を――正確にはインカムの方を向いて、大きな声で呼びかけた。

「そろそろ出てきていいですよ。殺さない程度に殴るぐらいは、警察の方からも許可を取ってあるので」

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