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7.つながる点と線

(2019・12・13)一部更新いたしました。

(2020・01・08)更新しました。

 出水晴人はるとはこの街出身で、ギリギリの成績で昂麗中に入学。

 入ってからも成績は下位の方で(それでも入学できている時点でどう考えても頭はいいんだけど……)、着いていくのが大変だったらしい。

 辞めてしまおうかと思っていた出水に転機が訪れたのは、1年生の夏休み前のこと。

 成績が危うくなり居残りで自習をしていた出水は、たまたま残って読書をしていた小林さんに分からないところを聞いた。

 すると彼は嫌な顔一つせず、寧ろ楽しそうに教えてくれたそうだ。

 それから話すようになると、彼らは次第に仲良くなっていった。

 小林さんの教え方が良かったのか、出水は成績をうなぎ登りに上げていき、学年でも上位に進出。小林さんも話し相手として、昂麗中の唯一無二の親友となった。

 本来であればこのまま卒業までこぎつけ、今頃はこの国の中でトップクラスの地位を築いていたはずである。

 この出会いは互いにとって良いものだったが、現実は何故かいつも非情である。

「仲良くなった当時から、蔵乃介は学校でいじめを受けていた」

 中間、期末共に成績がトップだったため、中央出身の連中が嫉妬し、小林さんに対するいじめが始まったそうだ。

 ただ小林さんは、その圧力や嫌がらせに屈することなくこの学校に居続けた。

「出水も色々と助けようと奮闘していたんだが、庇えば庇うほどに出水の、ひいては蔵乃介の扱いはますますひどいものになっていった。そして――」

 1年半後、小林さんは帰らぬ人となってしまった。いや、正確にはされてしまったか。友達の悔しさは計り知れないだろう。

「出水とは蔵乃介の葬式の時に出会って、そこで話を聞いた」

 小林さんの葬儀は兎嵐(とらん)で行われたが、そこに出水は来たそうだ。神都から兎嵐までの所要日数は約2日。早馬に乗っても1日はかかる道のり。それでも出向いたということは、どれだけ大切な存在だったか分かる。

「死ぬ半刻前に出水は蔵乃介を引き止めたんだ。だけど蔵乃介は忠告を聞かずに、寧ろ『お前はお前の心配を考えてくれな』と逆に出水の心配をして行ってしまった」

 恐らく、自分で何とかできると思ったのだろう。更に言えば、これ以上親友に迷惑をかけられないという思いも入っていたに違いない。

「当時は心身ともにボロボロになった蔵乃介が苦しみから逃れたくて、犯人たちの目の前で屋上から飛び降りたと聞かされた」

 なるほど罪の意識を植え付けるために、そんな大仰なことをしたと警察が捉えてもおかしくない。

「出水は自殺を否定していたが、同時に物凄く悔しがっていた。『あの時、もっと強く止められていたら……。一緒に行っていたら……! あいつを死なせずに済んだのに!!』って。そして、謝られたよ。何度も何度も、大粒の涙を流しながらさ」

 その時を思い出しているのか、夏川は下唇を型が付くぐらいに噛み締めていた。

(それだけ思ってくれていたら、小林さんも報われるね)

 そう感じるほどに彼らの思いは強かった。

「それから出水とはずっと仲がいい。彼のおかげで、蔵乃介の昂麗中等校での生活も聞くことができている。……だから、あいつを偲んでやれたんだ」

 その目には大きな一粒の涙が溢れていたが、私は気づかないふりをした。

「出水は今、自分の目標の仕事だった警備察知官けいびさっちかんを蹴って、今は俺らの街の中等校の教育導師をやっている。蔵乃介のような子供を作らないために、日々、様々なことを頑張っているよ」

 感慨耽ったかのように吐いたその言葉は、出水への応援と受け取ってもいいかもしれない。

 因みに警備察知官は地域の治安を守る職業、いわゆる警察官のことだ。

 閑話休題。

「で、出水さんが自殺ではないと、のちに突き詰めたわけね?」

「少し違う」

 やんわりと私の仮説を否定してきた。

「今日は来てないが沢渡ふとしっていう奴が、最近出水に接触してきてな、真相を語ってくれたんだよ」

(……!)

 ここにきて沢渡さんの名前が出てきた。

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