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8.意外なところから

 考えてみれば単純な話である。

 もう既に幾人もの元仲間を殺されているのだ。

 復讐を考えていてもおかしくはない。

 そして残りはほんの数人。

 どうするかは一目瞭然だ。

 連中は憎しみに駆られた目をしてこちらを睨みつけている。こんなところで殺されまいと、そして、必ず根絶やしにするという気がこもっているのが分かった。

 そんな思考を巡らせていると、二人がこちらへと向かってくる。手には短刀、しかも両手。斬り込んでくることは確実だった。

 と、私の後ろから人影が二つ飛び出していった。

 そして犯人達と対峙し、やってきていた刃を自分たちの武器で受け止める。

「サヤカ、ぼさっとするな! ここは俺とマックスで引き受けるから、お前は先にいる二人を相手にしろ!!」

「サヤカ大丈夫! 任せて!」

 動きを見せたのは速さに自信があるケイとマックスの二人だった。両方とも短刀もしくは短剣を扱うため、斬り込み役を担ってくれている。そして互いにそれが分かっていたため、これほど早くに動けたのだ。

「う、うん、分かった! そっちはお願いね!!」

 一瞬あっけにとられたが、私も自分の役割を果たすために建物の陰から動く。

 狙いは奥から矢を放ってきた二人だ。右側の奴は無地の青い和装を、左側の奴はえんじ色の外套を纏っていた。

 そして私のすぐ横に人影が並び、声をかけてくる。

「飛び道具には飛び道具だな。やれるか、サヤカ」

 長弓が得意なイチだ。

「大丈夫。そっちこそ、大丈夫そう?」

「まぁな。心配ないとは思う」

 彼も飛び道具を使うため、二人で相手をすることに。とここで新たな懸念材料が頭を悩ます。

(経験の差をどうやって埋めようかな……)

 相手は昂麗中等校に曲がりなりにも受かっている奴らだ。動きはしっかりしているし、何より頭が良い。経験値も年齢的に豊富だろう。普通に戦って負けるのは必至だ。

 それでも負けるわけにはいかない。そう心を奮い立たせ、相手を見据える。

 既に弓に矢をつがえている状態で、こちらを窺いながら放つ時を待っていた。その視線は全くぶれずに見てくる。その目は歯向かう者を射殺さんとする目だ。

「私右側やるね。左を頼んでもいい?」

「了解。油断すんなよ」

 会話をそれだけで終わらせ、私たちもしっかり相手と対峙する。

 私の相手は腕弓(わんきゅう)と呼ばれる、ボウガンに近い形をした弓を使っているようだ。威力は低いが、速射に優れ、扱いも普通の弓より簡単だ。

 しかし、裏を返せば汎用性が高い分、攻撃パターンも確立されているという訳で、別の仕事で何回もこの武器を使っている奴らは見てきた。そして使用する奴らの最も多い使い方は。

 間髪入れずに矢を放つこと。

(うわっ、意外と早い!)

 しかし、彼らは戦い方を熟知しているのか、素早くつがえて撃ってくるため、避けるので精いっぱいになってしまう。反撃しようにも隙は作ってくれないみたい。

(さて、正念場だ)

 避けつつ相手を窺い、銃口を向けタイミングを計る。距離は約15メートル。当たらない距離ではないが、ミスをする確率の方が高い。しっかり距離を測らないと、こちらが殺されてしまうのは確実だ。

「私が先に仕掛けるね」

 素早くイチに指示を出して、正面から二人の真ん中を狙って撃つ。

 すると案の定、二人が両サイドに飛び退いた。しかし、相手は避けながらも撃つのは止めない。

(ま、体勢を崩せるとは思わないから、いいけどね。それ以上に、良いところへ飛んでくれた!)

 私は青服との間合いを素早く詰める。

 飛んでくる矢は、真っすぐ自分の中心に撃たれたものを銃で薙ぎ払い、それ以外は気にせずどんどんと近づいていく。相手は一瞬怯んだが、すぐに立ち直り連射を続けた。

 私は銃を構え、一方は地面に向かって、もう一方は右側にあった壁に向かって二発放った。

 両方とも外れた方向に行くため、相手は油断して突っ込んでくると予想。

 しかし、青服は少しニヤリとし体制を低くしたかと思うと、一瞬にして壁際まで寄った。

(さすがに、この攻撃は読まれるよね)

 壁際に寄られると、二発は絶対に当たらない。そんなことは重々承知だ。しかし、私の目的はそこではない。

 放った銃弾が跳弾し、相手の元いた場所に向かっていく。そして――

 そこで二つの銃弾は上手くぶつかった!

 片方は私の左側を大きく外れていくが、壁へと撃った弾は壁際に寄っていた青服に向かっていく。流石の相手もびっくりしているようだ。

(よっし! これはどうだ!)

 直撃は免れない距離で角度が変わったため、避けることは叶わない。

 スピードも十分。

 そのはずだった。

「フッ、甘いな小娘」

 顔をほんの少し歪めたかと思うと、左手を上に振って私の銃弾をはじき返した! その手は何かで覆われている。

 氷塊だ。

(しまった! こいつ氷種(ひょうしゅ)だったのか!!)

 現実は甘くないということだ。こちらも確認せずに戦っていたのが悪かったが、相性の悪い氷種というのはついていない。

「この程度の策で、私を捕まえようなど、片腹が痛いわ!!」

 瞬間、間合いを詰められる。拳が飛んできたため銃を盾代わりに使うが、勢いを殺し切れなかった。そのまま後ろへと転がる。

 すぐさま体勢を立て直したが、一瞬早く向こうの拳が迫ってくる。

 銃を構え直すが引き金を引けず、私の横っ腹に直撃!

「ぎゃぶっ!!」

 為すすべなくふっ飛んでしまい、壁に背中からぶつかる。今回は(すい)(がん)を作る暇なく大ダメージを受けた。

 死にそうなくらい痛いけど、向こうはとどめの一撃と言わんばかりに氷塊を作って、こちらへ向かってきていた。

(まずい! あれは確実に死ぬ!)

 痛む体に鞭を打ち、私は寸でのところでその攻撃を避けきった。

 避けた壁にくぼみに顔が引きつりそうになる。

(二撃目は絶対に食らったらダメだね!!)

 うかうかしている訳にも行かず、私はすぐに銃を相手に向けて、3発ずつ連射をする。動きそうな方向に6発撃てば、一発ぐらいは当たるだろうという算段だけど……。

["氷壁(ひょうへき)"を築け!]

 青服と私の間に氷の壁ができると、私の球をすべてシャットアウト。

(流石に無策すぎる!!)

 自分の作戦の無様さに歯ぎしりをする。

 次の手を思案していると――。

 ――ピッピッピッピ

 インカムから着信音がした。

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