嵐
輸送機から出ると外は、風が強く吹いていた。
「ナカイ特務少尉、風が強いので流されます」
「ひとまずそれはどうでもいい、下に着くことを優先だ。合流は後でできるな」
『了解っす』
風で俺達も、チバたちも流される。乱気流だったのか別々の方向にだ。
「降下失敗させるなよ」
「大丈夫です」
「ならいいや」
時間を確認する、夕方ぐらいの時間だ。更に食料やら水を1人が2週間ほど生きられるだけはある。これだけあれば大丈夫だろう、ただ食料が不味いレーションだけなのは痛いが。
「高度低下中、視界不良」
「視界不良なのか」
後ろからメインモニターを覗きこむ。
「本当だ、なんも見えないな」
「高度計確認、パラシュート展開」
パラシュートが開かれると、機体が更に横に流される。
「減速確認、パラシュート破棄」
パラシュートが機体から捨てられ、後は機体のスラスターで着地する。
「着地完了しました」
「とは言っても動けないな外見えないしレーダーは死んでるし」
「そうですね、風がやむまで待機するしか」
「だな、チバ聞こえるか」
無線機に反応はない。だがもしかしたら聞こえてるかもしれないので続ける。
「風が止みしだい合流する、だから場所をあまり動くな」
やはり反応はなかった。
「聞こえてればいいんだが」
「どうしようもありません」
「しかし砂嵐とはな、はぁついてないよ、もういや」
「それでしたら睡眠をとられればどうでしょうか」
「だな、3時間ほど寝るおやすみ」
固いシートで目をつぶる、疲れてるからすぐに寝られそうだ。そう思うとすぐに意識が沈んでいった。
腕に振動。それによって目は覚ます。そして目覚まし付きの腕時計を止める。
「起きた」
「おはようございますナカイ特務少尉」
「状況は」
「変化なしです」
「だよな、そう簡単に変化はないか」
「風が止む様子はありません」
「そっちもか」
「そうです」
敵の反応が分からないがこんな砂嵐の中だ、動きようがないだろう。
「そういや武器はなに持ってきたんだ」
「ショットガンを1挺」
「それだけ」
「はい、申し訳ございません」
「いやあんな状態で武器回収できるの泣かんかすごいよ、で交代しようか」
「いえ大丈夫です、私は機械なので休まずとも」
「いや俺が暇なんだ代わってくれ」
「分かりました」
狭いコックピットの中で、無理矢理席を変える。
「そう言えば、ナカイ特務少尉はどうして兵士に」
「なんの面白味はないけど子供の頃から戦車が好きだったし乗ってみたかった、けど乗るには兵士になるしかなかったから兵士になった」
「そうなんですか」
「けど兵士、いや一応士官候補か、になってからは自分は兵士に向いて実感させられることばかりだった」
「なぜです」
「機体操縦も指揮能力も知識も基準値ギリギリ、ついでに体力もない、いつやめてもおかしくなかった」
「じゃあなぜ」
「同じくギリギリのチバや成績優秀なやつとかに支えられたからな、あいつらがいなかったたぶんやめてた」
「そうなんですか」
「ああ、ってやめやめ暗くなっちまう、嵐早く晴れないかな」
そうして夜が更けていく。




